夫である伯爵に裏切られましたが、王家に輿入れすることになりました

アーニャの場合（４）

「受けましょう…。だって私たちは夫婦ですもの。私が受け取っても、あなたが受け取ったのと変わらないでしょう。買い取ってもらえたら、またお暇を出した人たちを呼び戻せるわ」

　私はイーサンの目をまっすぐに見て静かに伝えた。

「毎日何をしていた？」

　イーサンは震える声で私に聞いてきた。

「何って……村の子供達の配給所に手伝いに行っているって説明していたでしょう」
「キャロラインと会ったのか？」
「昨日、村の配給所に偶然キャロラインが訪ねてきたの。そこで話しただけよ」

　私はふと気になってイーサンに聞いた。

「あなたは？もしかしてキャロラインに会ったの？」

　私の何気ない質問にイーサンは明らかに狼狽えた。私の顔をチラッと見ると目を伏せた。キョロキョロと目が泳いでいる。

「会ったの？王太子妃と……？」

　私は驚いてイーサンにもう一度聞いた。

「会っていないっ！分かった！君の好きにしろっ！森のお金は君が受け取れ。伯爵夫人の君のお金で構わない」

　イーサンは突然怒ったように私にそういうと、客間からふいっと出て行った。

　私はあっけに取られて立ち尽くした。

　――もしかして、キャロラインとイーサンは会ったのかしら？そんなはずはないのだけれど……。

　――でも、分かったわ。狩猟用森を売ったお金は私が受け取るわ。そして、暇を出した人たちを呼び戻そう。これからできる私の子供には不便な思いはさせたくないから。

　私はそう心に決めた。