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ジョージ・ブルーデネル目線(5)

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 そこからは文士の私にはよくわからない。短剣を振り回したキャロラインは、荒くれ男の頭に飛び蹴りをして、周りの荒くれ男どもを華麗にのしたり、突き飛ばしたり、さらに短剣を操った。言い訳をさせてもらうと、ドレスの裾が広がって、私の目にも止まらない速さで動くのでよく見えないというのもある。

 気づけば荒くれ男どもの頭を含めて何人かは気絶していた。

 ――騎士団も応戦していたが、キャロラインがほぼほぼやっつけていたような気がするのは気のせいだろうか。私の目が惹きつけられたようにキャロラインから目が離せなくなってしまったので、他が目に入らなかっただけなのだろうか。

「逃げろっ!」
「撤収だっ!」

 荒くれ男どもは逃げるように退散して行った。気絶した男たちをその場に置いて。

 それを見たキャロラインは驚きでたちすくむ私に近づいてきてにっこりと笑った。

 そして、毅然と剣を翻して「無事で良かった」とそれだけささやいて、颯爽と歩いてキャロラインは騎士団の先頭に行ってしまった。私はその後ろ姿を呆然と見つめた。

 私は文士だ。ブルーデネルという家系に騎士はいない。どちらかというと学問に秀でた家柄であり、剣術使いはいない。しかし、キャロルの腕前がとびきり上段者のそれであることは想像できた。

「行くよっ!」

 キャロラインは颯爽と馬に跨り、騎士団に号令をかけた。私は慌てて馬車に飛び乗った。地面にひっくり返っていた騎士も、転がるように馬車に乗り込んできた。

 馬車の中でマリアが「お嬢様っ!」と驚いた様子で震え上がっていたが、私の顔を見て「お嬢様はいつの間にあのような剣術や武道を?」とささやくように聞いていたが、私も聞きたいぐらいだった。

 キャロラインは騎士の剣を納める鞘まで扱い慣れた様子で、平然とさばいていた。

 ――どうやら太子妃は謎の多い女性のようだ。途中で人が変わったようになってしまわれたような……。

 私、文士ブルーデネルは強く王太子妃に惹かれてしまい、このお方にどこまでも付いて行こうと思ってしまった自分に戸惑を隠せなかった。

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