夫である伯爵に裏切られましたが、王家に輿入れすることになりました

まずは寝室（１）

　伯爵家は古く、前の結婚生活の３年間はイーサンが私を全く顧みず、私は暇を持て余して改修や内装の修復に熱心に取り組んでいた。私の実家のお金を使って改修をしていたのだけれども。どれほど惨めなことだったかは裏切りを知らないからできていたことで…………やがて生まれる子供のことを考えてー。

　そこまで思い出した時に、私の中にちくりとした痛みが広がって私は思わず身構えた。手を繋いでいた王太子閣下は、私が思わず体を硬直させたことを感じ取ったはずだ。

「キャロライン、各部屋の壁紙と寝室からまず決めましょう。あなたの好きなもので揃えて大丈夫ですから」
「はい」

　王太子閣下は内装担当者に合図をして、力付けるように私に優しく微笑んだ。カタログを渡された私は一気に嫌な記憶を心の隅に押しやることができ、仕事モードになった。私は持ち込まれた大量の壁紙のカタログをめくり、ハイベリー宮殿を内装担当者と歩き回ってテキパキと壁紙を決めて回った。こういう仕事には慣れている。

　王太子閣下は「ええ、いいですね」「うん、いい」と短くにこやかに答えるのみで、私が好きなように選ぶ様子を始終楽しげに見つめていた。

「退屈しませんか？」
「いえぜんぜん。こういうことにあなたは慣れていますね」
「ええ、内装は得意です」