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初恋(3)

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「あ、王太子閣下を信じられないということではないのでございます」

「大丈夫ですよ。私たちは生涯の伴侶となります。あなたは私の妻になる大切な人だ。あなたの不安は正直に私に打ち明けてくださって構わないのですよ」

 王太子閣下は私の両手をご自身の両手で包んで優しく私を見つめた。

 ――そう、王太子閣下はイーサンとアーニャが何をしていたか知っていたのだったわ。私が不安に思う部分も理解できるということかしら?

 私は王太子閣下の胸に飛び込んだ。

 あの嫌な記憶と、それを洗い流してくれる男性の温かさがいっぺんに私に押し寄せた。王太子閣下の胸に飛び込んだ私を抱きしめて、王太子閣下はささやいた。

「私があなたに恋をしたのは、あなたが十四歳のときです」
「十四歳?」

「そう、あなたは十四歳だった。私はあなたが好きだという仕草も言葉も態度も、自分が思いつく限りのものを十四歳のあなたに向けた。そりゃあ頑張ったと自分では思っていた。アピールできたと思っていた」

 私は驚いて王太子閣下の顔を見つめた。

「それなのに、あなたは私があなたのことを好きだという気持ちに全く気づかなかった」

「そんな……………………」
「私はもっと直接的な言葉で言うべきだった。もっと分かりやすくあなたに私の好きを示せば良かった。キャロライン、あなたは私があなたのことを大好きだということにまるで気づかなかったのだから」

 私は思い出そうとした。確かに王太子閣下をとても好ましい人物として私は捉えていた。格好良くて凛々しくて、美しい表情で常ににこやかで、ユーモアがあり、私を楽しませてくれる人だった。
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