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第四章 幸せに
結婚式 ウォルター・ローダンSide
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各国の王族や皇族が続々と集まってきている。我が国始まって以来の快挙かもしれない。女王陛下が赤い鷲の艦隊を破り、海上覇権を握り、一気に我が国の国際的な影響力が高まったのが功を奏している。煌びやかに着飾った紳士淑女が集まる様はそれだけで贅沢で、これから何か華やかなことが起きるという一種の緊張感を高めている。
俺の名前はウォルター・ローダン。
ジョージ王子の参謀であり、お目付け役でもあり、友人役でもあり、時に相棒でもあり、とにかく何でもござれのお役目を担っている。
挙式の準備自体が1年がかりだった。
参列者が大聖堂に揃うと、パイプオルガンの曲が演奏され始めた。ジョージ王子が期待に瞳を輝かせて待っている。花嫁のフランが美しいウェディングドレスで現れるのを。
外で大歓声が起きているのが聞こえた。いよいよ花嫁が到着したようだ。
息を飲む壮麗な瞬間だ。
俺はジョージ王子の結婚にグッと涙が溢れてきて、慌てて目の端を拭った。見逃してはならない。全てが計画通りかを俺は監督する役目なのだから。
女王陛下も感動しているご様子だ。ついに花嫁が大聖堂の中に足を踏み入れた。フラン妃が美しいウェディングドレス姿で笑みを浮かべて歩いてくる。
――綺麗だぁ!
俺の心にジョージ王子の心の叫びがダダ漏れなのはいつものことなので良いとしても。
ロベールベルク公爵、公爵夫人、カール、ルドルフと家族が全員勢揃いしているのを見ると感慨深い。私の父であるローダン伯爵も母である伯爵夫人も参列している。ありとあらゆる高位貴族が参列していた。
――いよいよ今夜か!もう、嬉しくてどうにかなりそうだ。
王子の声は続いている。私も王子のために喜んであげよう。
――今夜の山場では、心の声がダダ漏れしないように王子にしっかりと忠告せねば……(これは私の心の声だ)
馬番ジョージが実はジョージ王子だったと知ったエヴァもメアリー・ウィンスレッドもバロン教授も、ヘンリード校3期生たちはゾッとしたらしい。今までの態度を胸に手を当てて振り返っていた。
皆、しばらく真っ青だった。長い船旅を共にしたエヴァとジョンは特に真っ青でよろよろと椅子に座り込んでいた。
「フランは当然知っているのよね?馬番ジョージと婚約したのではなく王子と婚約したと知っているのよね?」
「もちろん」
私はうなずいた。
「うわぁ、本物のプリンセスになったのねぇ!」
エヴァはうっとりとした表情になった。頬が緩み、憧れを浮かべている。私はその姿が正直可愛いと思ってしまった。
いや、今は挙式に集中しなければならなかった。うっかりエヴァのことを考えては、進行上の問題に対処できない。食事の準備は完璧に進んでいると聞いている。
この後、皆様がお祝いの食事に集う。
女王陛下は何やらジークベインリードハルトのラファエル殿下に会うのを楽しみにしていると言っていた。リシェール伯爵は長髪で背が高く、青い目がとても美しい若者だった。お二人が会えるように時間の調整をしたのは私だ。最近植民地のことでお忙しくされていた女王陛下だが、この会合だけは何が何でもと予定を調整するようにエルス宰相にも告げていた。
ジョージ王子とフラン妃は並び立ち、誓いの言葉を述べてキスを交わしている。
ふわりと光がそこに舞ってきたかのようだった。
私、ウォルター・ローダンにとっても、今日は特別な日だ。
俺の名前はウォルター・ローダン。
ジョージ王子の参謀であり、お目付け役でもあり、友人役でもあり、時に相棒でもあり、とにかく何でもござれのお役目を担っている。
挙式の準備自体が1年がかりだった。
参列者が大聖堂に揃うと、パイプオルガンの曲が演奏され始めた。ジョージ王子が期待に瞳を輝かせて待っている。花嫁のフランが美しいウェディングドレスで現れるのを。
外で大歓声が起きているのが聞こえた。いよいよ花嫁が到着したようだ。
息を飲む壮麗な瞬間だ。
俺はジョージ王子の結婚にグッと涙が溢れてきて、慌てて目の端を拭った。見逃してはならない。全てが計画通りかを俺は監督する役目なのだから。
女王陛下も感動しているご様子だ。ついに花嫁が大聖堂の中に足を踏み入れた。フラン妃が美しいウェディングドレス姿で笑みを浮かべて歩いてくる。
――綺麗だぁ!
俺の心にジョージ王子の心の叫びがダダ漏れなのはいつものことなので良いとしても。
ロベールベルク公爵、公爵夫人、カール、ルドルフと家族が全員勢揃いしているのを見ると感慨深い。私の父であるローダン伯爵も母である伯爵夫人も参列している。ありとあらゆる高位貴族が参列していた。
――いよいよ今夜か!もう、嬉しくてどうにかなりそうだ。
王子の声は続いている。私も王子のために喜んであげよう。
――今夜の山場では、心の声がダダ漏れしないように王子にしっかりと忠告せねば……(これは私の心の声だ)
馬番ジョージが実はジョージ王子だったと知ったエヴァもメアリー・ウィンスレッドもバロン教授も、ヘンリード校3期生たちはゾッとしたらしい。今までの態度を胸に手を当てて振り返っていた。
皆、しばらく真っ青だった。長い船旅を共にしたエヴァとジョンは特に真っ青でよろよろと椅子に座り込んでいた。
「フランは当然知っているのよね?馬番ジョージと婚約したのではなく王子と婚約したと知っているのよね?」
「もちろん」
私はうなずいた。
「うわぁ、本物のプリンセスになったのねぇ!」
エヴァはうっとりとした表情になった。頬が緩み、憧れを浮かべている。私はその姿が正直可愛いと思ってしまった。
いや、今は挙式に集中しなければならなかった。うっかりエヴァのことを考えては、進行上の問題に対処できない。食事の準備は完璧に進んでいると聞いている。
この後、皆様がお祝いの食事に集う。
女王陛下は何やらジークベインリードハルトのラファエル殿下に会うのを楽しみにしていると言っていた。リシェール伯爵は長髪で背が高く、青い目がとても美しい若者だった。お二人が会えるように時間の調整をしたのは私だ。最近植民地のことでお忙しくされていた女王陛下だが、この会合だけは何が何でもと予定を調整するようにエルス宰相にも告げていた。
ジョージ王子とフラン妃は並び立ち、誓いの言葉を述べてキスを交わしている。
ふわりと光がそこに舞ってきたかのようだった。
私、ウォルター・ローダンにとっても、今日は特別な日だ。
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