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第三章 葛藤と冠へ

アネシュカSide

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「こうやって二人は抱き合っていて……」

 私の手下の侍女がミカエルとフランが愛し合っているようだと教えてくれた。それは拷問のように私の頭を嫉妬と怒りで混乱させた。ついに私は我慢できずに、赤い鷲のシナリオ以上の計画を実行に移した。

 おかげであっけなく捕まってしまった。急に女王陛下の騎士団が出てくるとは思わなかったが。


 しかし、今、私は牢獄でほくそ笑んでいた。

 今頃赤い鷲はロベールベルク公爵の息子である10歳のカールを誘拐して、身代金を要求しているだろう。フォーチェスター城で、ロベールベルク公爵家一族は油断しているだろう。フランが昨日公爵邸から連れて行った侍女の中に、赤い鷲の手下のスパイがいたのだ。

 スパイは本分を果たすだろう。赤い鷲を怒らせると怖いから。


 広大な領地と美貌と教養を備えたフランに、私はずっと前から苦々しく思っていた。彼女が海賊上がりの祖父が奪い去った信じられないほど広大な領地を引き継ぐ後継者であることは、面白くない話だ。


 そうだ。私の勝手な嫉妬だ。
 男爵家の我が家に対してフランの家は公爵家だ。

 何もかもが面白くない。


 私の叔母はロベールベルク公爵家に嫁いだが、元々薬草学に非常に優れた知見を持っていたものの、魔女と言われるほどの不可思議な力は持ち合わせていない。これは飲んだくれてばかりの父から聞いたことだから間違いないと思う。

 フランはロベールベルク家が有すると言われる特殊能力のかけらもない娘だった。わがままでどうしようもないと言う噂を自ら率先して社交界に流したのは私だ。フランは人が良いところがあり、私のことは疑わなかった。

「赤い鷲と組んでお前がやったことは許されることではない」

 昨日、女王陛下の騎士団に捕えられてそう宣言されたが、私は赤い鷲はこれで企みを終えるつもりがないことを知っている。私たちはただの駒だ。私たちが失敗しても、赤い鷲は次の手をちゃんと考えているのだ。

「魔物がいるから近づくなと言われているのよ」

 私が森についてフランに聞いてもいつもこの答えだった。彼女は自分の家が代々所有する森の価値がまるで分かっていないと思う。

 全員を森に集めてしまえば、フランもいっそのこと魔物とやらにやられてしまうのではないかと私は思っていた。

 だから、赤い鷲には伝えていた。


「私たちが失敗した時は、弟を誘拐して森の入り口まで連れて行きなさい。そしたらフランと夫人が自らやってくるだろう。弟の身代金を夫人と森のセットにすれば良い」

 赤い鷲はそれを今実行しているに違いない。

 罪のない10歳のカールには気の毒だが、ロベールベルク家の者ならば森に魔物が本当にいるかどうかも含めて、その目で見て明らかにすべきだろう。

 私は牢獄の鉄格子から入るわずかな日の光に目を細めた。

 ロベールベルクの森には本当に魔物がいるのかどうか。スルエラの国王が欲しがっている森で取れる薬草に何があるのか。

 私はそこは興味がない。
 ただ、危険な目にフランがあえばと、ざまあみろと思っているだけだ。そう思うだけで、牢獄の中でも気分が幾分かスッキリするというものだ。

 さあ、そろそろ実行に移された頃かしら?



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