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第二章 恋
全て失う フランSide
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馬車を引く馬のひずめの音がしている。
――やはりあの仮面はリサのものだわ!
私は馬車の扉を開けた。そして体を乗り出して、仮面をつけて走ってくる男装の人に手を差し伸べた。
嬉しかった。リサは時間が戻ったのに気づいたのだ。今回、彼女は変装をしてロベールベルク公爵邸から出てきてきてくれていた。私にわかるように黒い仮面をつけて。
「待て!」
ジョージが叫んで私の手をつかんで引いたのと、横から誰かが飛び出してきたのが同時だった。
仮面をつけたリサが叫ぶのが見えた。
一人は私の前に立ち塞がり、もう一人の男がその一人をスモールソードで刺した。刺した男は銀の仮面をつけていた。
「お前にフランを傷つけさせないっ!」
私の前に立ち塞がった男は必死に相手と揉み合った。
「ミカエルなの?」
「ミカエルっ!」
リサと私が同時に叫んだ。私を庇おうと私の前に身を投げ出してきたのはミカエルだった。
――なんでっ!?
「ごめんっフラン、ごめんっ」
ミカエルは倒れながらそう言っていた。
ミカエルは倒れ、馬車に乗り込んできた銀仮面の男は私を襲った。しかし、ジョージが私を庇おうとした。その前にウォルター・ローダン卿が身を投げ出し、ウォルター・ローダン卿がスモールソードの犠牲になった。
銀仮面をつけた男はジョージも刺し、私は悲鳴をあげた。私も刺された。
リサが私から銀仮面の男を引き離し、私は息たえる直前にリサが男の銀仮面をはぎ取り、リサが刺されるのを目撃した。女王陛下の騎士が走り込んできて、男をなぎ倒した。
私は目の前に力なく倒れているジョージの傷に息を吹きかけた。傷が塞がっていく。傷は塞がったのに、息も絶え絶えの私は結局間に合わなかったことを悟った。傷は塞がったのに、真っ青な顔のままジョージは反応しなかった。
私が呆然とジョージを見つめる中、ルイが公爵邸の方から猛然と走ってきていたのに私は気づかなかった。
私は目の前が真っ暗になるのを感じた。
時間を戻したのに、土地だけでなく母だけでなく、二回目は自分の命も失った。三回目は自分の命だけでなく、最愛の人とその他の大事な人の命も失ったのか。
真っ暗な中で確かに私はそう思った。私は大失敗した。
ウォルターとの約束を果たさねばならないのに、私一人で時間を戻せるのか。
もう二回も時間を戻したのに、何もかも全てを失ったのか。
どん底なのだ。私は真っ暗な闇の中で確かにそう思った。
女王陛下にいただいたダイヤの婚約指輪は、私のウェディングドレスを見ることはない。私は最愛のジョージをこの国から、女王陛下から奪ってしまったのか。
――やはりあの仮面はリサのものだわ!
私は馬車の扉を開けた。そして体を乗り出して、仮面をつけて走ってくる男装の人に手を差し伸べた。
嬉しかった。リサは時間が戻ったのに気づいたのだ。今回、彼女は変装をしてロベールベルク公爵邸から出てきてきてくれていた。私にわかるように黒い仮面をつけて。
「待て!」
ジョージが叫んで私の手をつかんで引いたのと、横から誰かが飛び出してきたのが同時だった。
仮面をつけたリサが叫ぶのが見えた。
一人は私の前に立ち塞がり、もう一人の男がその一人をスモールソードで刺した。刺した男は銀の仮面をつけていた。
「お前にフランを傷つけさせないっ!」
私の前に立ち塞がった男は必死に相手と揉み合った。
「ミカエルなの?」
「ミカエルっ!」
リサと私が同時に叫んだ。私を庇おうと私の前に身を投げ出してきたのはミカエルだった。
――なんでっ!?
「ごめんっフラン、ごめんっ」
ミカエルは倒れながらそう言っていた。
ミカエルは倒れ、馬車に乗り込んできた銀仮面の男は私を襲った。しかし、ジョージが私を庇おうとした。その前にウォルター・ローダン卿が身を投げ出し、ウォルター・ローダン卿がスモールソードの犠牲になった。
銀仮面をつけた男はジョージも刺し、私は悲鳴をあげた。私も刺された。
リサが私から銀仮面の男を引き離し、私は息たえる直前にリサが男の銀仮面をはぎ取り、リサが刺されるのを目撃した。女王陛下の騎士が走り込んできて、男をなぎ倒した。
私は目の前に力なく倒れているジョージの傷に息を吹きかけた。傷が塞がっていく。傷は塞がったのに、息も絶え絶えの私は結局間に合わなかったことを悟った。傷は塞がったのに、真っ青な顔のままジョージは反応しなかった。
私が呆然とジョージを見つめる中、ルイが公爵邸の方から猛然と走ってきていたのに私は気づかなかった。
私は目の前が真っ暗になるのを感じた。
時間を戻したのに、土地だけでなく母だけでなく、二回目は自分の命も失った。三回目は自分の命だけでなく、最愛の人とその他の大事な人の命も失ったのか。
真っ暗な中で確かに私はそう思った。私は大失敗した。
ウォルターとの約束を果たさねばならないのに、私一人で時間を戻せるのか。
もう二回も時間を戻したのに、何もかも全てを失ったのか。
どん底なのだ。私は真っ暗な闇の中で確かにそう思った。
女王陛下にいただいたダイヤの婚約指輪は、私のウェディングドレスを見ることはない。私は最愛のジョージをこの国から、女王陛下から奪ってしまったのか。
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