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第一章 破綻と出会い フランと王子Side
最悪の出会い フランSide
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広大な敷地に建てられたアイビーベリー校に着く頃には、太陽は高く登っていた。すぐに戻ってくるから入り口で待つようにダニーに告げると、私はアイビーベリー校の中に旅行鞄を持って門をくぐった。
門番は、私と顔見知りであるかのように親しみをこめた笑顔を向けてくれた。
どうやら、リサと間違えられているようだ。木立を抜けるとリサが姿を現した。彼女は無言で広い庭の向こうにある厩らしき建物を指差した。リサは少し青ざめていた。時間を戻すのに力を使ったからかもしれない。
私は無言でうなずくと、リサが指差した建物をひたすら目指した。リサは私になりすました様子で毅然と歩いて門に向かった。私はその後ろ姿をチラッと目にすると、ひたすら目的地を目指した。
――私はリサよ。リサは、私になりすまして公爵邸に馬車で返ったはずだわ。
息を切らして春の日差しを浴びて、私はアイビーベリー校の庭を抜けて、厩に着いた。
入り口につくなり、「遅いっ!」と若い男性の声で私は叱られた。
「ごめんなさいっ」
私は謝りながら振り返った。馬番の格好した若い男性が、不服そうに眉を顰めて私を睨んでいた。
「名前は?」
「リサ・アン・ロベールベルクです」
「初日から遅れる気?いい度胸をしているな。ただで住まわせてもらって学問を教えてもらうのに、遅れるのは褒められたことじゃない」
「馬番のあなたには申し訳ないことをしたわ。わざとじゃないの。本当にごめんなさい」
私はこれまでそういった叱責を受けたことがなかったので、ムッとして答えた。
信じられないほどハンサムな顔をした馬番は、くしゃくしゃの髪をかきあげて、はあっとため息をついた。
「乗馬はできるよな?」
できないとは言わせない口ぶりで彼は私に言った。その物言いは本当に癪に障った。
――誰に向かって言っているの?
私は憮然とした態度で仕方なくうなずいた。
「じゃあ、行くぞ。君はその馬に乗れ」
私は彼が指差した馬を見た。そして目をしばたいた。
――馬番が私に指図をするの?
「に、にもつがあるのだけれど……」
私はパンパンに膨らんだ荷物に視線を落とした。
「だったら遅れるな。馬車はもう行った。馬で行くしかない」
彼はため息をついて私の鞄を取り、自分だけ馬にまたがった。
「ついて来いよ。さっさと来ないと置いて行くぞ」
信じられないほどゴージャスでハンサムな馬番は、私を振り向きもせずに厩を出て行った。
私は慌てて、乗馬服でもないのにスカートで馬に跨って彼を追いかけた。
「はやく来い!」
遠くで彼がこちらに向かって怒鳴っている声がする。私は必死で声がする方向に馬を駆けさせた。
乗馬は好きではないが、一応できる。公爵令嬢だから一通りは身に付けた。しかし、普段は馬車で移動することが圧倒的に多いので、私は慣れないことに仕方なく挑むことになり、少しフラフラしながら馬を駆けさせた。
薄紫のライラックの花が咲き誇るアイビーベリー校の庭を私は必死で駆けた。庭を抜けると、農村が広がり、その向こうに城が見えてきた。
女王陛下の城だ。確かあれはフォーチェスター城だ。
これが彼と私の最悪の出会いだった。生意気で不機嫌で態度の悪い馬番との最悪の出会いは、ライラックの咲き誇る春だった。
すぐに分かったことだが、フォーチェスター城が選ばれし者たちの寄宿舎だった。ヘンリード校は特別な寄宿学校だった。
私はここで運命の二週間を過ごすことになったのだ。今でもライラックの花を見ると、あの特別な春のことを思い出す。
門番は、私と顔見知りであるかのように親しみをこめた笑顔を向けてくれた。
どうやら、リサと間違えられているようだ。木立を抜けるとリサが姿を現した。彼女は無言で広い庭の向こうにある厩らしき建物を指差した。リサは少し青ざめていた。時間を戻すのに力を使ったからかもしれない。
私は無言でうなずくと、リサが指差した建物をひたすら目指した。リサは私になりすました様子で毅然と歩いて門に向かった。私はその後ろ姿をチラッと目にすると、ひたすら目的地を目指した。
――私はリサよ。リサは、私になりすまして公爵邸に馬車で返ったはずだわ。
息を切らして春の日差しを浴びて、私はアイビーベリー校の庭を抜けて、厩に着いた。
入り口につくなり、「遅いっ!」と若い男性の声で私は叱られた。
「ごめんなさいっ」
私は謝りながら振り返った。馬番の格好した若い男性が、不服そうに眉を顰めて私を睨んでいた。
「名前は?」
「リサ・アン・ロベールベルクです」
「初日から遅れる気?いい度胸をしているな。ただで住まわせてもらって学問を教えてもらうのに、遅れるのは褒められたことじゃない」
「馬番のあなたには申し訳ないことをしたわ。わざとじゃないの。本当にごめんなさい」
私はこれまでそういった叱責を受けたことがなかったので、ムッとして答えた。
信じられないほどハンサムな顔をした馬番は、くしゃくしゃの髪をかきあげて、はあっとため息をついた。
「乗馬はできるよな?」
できないとは言わせない口ぶりで彼は私に言った。その物言いは本当に癪に障った。
――誰に向かって言っているの?
私は憮然とした態度で仕方なくうなずいた。
「じゃあ、行くぞ。君はその馬に乗れ」
私は彼が指差した馬を見た。そして目をしばたいた。
――馬番が私に指図をするの?
「に、にもつがあるのだけれど……」
私はパンパンに膨らんだ荷物に視線を落とした。
「だったら遅れるな。馬車はもう行った。馬で行くしかない」
彼はため息をついて私の鞄を取り、自分だけ馬にまたがった。
「ついて来いよ。さっさと来ないと置いて行くぞ」
信じられないほどゴージャスでハンサムな馬番は、私を振り向きもせずに厩を出て行った。
私は慌てて、乗馬服でもないのにスカートで馬に跨って彼を追いかけた。
「はやく来い!」
遠くで彼がこちらに向かって怒鳴っている声がする。私は必死で声がする方向に馬を駆けさせた。
乗馬は好きではないが、一応できる。公爵令嬢だから一通りは身に付けた。しかし、普段は馬車で移動することが圧倒的に多いので、私は慣れないことに仕方なく挑むことになり、少しフラフラしながら馬を駆けさせた。
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すぐに分かったことだが、フォーチェスター城が選ばれし者たちの寄宿舎だった。ヘンリード校は特別な寄宿学校だった。
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