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初めてのデート リズの場合
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私は夕暮れの街並みをぼんやり眺めていた。魔法数学大学の入学試験は終わって試験結果を待っている状況だ。少しでも異世界に戻って、ストックホルムのコンサートの準備をしなければならない。ストックホルムでのコンサートは今日で終わって、明日はポルトガルのリスボンに移動予定だ。
もう少ししたら、人の姿に戻れる。私は大聖堂の屋根に腰掛けて夕暮れを眺めていた。卒業した魔法薬科学院では空を飛ぶ魔法は重要視されていなかった。でも、魔法数学大学では必須だ。人の姿に戻ると、私はそのまま空を飛ぶ魔法を使ってふわふわと大聖堂の屋根から地上に向かって降りて行った。
「実技は完璧ですね」
大聖堂の下に円深帝が立っていて、私の様子を偶然見ていたようだ。
「ありがとうございます。結果を今待っているところです」
「わかりました。うまく行くことを祈っています」
そう私に言った円深帝は、はたと何かを思い出した様子で言葉を続けた。
「あ、そうそう。でもグレースはこの前出血した人を龍の魔法の力で救いました。グレースの国では王妃が圧倒的な魔力を有すと国民の間で話題になっています。彼女の力の特徴は目に見えることです。今度見せてもらったら良いかもしれません。何かの魔法数学のヒントになるかもしれませんよ」
円深帝はそれだけ微笑んで私に伝えると、宮殿の方に歩いて去って行った。ミラと会うのだろう。
私はお礼を言って、グレースとジョシュアの魔力のことを思い出した。確かに、ミラの姉のエレノアから私たちを守ろうと二人が使った魔力はずば抜けたものだった。
しかも、信じられないことに、二人が魔力を使うと龍とペガサスの黄金の紋様が煌めいていた。そんなものはこの国では見たことがない。
――今度二人に見せてもらうわ。確か金塊の契約のため以外に使う場合は、見返りが必要なのよね。ならば、コンサートの仕掛けで二人に魔力を使ってもらおうかしら?
私はそう考えると、慌てて異世界に戻ろうとして大聖堂の中に駆け込んだ。結界を使ってすぐに戻るのだ。
「待って!」
私はいつの間にかそこにいたらしい、サイラスに声をかけられた。サイラスは栗色の髪の毛を風に靡かせながら走って私の元にやってきた。
「リズ!空を飛ぶ魔法が得意んだね」
サイラスの瞳はキラキラと輝いている。
「えぇ、練習したから」
「そうなんだ!今晩でストックホルムの夜は終わりだよね。僕たちデートしない?」
私はサイラスが突然に私に告げた言葉に動揺した。サイラスは第八騎士団の仲間だ。小隊長だ。それ以上のものでもそれ以下のものでもないと私は今まで思っていた。
「デート……?」
「街並みを眺めながら散歩して、サウナとかどうだろう?」
「いいけれど」
「そうかっ!嬉しいよ。じゃあ、コンサートが終わったら声をかけるから」
「わかったわ」
私は急に頬を真っ赤に染めたサイラスを見つめてポカンとしていた。
――二人だけで?サウナ?今までそんなことをしたことがない。そもそも初めてサウナに入ったのはつい最近のことだ。
私は意識したことがなかったサイラスのことを考えて、急にドキドキしてきた。ここ数日は魔法数学大学の入学試験に合格したかどうかに気を取られていたのだけれども、頭の中にサイラスの姿が浮かんできては、慌てて打ち消すというのを数分繰り返した。
向日葵のような明るさで私をいつも励ましてくれるサイラスのことを思った。友人と、同僚と、仲間と、二人で散歩するのに『デート』という言葉を使うものなのだろうか。
――使わないわ。十八歳になって初めてのデートだわ……。
私は合格を待つ間、サイラスとのデートを楽しむことに決めた。頬を赤らめて嬉しそうに走り去って行ったサイラスの姿を思い出して、彼は真剣なのだと思った。サイラスは大切な仲間だったので、彼が嘘をついたりからかったりするような人物ではないのはよく知っていた。
――あぁ、初めてのデートにサウナなんて……。サイラスは大胆だわ。
今度は私が顔を真っ赤にする番だった。
もう少ししたら、人の姿に戻れる。私は大聖堂の屋根に腰掛けて夕暮れを眺めていた。卒業した魔法薬科学院では空を飛ぶ魔法は重要視されていなかった。でも、魔法数学大学では必須だ。人の姿に戻ると、私はそのまま空を飛ぶ魔法を使ってふわふわと大聖堂の屋根から地上に向かって降りて行った。
「実技は完璧ですね」
大聖堂の下に円深帝が立っていて、私の様子を偶然見ていたようだ。
「ありがとうございます。結果を今待っているところです」
「わかりました。うまく行くことを祈っています」
そう私に言った円深帝は、はたと何かを思い出した様子で言葉を続けた。
「あ、そうそう。でもグレースはこの前出血した人を龍の魔法の力で救いました。グレースの国では王妃が圧倒的な魔力を有すと国民の間で話題になっています。彼女の力の特徴は目に見えることです。今度見せてもらったら良いかもしれません。何かの魔法数学のヒントになるかもしれませんよ」
円深帝はそれだけ微笑んで私に伝えると、宮殿の方に歩いて去って行った。ミラと会うのだろう。
私はお礼を言って、グレースとジョシュアの魔力のことを思い出した。確かに、ミラの姉のエレノアから私たちを守ろうと二人が使った魔力はずば抜けたものだった。
しかも、信じられないことに、二人が魔力を使うと龍とペガサスの黄金の紋様が煌めいていた。そんなものはこの国では見たことがない。
――今度二人に見せてもらうわ。確か金塊の契約のため以外に使う場合は、見返りが必要なのよね。ならば、コンサートの仕掛けで二人に魔力を使ってもらおうかしら?
私はそう考えると、慌てて異世界に戻ろうとして大聖堂の中に駆け込んだ。結界を使ってすぐに戻るのだ。
「待って!」
私はいつの間にかそこにいたらしい、サイラスに声をかけられた。サイラスは栗色の髪の毛を風に靡かせながら走って私の元にやってきた。
「リズ!空を飛ぶ魔法が得意んだね」
サイラスの瞳はキラキラと輝いている。
「えぇ、練習したから」
「そうなんだ!今晩でストックホルムの夜は終わりだよね。僕たちデートしない?」
私はサイラスが突然に私に告げた言葉に動揺した。サイラスは第八騎士団の仲間だ。小隊長だ。それ以上のものでもそれ以下のものでもないと私は今まで思っていた。
「デート……?」
「街並みを眺めながら散歩して、サウナとかどうだろう?」
「いいけれど」
「そうかっ!嬉しいよ。じゃあ、コンサートが終わったら声をかけるから」
「わかったわ」
私は急に頬を真っ赤に染めたサイラスを見つめてポカンとしていた。
――二人だけで?サウナ?今までそんなことをしたことがない。そもそも初めてサウナに入ったのはつい最近のことだ。
私は意識したことがなかったサイラスのことを考えて、急にドキドキしてきた。ここ数日は魔法数学大学の入学試験に合格したかどうかに気を取られていたのだけれども、頭の中にサイラスの姿が浮かんできては、慌てて打ち消すというのを数分繰り返した。
向日葵のような明るさで私をいつも励ましてくれるサイラスのことを思った。友人と、同僚と、仲間と、二人で散歩するのに『デート』という言葉を使うものなのだろうか。
――使わないわ。十八歳になって初めてのデートだわ……。
私は合格を待つ間、サイラスとのデートを楽しむことに決めた。頬を赤らめて嬉しそうに走り去って行ったサイラスの姿を思い出して、彼は真剣なのだと思った。サイラスは大切な仲間だったので、彼が嘘をついたりからかったりするような人物ではないのはよく知っていた。
――あぁ、初めてのデートにサウナなんて……。サイラスは大胆だわ。
今度は私が顔を真っ赤にする番だった。
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