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挙式 ミラの場合
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夕暮れの赤く染まった美しい空に、一番星が上がっている。
大聖堂の鐘が鳴る。姉のエレノアが国民に発表したためか、大勢の国民が詰めかけてきていた。第三皇女ミラ・フォードオーロラ・ウィンドハットが女王となることが発表になったからだ。
戴冠式は明日の予定だ。私は何もかも急ぐのだ。明後日は姉のエレノアは望まれて豊かな隣国であるクロムウェー国への嫁入りで出発する。この国は私が治めよう。牧場でのんびり暮らしていた私を姉が殺そうとして、結果的に私の心に火がついた。父の治世を手伝ってくれていた方たちを広く呼び戻し、謙虚に学ぼう。
私は大聖堂の通路を花嫁衣装の姿で歩きながら、祭壇前で微笑んで立っている円深帝のお姿に心を奪われた。
大聖堂の貸し衣装を二人とも着た。サイラスとジョシュアが円深帝のお世話を担ってくれ、私が未だかつて見たこともないスマートな円深帝のお姿に変わっていた。いつもの金の衣装ではない円深帝は艶っぽさが増し、十八歳になったばかりの私にとっては刺激が強すぎる美形であった。
今日は結婚式、明日は戴冠式、明後日は姉のエレノアの嫁入りと、一気に私は自分の環境を変える。その突き進む力は、恋の力が与えてくれていると分かっている。
円深帝がグレースを小間使いにするとなった時に分かった自分の気持ち……。
私はこの恋心に全てを前に推し進める力をもらった。グレースとジョシュアが互いに結ばれるために必死にあがく様にも感化されたと言える。
リズ、アイラ、オリヴィア、サイラスは私の同志だ。共に生き、共に襲われた時も互いに守り合い、見知らぬ異世界で金塊の契約を果たそうと奮闘する時も、笑いを絶やさずに共にいてくれた。私の生涯の友であり、同士だ。
みんなが最前列から笑顔で私を見ている。私の目には涙がつたった。
「さあ、我が妻よ。今日もとても綺麗です。あなたを見ていると胸がいっぱいになります」
私が円深帝の隣にたどり着くと、円深帝が私にささやいた。
「あなたが大好きです。末長く私の夫でいてください」
私は愛をささやいた。円深帝は微笑んでうなずいてくれた。
「望むところです。私もあなたを愛します」
式が進み、円深帝が私のヴェールをそっとあげて、私を抱き寄せて口付けをしてくれた。彼が自ら私に口付けをしたのは初めてだ。私は嬉しさで心が震えた。
――こんな未来が待っているなんて……!
姉のエレノアに髪を掴まれて、血だらけで崖から突き落とされた時には考えられなかった未来だ。はるか長い旅路を経てここにたどり着いた気がした。1年間の異世界の金塊収得の冒険の旅が、思わぬ旅路となった。
――生涯の伴侶と目標を手にしたわ。これからの私は何も怖くないわ……。この人たちを大切に、いかなる困難も乗り越えて行ってみせるわ。
二度目に温かい唇が近づいてくるのを感じながら、目をつぶった。円深帝は初めての口付けをしたばかりなのに、二度目の口付けを私にした。
「ミラ、私の妻。生涯をかけてあなたを愛し守りますよ」
円深帝は私にそっとささやいてくれた。
大聖堂の鐘が鳴る。姉のエレノアが国民に発表したためか、大勢の国民が詰めかけてきていた。第三皇女ミラ・フォードオーロラ・ウィンドハットが女王となることが発表になったからだ。
戴冠式は明日の予定だ。私は何もかも急ぐのだ。明後日は姉のエレノアは望まれて豊かな隣国であるクロムウェー国への嫁入りで出発する。この国は私が治めよう。牧場でのんびり暮らしていた私を姉が殺そうとして、結果的に私の心に火がついた。父の治世を手伝ってくれていた方たちを広く呼び戻し、謙虚に学ぼう。
私は大聖堂の通路を花嫁衣装の姿で歩きながら、祭壇前で微笑んで立っている円深帝のお姿に心を奪われた。
大聖堂の貸し衣装を二人とも着た。サイラスとジョシュアが円深帝のお世話を担ってくれ、私が未だかつて見たこともないスマートな円深帝のお姿に変わっていた。いつもの金の衣装ではない円深帝は艶っぽさが増し、十八歳になったばかりの私にとっては刺激が強すぎる美形であった。
今日は結婚式、明日は戴冠式、明後日は姉のエレノアの嫁入りと、一気に私は自分の環境を変える。その突き進む力は、恋の力が与えてくれていると分かっている。
円深帝がグレースを小間使いにするとなった時に分かった自分の気持ち……。
私はこの恋心に全てを前に推し進める力をもらった。グレースとジョシュアが互いに結ばれるために必死にあがく様にも感化されたと言える。
リズ、アイラ、オリヴィア、サイラスは私の同志だ。共に生き、共に襲われた時も互いに守り合い、見知らぬ異世界で金塊の契約を果たそうと奮闘する時も、笑いを絶やさずに共にいてくれた。私の生涯の友であり、同士だ。
みんなが最前列から笑顔で私を見ている。私の目には涙がつたった。
「さあ、我が妻よ。今日もとても綺麗です。あなたを見ていると胸がいっぱいになります」
私が円深帝の隣にたどり着くと、円深帝が私にささやいた。
「あなたが大好きです。末長く私の夫でいてください」
私は愛をささやいた。円深帝は微笑んでうなずいてくれた。
「望むところです。私もあなたを愛します」
式が進み、円深帝が私のヴェールをそっとあげて、私を抱き寄せて口付けをしてくれた。彼が自ら私に口付けをしたのは初めてだ。私は嬉しさで心が震えた。
――こんな未来が待っているなんて……!
姉のエレノアに髪を掴まれて、血だらけで崖から突き落とされた時には考えられなかった未来だ。はるか長い旅路を経てここにたどり着いた気がした。1年間の異世界の金塊収得の冒険の旅が、思わぬ旅路となった。
――生涯の伴侶と目標を手にしたわ。これからの私は何も怖くないわ……。この人たちを大切に、いかなる困難も乗り越えて行ってみせるわ。
二度目に温かい唇が近づいてくるのを感じながら、目をつぶった。円深帝は初めての口付けをしたばかりなのに、二度目の口付けを私にした。
「ミラ、私の妻。生涯をかけてあなたを愛し守りますよ」
円深帝は私にそっとささやいてくれた。
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