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元王妃(1)
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「あなた、私の息子を殺したの?」
「お義母様、私ではございませぬわっ!」
「それならば、なぜあなたは大事な息子を殺した男の嫁になるのかしら?グレース、お答えなさいっ!」
私は亡くなった夫の母に囚われていた。チュゴアート王朝の国王と皇太子は殺された。その間、王妃は隣国に旅行中だったはずだ。私は、王妃は隣国にいる間は安全だが、戻ってきたら命の保障がないために、ことが起きた今はもはや戻っては来ないであろうと思っていたところがあった。
いや、もはやそれどころではない事態となったので、すっかり義母のことを失念していたというのもある。
北の魔女は義母に雇われた魔女だった。もうすぐ、私は何時間も狐の状態でいるしかない状態になってしまう。その前に今までの姿で義母にきちんと説明したかった。
「お義母様、どうか聞いてくださいませ」
「あなたは私の息子を騙していたということよね?あなたは息子と結婚する、つまりチュゴアート王朝に輿入れする前に、すでにバリイエルの息子と生涯をともにする誓約を交わしていたということよね」
「それはそうです。そのことはノアもご存じだったのです!お義母様っ!」
「息子が知っていてあなたと結婚したと?そんなバカなっ」
「本当でございます!ノアもご存じでした。だからノアは私を選んだのです、お義母様っ!」
「なんですって?」
「ノアは、私が許されざる恋をしているのを知っていました。バリイエルの後継者と私が恋をしているのを知った上で、バリイエルの後継者から私を奪うために私を選んだのです」
私の頬に平手打ちが飛んできた。右の頬と、すぐに左の頬も思いっきり叩かれた。私は後ろに両腕を縛られて座っていたが、衝撃で床に崩れ落ちた。痛くて悲しくて起き上がれない。
「この女狐がっ!申し訳ないけれど、あなたがバリイエル王朝に貢献することは許さないわ。息子の後を追って死んでもらうわ」
私は狐になるしかないと思った。腕が縛られているので縄を解けない。より腕の細い狐になるしか抜け出せないであろう。もしくは、魔力を使うしかない。この場合の魔力の見返りはなんだろう。
――円深帝は私が金塊の契約を果たすためなら、魔力を使って良いと言ったわ。私が死んだら、もしも私が戻れなかったら、金塊の契約が果たせないわっ……
「円深帝。金塊の契約を果たすために魔力を使うことをどうかお許しくださいっ!」
私は口に出してそう唱えた。
「なんですって?」
義母が床に倒れた私を蹴り上げようとして、私が言った言葉に一瞬動きを止めた。
私は龍の魔力を使って後ろに縛られていた縄を解いた。そして立ち上がって這うように床を動いた。義母が追ってきて私の髪の毛をつかんだので、左手で払った。左手から龍の形をした黄金の光が出た。
「痛いっ!」
義母は後ろずさった。
「あなたはやはり魔力が使えることを隠していたのねっ!女狐め。いろんなことを騙してうちの息子をたぶらかしたのね」
義母は泣きながら私に飛びかかってきた。
「お義母様っ!違うのですっ!」
私は泣き喚く義母からできるだけ遠くに離れて説明しようとした。けれども、時間切れで次の瞬間には狐になってしまった。
「まちなさいっ!狐!」
義母は泣きながら私を追ってきた。私は逃げた。
私が逃げた先に金髪のふわふわの髪の毛をした男性が立っていて、私は思わず彼の腕の中に飛び込んだ。
「グレース夫人、いかがなされた?」
「……円深帝?」
私は驚いて男性の腕に抱かれながら、男性を見上げた。男性は優しい顔をして、愛おしそうな目つきで私を一瞬見つめた。
――こんなに美形でした……?
私はいきなり登場した円深帝にびっくりしてしまった。いつもと違う服装をしていて、若き貴族といってもおかしくない衣装なので私は驚いてしまった。こうしてよく見ると、彼は驚くほど美形だった。
「あなた誰ですかっ!その狐を私によこしなさいっ!」
「王妃様。こちらの狐は今は私のモノなのです。私の嫁です。彼女があなたの息子を殺したわけではないのです。それはあなただって本当はわかっているのでは?」
「あなたの嫁?どういう意味……」
「グレースは私との契約で狐の姿になりました。彼女は私と契約しています。約束を果たせなければ、私の嫁となります。グレースがバリイエルの後継者の嫁というのは、バリイエル王朝が打ち出した戦略にすぎません。バリイエルの後継者とグレースは、今は特別な関係でもなんでもないです。それに繰り返しますが、彼女があなたの息子を裏切って殺したわけではないですよ」
義母はがっくりとうなだれた。
「お義母様、私ではございませぬわっ!」
「それならば、なぜあなたは大事な息子を殺した男の嫁になるのかしら?グレース、お答えなさいっ!」
私は亡くなった夫の母に囚われていた。チュゴアート王朝の国王と皇太子は殺された。その間、王妃は隣国に旅行中だったはずだ。私は、王妃は隣国にいる間は安全だが、戻ってきたら命の保障がないために、ことが起きた今はもはや戻っては来ないであろうと思っていたところがあった。
いや、もはやそれどころではない事態となったので、すっかり義母のことを失念していたというのもある。
北の魔女は義母に雇われた魔女だった。もうすぐ、私は何時間も狐の状態でいるしかない状態になってしまう。その前に今までの姿で義母にきちんと説明したかった。
「お義母様、どうか聞いてくださいませ」
「あなたは私の息子を騙していたということよね?あなたは息子と結婚する、つまりチュゴアート王朝に輿入れする前に、すでにバリイエルの息子と生涯をともにする誓約を交わしていたということよね」
「それはそうです。そのことはノアもご存じだったのです!お義母様っ!」
「息子が知っていてあなたと結婚したと?そんなバカなっ」
「本当でございます!ノアもご存じでした。だからノアは私を選んだのです、お義母様っ!」
「なんですって?」
「ノアは、私が許されざる恋をしているのを知っていました。バリイエルの後継者と私が恋をしているのを知った上で、バリイエルの後継者から私を奪うために私を選んだのです」
私の頬に平手打ちが飛んできた。右の頬と、すぐに左の頬も思いっきり叩かれた。私は後ろに両腕を縛られて座っていたが、衝撃で床に崩れ落ちた。痛くて悲しくて起き上がれない。
「この女狐がっ!申し訳ないけれど、あなたがバリイエル王朝に貢献することは許さないわ。息子の後を追って死んでもらうわ」
私は狐になるしかないと思った。腕が縛られているので縄を解けない。より腕の細い狐になるしか抜け出せないであろう。もしくは、魔力を使うしかない。この場合の魔力の見返りはなんだろう。
――円深帝は私が金塊の契約を果たすためなら、魔力を使って良いと言ったわ。私が死んだら、もしも私が戻れなかったら、金塊の契約が果たせないわっ……
「円深帝。金塊の契約を果たすために魔力を使うことをどうかお許しくださいっ!」
私は口に出してそう唱えた。
「なんですって?」
義母が床に倒れた私を蹴り上げようとして、私が言った言葉に一瞬動きを止めた。
私は龍の魔力を使って後ろに縛られていた縄を解いた。そして立ち上がって這うように床を動いた。義母が追ってきて私の髪の毛をつかんだので、左手で払った。左手から龍の形をした黄金の光が出た。
「痛いっ!」
義母は後ろずさった。
「あなたはやはり魔力が使えることを隠していたのねっ!女狐め。いろんなことを騙してうちの息子をたぶらかしたのね」
義母は泣きながら私に飛びかかってきた。
「お義母様っ!違うのですっ!」
私は泣き喚く義母からできるだけ遠くに離れて説明しようとした。けれども、時間切れで次の瞬間には狐になってしまった。
「まちなさいっ!狐!」
義母は泣きながら私を追ってきた。私は逃げた。
私が逃げた先に金髪のふわふわの髪の毛をした男性が立っていて、私は思わず彼の腕の中に飛び込んだ。
「グレース夫人、いかがなされた?」
「……円深帝?」
私は驚いて男性の腕に抱かれながら、男性を見上げた。男性は優しい顔をして、愛おしそうな目つきで私を一瞬見つめた。
――こんなに美形でした……?
私はいきなり登場した円深帝にびっくりしてしまった。いつもと違う服装をしていて、若き貴族といってもおかしくない衣装なので私は驚いてしまった。こうしてよく見ると、彼は驚くほど美形だった。
「あなた誰ですかっ!その狐を私によこしなさいっ!」
「王妃様。こちらの狐は今は私のモノなのです。私の嫁です。彼女があなたの息子を殺したわけではないのです。それはあなただって本当はわかっているのでは?」
「あなたの嫁?どういう意味……」
「グレースは私との契約で狐の姿になりました。彼女は私と契約しています。約束を果たせなければ、私の嫁となります。グレースがバリイエルの後継者の嫁というのは、バリイエル王朝が打ち出した戦略にすぎません。バリイエルの後継者とグレースは、今は特別な関係でもなんでもないです。それに繰り返しますが、彼女があなたの息子を裏切って殺したわけではないですよ」
義母はがっくりとうなだれた。
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