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稀代の悪女(2)
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空気が澄み渡る空に星が出てきた。美しい月も山の向こうに登っている。バルコニーに出る際から外を見つめると、民衆がバリイエルの宣言を今か今かと待ち構えているのが分かる。あちこちで松明が焚かれている。
ジョシュアが姿を表すと大歓声が上がった。けれども、非難の声も少なからずあった。
私がジョシュアの次に姿を表すと、耳が割れんばかりの悲鳴となじる声が一斉に上がった。民衆が悪意を表現して地鳴りのような怒声をあげている。
やはり私は裏切り者に見えるのだ。何もかも最初から私が仕組んだように見えるのだ。
私は口々に悪女となじられて石が飛んできた。
――危ないわっ!
ジョシュアは私の手をとって高らかに腕を突き上げた。星が瞬く夜空に光が満ちて、龍とペガサスを形どる光が夜空に映し出された。圧倒的な魔力を示す印だ。
悲鳴のようなどよめきが上がった。誰も予想もしなかったことが起こったのだから、国民の動揺も当然だ。私とジョシュアの秘密の関係が明るみになった。
「ここに宣言する!龍とペガサスの名の元に約束しよう!」
ジョシュアが高らかに民衆に宣言した。
「バリイエル王朝がこれより君主となる。初代ジョシュア・バウズザック・バリイエル国王が誕生したことをここに宣言する!」
私の右腕とジョシュアの左腕がもう一度一緒に夜空に突き上げられ、そこから眩いばかりの光を放ち、夜空に煌めきと龍とペガサスが描かれた。
今や民衆の声は驚嘆の声に変わった。魔力を有する君主と王妃の誕生を、夜空が言葉より雄弁に示しているからだ。
「バリイエル王朝の妃はグレースとする。ジョシュア・バウズザック・バリイエルが永遠の愛を誓ったのはグレース・フィッツクラレンスだ。これより彼女は私の王妃となる」
私の封印された魔力が解放された瞬間だった。
王家に嫁ぐ前に私がジョシュアに永遠の愛を誓った誓約魔法の証拠が夜空に浮かび上がっている。
民衆の前でジョシュアは左腕を突き上げたまま、右手で私をぐっと抱き寄せて熱烈な口付けした。
私たち二人の結びつきを固いものとすることで、二人の魔力が史上最強な魔力に昇格したように見えるだろう。
広場に集まった人々はどよめいている。
おお!
永遠の愛だ。
あの二人は初めての相手同士だ!
永遠の愛を誓って魔力を封印しあった二人だぞ!
大歓声が湧き上がった。数万人もの人々が熱狂している。私たちが立つバルコニーの後ろからも驚きの声が上がった。
「あの二人、初めての愛を誓った者同士だったのか!魔力が二人を惹きつけあっている!」
私たちの腕にはそれぞれ龍とペガサスの紋様が現れていた。私の魔力は龍に由来するもの。ジョシュアの魔力はペガサスに由来するもの。
大観衆は熱狂的に私たちを祝福した。魔力を持つ君主がいる国は繁栄を約束されるという古くからの言い伝えがある。前国王と皇太子は魔力を持たなかった。
私はこうして初恋の人によって捕らえられることを免れた。
私は別れた初恋の人が君主になって、その人の妻になることを国民の前で宣言した。
見方次第で、誓約までかわして永遠の愛を誓った初めての恋人を私が君主にしてしまったように見えるだろう。
国民にとっては稀代の悪女に見えるかもしれないけれど、誓って違う。
皮肉なことに、バリイエル一門だけが私が計画したわけではないことを知っている。他の全員は私が計画したと考えたに違いない。
こうして私とジョシュアは二人合わせて圧倒的な魔力を有することを証明したのだ。見返りが必要なことは誰にも告げていない。現時点で国内外で私たち二人を恐れない者はいないだろう。
ジョシュアが姿を表すと大歓声が上がった。けれども、非難の声も少なからずあった。
私がジョシュアの次に姿を表すと、耳が割れんばかりの悲鳴となじる声が一斉に上がった。民衆が悪意を表現して地鳴りのような怒声をあげている。
やはり私は裏切り者に見えるのだ。何もかも最初から私が仕組んだように見えるのだ。
私は口々に悪女となじられて石が飛んできた。
――危ないわっ!
ジョシュアは私の手をとって高らかに腕を突き上げた。星が瞬く夜空に光が満ちて、龍とペガサスを形どる光が夜空に映し出された。圧倒的な魔力を示す印だ。
悲鳴のようなどよめきが上がった。誰も予想もしなかったことが起こったのだから、国民の動揺も当然だ。私とジョシュアの秘密の関係が明るみになった。
「ここに宣言する!龍とペガサスの名の元に約束しよう!」
ジョシュアが高らかに民衆に宣言した。
「バリイエル王朝がこれより君主となる。初代ジョシュア・バウズザック・バリイエル国王が誕生したことをここに宣言する!」
私の右腕とジョシュアの左腕がもう一度一緒に夜空に突き上げられ、そこから眩いばかりの光を放ち、夜空に煌めきと龍とペガサスが描かれた。
今や民衆の声は驚嘆の声に変わった。魔力を有する君主と王妃の誕生を、夜空が言葉より雄弁に示しているからだ。
「バリイエル王朝の妃はグレースとする。ジョシュア・バウズザック・バリイエルが永遠の愛を誓ったのはグレース・フィッツクラレンスだ。これより彼女は私の王妃となる」
私の封印された魔力が解放された瞬間だった。
王家に嫁ぐ前に私がジョシュアに永遠の愛を誓った誓約魔法の証拠が夜空に浮かび上がっている。
民衆の前でジョシュアは左腕を突き上げたまま、右手で私をぐっと抱き寄せて熱烈な口付けした。
私たち二人の結びつきを固いものとすることで、二人の魔力が史上最強な魔力に昇格したように見えるだろう。
広場に集まった人々はどよめいている。
おお!
永遠の愛だ。
あの二人は初めての相手同士だ!
永遠の愛を誓って魔力を封印しあった二人だぞ!
大歓声が湧き上がった。数万人もの人々が熱狂している。私たちが立つバルコニーの後ろからも驚きの声が上がった。
「あの二人、初めての愛を誓った者同士だったのか!魔力が二人を惹きつけあっている!」
私たちの腕にはそれぞれ龍とペガサスの紋様が現れていた。私の魔力は龍に由来するもの。ジョシュアの魔力はペガサスに由来するもの。
大観衆は熱狂的に私たちを祝福した。魔力を持つ君主がいる国は繁栄を約束されるという古くからの言い伝えがある。前国王と皇太子は魔力を持たなかった。
私はこうして初恋の人によって捕らえられることを免れた。
私は別れた初恋の人が君主になって、その人の妻になることを国民の前で宣言した。
見方次第で、誓約までかわして永遠の愛を誓った初めての恋人を私が君主にしてしまったように見えるだろう。
国民にとっては稀代の悪女に見えるかもしれないけれど、誓って違う。
皮肉なことに、バリイエル一門だけが私が計画したわけではないことを知っている。他の全員は私が計画したと考えたに違いない。
こうして私とジョシュアは二人合わせて圧倒的な魔力を有することを証明したのだ。見返りが必要なことは誰にも告げていない。現時点で国内外で私たち二人を恐れない者はいないだろう。
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