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第一章
岩山のハイルヴェルフェ城の恋の行方(2)
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城の入り口では、侍女や従者が皆出てきて、私たちを温かく出迎えてくれた。
「初めまして。ようこそ我が城へ。旅でお疲れのことでしょう。客間を準備しておきましたから。騎士の皆さんにも侍女の皆さんにもお部屋をご用意しておりますよ」
夫人のエレオノーラ・シェーンボルンは、若々しい動作で私たちを城内に招き入れてくれた。
「こちらは私の妻のロザーラです」
ラファエルが私を紹介すると、すかさずケネス王子もレティシアを「私の花嫁です」と紹介した。私たちは城主にも夫人にも大歓迎を受けた。
簡素な十字型のシャンデリラの蝋燭が照らすホールは、とても豪華な作りだった。私たちは優美な作りにため息を着いたけれども、湯が用意されていると告げられるや否や、そっちに気を取られた。
こんな岩城で湯を浴びることができるとは、贅沢だ。
「井戸はちゃんと掘ってあるからね。ここでは窓から城の景色を眺めながら湯に入れるんだ。浴室の窓は全開にできるよ。今なら夕暮れが見える」
ケネス王子がささやき、私たちはそうかとうなずいた。私とラファエルは目を見合わせた。期待に潤んだ碧い瞳が私を見つめていて、私はラファエルに小さくうなずいた。ラファエルと一緒に入ろう。
「ほら、ケネス王子!こちらが陛下からのお手紙です!」
夫人が私たちに部屋と浴室の説明をしている間に、城主のゲオルグが急いで戻ってきた。小さな筒を手にしている。鳩に括りつけられていたものらしい。
「ありがとう」
ケネス王子は非常に緊張した面持ちで筒を開けた。ゆっくりと深呼吸をしてから手紙を広げた。途端に満面の笑みになってレティシアを抱き寄せた。
「我が愛しいレティシアよ。父上、つまり陛下のお許しが出たよ。どうか私と結婚してください」
ケネス王子はひざまずき、指輪を掲げてレティシアにプロポーズした。
「はい、喜んでお受けいたします」
頬を染めて瞳を煌めかせているレティシアの美しい顔をプラチナブロンドの髪が柔らかく縁取り、天使のような佇まいのレティシアは、ケネス王子に指輪をはめてもらった。
「この指輪は僕の母上の大切な形見なんだ。父上が母上にプロポーズした時の指輪だ。兄のウィリアムは祖母の指輪を引き継いだ。ありがとう!レティシア。君をずっと大切にする」
ケネス王子はレティシアに口付けをして、レティシアもそれに応えるようにケネス王子の背中に手を回した。
ラファエルと私も、思わず抱き合って二人の様子を見守った。城主のゲオルグもエレオノーラも感激した様子だった。
「あんなに小さかったケネス王子が結婚だなんて……」
「皆さまが湯を浴びている間に、何かお祝いのお菓子ができないか料理人に相談して参りますわ。今晩は特別なお祝いをしなければなりませんわっ!」
夫人のエレオノーラはますます張り切った様子になり、いそいそと料理人の元に向かった。城主のゲオルグと従者に案内されて、私たちはそれぞれの部屋と浴室を案内されたのだった。
部屋の前でゲオルグに封筒をラファエルは渡された。
「8年前、ジークベインリードハルトの皇后様が突然尋ねていらして、あなたへの手紙を託されました。あなたがもしやってきたら丁重に歓迎してやって欲しいと頼まれたのですよ」
ゲオルグは早口で他の誰にも聞かれないようなささやき声でラファエルに説明した。
「ありがとう。確かに受け取った」
ラファエルはうなずき、ゲオルグからの手紙を大切に胸ポケットにしまった。
ゲオルグは素早く部屋から離れて行った。まるで誰にも聞かれたくないやりとりをした後のようだった。彼の行動は、彼はこれが何を意味しているのか悟っているようだった。
ラファエルは私と一緒に封筒を開けて、真っ白い紙が出てくるのを見つめた。
「やっぱり」
「そうだな」
私とラファエルはため息をついた。やはりそうそう簡単には宝石の場所を教えてくれないようだ。
「さあ、浴室に向かおう。しばらくオリオン座のことも皇帝の椅子争いのことも忘れよう。ロザーラ、君と楽しみたい」
ラファエルは私の唇に熱烈なキスをした。私はラファエルに手を引かれれて浴室に一緒に入ったのだった。
窓の外からはピンク色に染まった空が見えていて、一番星が空に輝き、それはそれは幻想的な光景が広がっていた。この辺りが一望できる岩山の頂上ならではの光景だった。大きな美しい川の向こうに街と葡萄畑が広がっているのが見える。
ゆっくりと服を脱いだラファエルがこちらを振り向いた。逞しい胸に引きよせられて、私は服のボタンを外された。
「初めまして。ようこそ我が城へ。旅でお疲れのことでしょう。客間を準備しておきましたから。騎士の皆さんにも侍女の皆さんにもお部屋をご用意しておりますよ」
夫人のエレオノーラ・シェーンボルンは、若々しい動作で私たちを城内に招き入れてくれた。
「こちらは私の妻のロザーラです」
ラファエルが私を紹介すると、すかさずケネス王子もレティシアを「私の花嫁です」と紹介した。私たちは城主にも夫人にも大歓迎を受けた。
簡素な十字型のシャンデリラの蝋燭が照らすホールは、とても豪華な作りだった。私たちは優美な作りにため息を着いたけれども、湯が用意されていると告げられるや否や、そっちに気を取られた。
こんな岩城で湯を浴びることができるとは、贅沢だ。
「井戸はちゃんと掘ってあるからね。ここでは窓から城の景色を眺めながら湯に入れるんだ。浴室の窓は全開にできるよ。今なら夕暮れが見える」
ケネス王子がささやき、私たちはそうかとうなずいた。私とラファエルは目を見合わせた。期待に潤んだ碧い瞳が私を見つめていて、私はラファエルに小さくうなずいた。ラファエルと一緒に入ろう。
「ほら、ケネス王子!こちらが陛下からのお手紙です!」
夫人が私たちに部屋と浴室の説明をしている間に、城主のゲオルグが急いで戻ってきた。小さな筒を手にしている。鳩に括りつけられていたものらしい。
「ありがとう」
ケネス王子は非常に緊張した面持ちで筒を開けた。ゆっくりと深呼吸をしてから手紙を広げた。途端に満面の笑みになってレティシアを抱き寄せた。
「我が愛しいレティシアよ。父上、つまり陛下のお許しが出たよ。どうか私と結婚してください」
ケネス王子はひざまずき、指輪を掲げてレティシアにプロポーズした。
「はい、喜んでお受けいたします」
頬を染めて瞳を煌めかせているレティシアの美しい顔をプラチナブロンドの髪が柔らかく縁取り、天使のような佇まいのレティシアは、ケネス王子に指輪をはめてもらった。
「この指輪は僕の母上の大切な形見なんだ。父上が母上にプロポーズした時の指輪だ。兄のウィリアムは祖母の指輪を引き継いだ。ありがとう!レティシア。君をずっと大切にする」
ケネス王子はレティシアに口付けをして、レティシアもそれに応えるようにケネス王子の背中に手を回した。
ラファエルと私も、思わず抱き合って二人の様子を見守った。城主のゲオルグもエレオノーラも感激した様子だった。
「あんなに小さかったケネス王子が結婚だなんて……」
「皆さまが湯を浴びている間に、何かお祝いのお菓子ができないか料理人に相談して参りますわ。今晩は特別なお祝いをしなければなりませんわっ!」
夫人のエレオノーラはますます張り切った様子になり、いそいそと料理人の元に向かった。城主のゲオルグと従者に案内されて、私たちはそれぞれの部屋と浴室を案内されたのだった。
部屋の前でゲオルグに封筒をラファエルは渡された。
「8年前、ジークベインリードハルトの皇后様が突然尋ねていらして、あなたへの手紙を託されました。あなたがもしやってきたら丁重に歓迎してやって欲しいと頼まれたのですよ」
ゲオルグは早口で他の誰にも聞かれないようなささやき声でラファエルに説明した。
「ありがとう。確かに受け取った」
ラファエルはうなずき、ゲオルグからの手紙を大切に胸ポケットにしまった。
ゲオルグは素早く部屋から離れて行った。まるで誰にも聞かれたくないやりとりをした後のようだった。彼の行動は、彼はこれが何を意味しているのか悟っているようだった。
ラファエルは私と一緒に封筒を開けて、真っ白い紙が出てくるのを見つめた。
「やっぱり」
「そうだな」
私とラファエルはため息をついた。やはりそうそう簡単には宝石の場所を教えてくれないようだ。
「さあ、浴室に向かおう。しばらくオリオン座のことも皇帝の椅子争いのことも忘れよう。ロザーラ、君と楽しみたい」
ラファエルは私の唇に熱烈なキスをした。私はラファエルに手を引かれれて浴室に一緒に入ったのだった。
窓の外からはピンク色に染まった空が見えていて、一番星が空に輝き、それはそれは幻想的な光景が広がっていた。この辺りが一望できる岩山の頂上ならではの光景だった。大きな美しい川の向こうに街と葡萄畑が広がっているのが見える。
ゆっくりと服を脱いだラファエルがこちらを振り向いた。逞しい胸に引きよせられて、私は服のボタンを外された。
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