28 / 68
第一章
恋の予感
しおりを挟む
馬の走る蹄の音が私の頭に響く。私たちは前傾姿勢で覆い被さるようにして馬に乗り、ほぼ全速力で疾走していた。緩やかなカーブを描いて登っていく山の中だった。低木が多く、冬枯れしており、空気は澄んでいた。太陽は高く上がっている。
先頭をケネス王子、レティシア、ラファエル、私の順で走り、すぐ後ろに騎士にまじってベアトリスとジュリアが走っていた。ジュリアとベアトリスが馬が乗れることは、今回の旅のポイントだ。前回私が死神と契約する羽目になった旅では、別の馬に乗れない侍女だった。
レティシアは剣だけでなく、乗馬も非常に得意だ。私も普通に乗れたが、レティシアはその比ではないほど上手かった。先頭を走るケネス王子が時折心配そうに後ろを振り返って、レティシアの様子を確認しているのがわかった。
敵に見つかるわけにはいかない。敵に目的地を悟られるわけにはいかない。私たちは大急ぎで移動していた。
皆で話し合って今回は船で移動するのではなく、馬を使うと決めた。
2つ目の宝石を回して表示された暗号文字は、ヴァイマルの街の座標を示していた。白ぶどうとワインの産地で有名な街だ。朝食の後、私たちはエーリヒ城を静かに馬で出て、そのまま疾走をし始めた。一刻も早く大聖堂に辿りつきたい。その一心で皆は馬を飛ばしていた。
ヴァイマルに一番早く辿り着くには、馬を使うのが一番だった。いきなり相談したにも関わらず、エーリヒ城の城主は快く馬を貸し出してくれた。
次のヴァイマルは白ぶどうの産地で有名だが、城はない。もしもこのまま船で旅を続けるなら、リーデンマルク川沿いの水の都であるゴーニャのフラン城が第3の城と推測するのが妥当だろう。しかし、宝石のありかの順番を決めるのは古びた王冠なのだ。
私たちは王冠の暗号文字にしたがって、第3の宝石のありかはヴァイマルだと決めたのだ。
今朝方私たちはエーリヒ城の客間で目的地を話し合った。どうやって移動するかも話し合った。
その間中、ケネス王子は豊かな髪の毛を自分の手でぐしゃぐしゃにしながら、考え込んで意見を出していた。
「この座標はヴァイマルの街を示している。ゴーニャの街ではない。となるとだ。ラファエル、おばあさまの手紙にヴァイマルの名前があったか?」
ケネス王子は何かを考え込むような様子でラファエルに聞いた。
「いや、なかった」
「つまり敵も知らない街がターゲットということになるな。白ぶどうの山地で有名ということは、第3の宝石の隠し場所は城ではないのかもしれない。ヴァイマルの街には城はなく、吸血鬼の伝説で有名な小さな廃城しかない」
ケネス王子は考え込んだ。彼はこの国の王子だ。土地の特徴はこの中では一番頭に入っている。
「はるか昔のローマの時代にぶどうを栽培する方法が伝授されたヴァイマルの街には、ローマ人が構築を始めた伝説の大聖堂がある。そこに隠されている可能性があるかもしれない」
ケネス王子は街の中心地あたりをさしている座標をじっと見つめていた。
「よし、ケネスの意見に賭けよう」
「そうね。ヴァイマルの街には城がない。となると、敵は私たちが城を巡っていると思っているのだし、好都合ではないかしら?」
「いいわね?ロザーラ」
「そうね。そうしましょう」
ラファエルとレティシアと私は、ヴァイマルに向かうことで同意した。こうして、大陸を横断する旅は陸路から水路に変わり、また陸路に戻ったのだ。
日中でもその日はかなり冷えていた。ヴァイマルの街に着くと、私たちは吐く息を白くさせて真っ直ぐに大聖堂に向かった。しかし、その大きな大聖堂の中では目的の宝石は全然見つからなかった。
「ここにないのかしら?」
私たちは時間をかけて大聖堂の中を探しまわった。
レティシアが何度も探した椅子の下を再度見ようとしとき、偶然ケネス王子の手がレティシアの手に重なった。
「あっ!ごめんなさい」
「いえ、こちらこそごめんなさい」
レティシアとケネス王子は互いに謝りながらも二人とも頬を赤らめていた。
「君の手には剣のたこがあるね……」
レティシアは真っ赤になった。
「ちょっと見せていただけますか?」
ケネス王子はレティシアの手を取り、しげしげと眺めていた。
「左時計台の方!」
その時、急にケネス王子が叫んでレティシアの腕を引っ張った。それと同時に左側にレティシアが倒れ込んだ。ケネス王子の腕の中にレティシアは倒れ込み、ラファエルが逃げ去った男を追おうとした。
一人の男が何か不審な動きをしたのだ。レティシアめがけて何かを投げつけるそぶりを見せた。
「馬泥棒かもしれないから、馬の様子ががちょっと心配だから見てくれないか」
ケネス王子はラファエルに頼んだ。
腕の中ではレティシアがドギマギした様子でケネス王子の顔を見上げていた。
二人の目が合った。そのまま唇が重なり、二人は長い口付けをかわした。
レティシアはケネス王子の髪の毛に優しく手を当てて瞳をのぞき込んだ。
「あなたは、私のことが好きですか?」
「はい、あなたにとても惹かれています。僕たち結婚しませんか?」
私はそばでささやかれる二人の愛の告白にどきどきしていた。気配を消してその場から遠ざかろうとした。
「ロザーラ、ちょっと後で話があるわ」
そおっと私が遠ざかろうとした姿が目に入ったらしいレティシアは、私に声をかけた。
「わ……わかったわ」
私は顔を真っ赤にしてその場を足早に去った。人のロマンスの始まりを目撃する現場にいるのはとても気まずい。胸の大きなレティシアが頬を真っ赤に初めて瞳を潤ませている姿を見て、正気でいられる男性の方が珍しいとは思う。こと女性に関しては、ケネス王子は非常に真面目な方だ。今まで浮いた噂一つ無かったお方で、兄である第一王子ウィリアムとはその点は全然違った。
先頭をケネス王子、レティシア、ラファエル、私の順で走り、すぐ後ろに騎士にまじってベアトリスとジュリアが走っていた。ジュリアとベアトリスが馬が乗れることは、今回の旅のポイントだ。前回私が死神と契約する羽目になった旅では、別の馬に乗れない侍女だった。
レティシアは剣だけでなく、乗馬も非常に得意だ。私も普通に乗れたが、レティシアはその比ではないほど上手かった。先頭を走るケネス王子が時折心配そうに後ろを振り返って、レティシアの様子を確認しているのがわかった。
敵に見つかるわけにはいかない。敵に目的地を悟られるわけにはいかない。私たちは大急ぎで移動していた。
皆で話し合って今回は船で移動するのではなく、馬を使うと決めた。
2つ目の宝石を回して表示された暗号文字は、ヴァイマルの街の座標を示していた。白ぶどうとワインの産地で有名な街だ。朝食の後、私たちはエーリヒ城を静かに馬で出て、そのまま疾走をし始めた。一刻も早く大聖堂に辿りつきたい。その一心で皆は馬を飛ばしていた。
ヴァイマルに一番早く辿り着くには、馬を使うのが一番だった。いきなり相談したにも関わらず、エーリヒ城の城主は快く馬を貸し出してくれた。
次のヴァイマルは白ぶどうの産地で有名だが、城はない。もしもこのまま船で旅を続けるなら、リーデンマルク川沿いの水の都であるゴーニャのフラン城が第3の城と推測するのが妥当だろう。しかし、宝石のありかの順番を決めるのは古びた王冠なのだ。
私たちは王冠の暗号文字にしたがって、第3の宝石のありかはヴァイマルだと決めたのだ。
今朝方私たちはエーリヒ城の客間で目的地を話し合った。どうやって移動するかも話し合った。
その間中、ケネス王子は豊かな髪の毛を自分の手でぐしゃぐしゃにしながら、考え込んで意見を出していた。
「この座標はヴァイマルの街を示している。ゴーニャの街ではない。となるとだ。ラファエル、おばあさまの手紙にヴァイマルの名前があったか?」
ケネス王子は何かを考え込むような様子でラファエルに聞いた。
「いや、なかった」
「つまり敵も知らない街がターゲットということになるな。白ぶどうの山地で有名ということは、第3の宝石の隠し場所は城ではないのかもしれない。ヴァイマルの街には城はなく、吸血鬼の伝説で有名な小さな廃城しかない」
ケネス王子は考え込んだ。彼はこの国の王子だ。土地の特徴はこの中では一番頭に入っている。
「はるか昔のローマの時代にぶどうを栽培する方法が伝授されたヴァイマルの街には、ローマ人が構築を始めた伝説の大聖堂がある。そこに隠されている可能性があるかもしれない」
ケネス王子は街の中心地あたりをさしている座標をじっと見つめていた。
「よし、ケネスの意見に賭けよう」
「そうね。ヴァイマルの街には城がない。となると、敵は私たちが城を巡っていると思っているのだし、好都合ではないかしら?」
「いいわね?ロザーラ」
「そうね。そうしましょう」
ラファエルとレティシアと私は、ヴァイマルに向かうことで同意した。こうして、大陸を横断する旅は陸路から水路に変わり、また陸路に戻ったのだ。
日中でもその日はかなり冷えていた。ヴァイマルの街に着くと、私たちは吐く息を白くさせて真っ直ぐに大聖堂に向かった。しかし、その大きな大聖堂の中では目的の宝石は全然見つからなかった。
「ここにないのかしら?」
私たちは時間をかけて大聖堂の中を探しまわった。
レティシアが何度も探した椅子の下を再度見ようとしとき、偶然ケネス王子の手がレティシアの手に重なった。
「あっ!ごめんなさい」
「いえ、こちらこそごめんなさい」
レティシアとケネス王子は互いに謝りながらも二人とも頬を赤らめていた。
「君の手には剣のたこがあるね……」
レティシアは真っ赤になった。
「ちょっと見せていただけますか?」
ケネス王子はレティシアの手を取り、しげしげと眺めていた。
「左時計台の方!」
その時、急にケネス王子が叫んでレティシアの腕を引っ張った。それと同時に左側にレティシアが倒れ込んだ。ケネス王子の腕の中にレティシアは倒れ込み、ラファエルが逃げ去った男を追おうとした。
一人の男が何か不審な動きをしたのだ。レティシアめがけて何かを投げつけるそぶりを見せた。
「馬泥棒かもしれないから、馬の様子ががちょっと心配だから見てくれないか」
ケネス王子はラファエルに頼んだ。
腕の中ではレティシアがドギマギした様子でケネス王子の顔を見上げていた。
二人の目が合った。そのまま唇が重なり、二人は長い口付けをかわした。
レティシアはケネス王子の髪の毛に優しく手を当てて瞳をのぞき込んだ。
「あなたは、私のことが好きですか?」
「はい、あなたにとても惹かれています。僕たち結婚しませんか?」
私はそばでささやかれる二人の愛の告白にどきどきしていた。気配を消してその場から遠ざかろうとした。
「ロザーラ、ちょっと後で話があるわ」
そおっと私が遠ざかろうとした姿が目に入ったらしいレティシアは、私に声をかけた。
「わ……わかったわ」
私は顔を真っ赤にしてその場を足早に去った。人のロマンスの始まりを目撃する現場にいるのはとても気まずい。胸の大きなレティシアが頬を真っ赤に初めて瞳を潤ませている姿を見て、正気でいられる男性の方が珍しいとは思う。こと女性に関しては、ケネス王子は非常に真面目な方だ。今まで浮いた噂一つ無かったお方で、兄である第一王子ウィリアムとはその点は全然違った。
2
お気に入りに追加
155
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる
えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。
一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。
しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。
皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる