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第一章
大陸の果ての辺境伯の姿をした大国ジークベインリードハルトの未来の皇帝
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私がここで伝えなければならないことは幾つかある。
大陸の果てにある辺境の地だと考えられていたコンラート地方は、やがて大発展を遂げるのだが、当時は誰にも予想もつかないことだった。
リシェール伯の母君は陛下の妹だった。彼の母君は隣国の大国ジークベインリードハルトの皇帝の次男に嫁いだものの、そこで生まれた彼は叔父の元に送り込まれ、つまり我が国の陛下の元に送り込まれて十年あまりを修行に費やしていた。この十年あまり、陛下は甥っ子である彼を非常に可愛がっていた。
事実は、隣国の大国で後継者争いが活発化し、それに巻き込まれることを心配した妹君から、実の兄である陛下に我が子の庇護を求められて、陛下が若い甥っ子の面倒を見ていたという背景があった。けれども、そんなことは当時のほとんどの人が知るよしもなかった。
やがてリシェール伯の父君は、兄であった隣国の皇太子の暗殺に伴って隣国ジークベインリードハルトの皇帝となる。リシェール伯ラファエルは、大国の皇帝の嫡男となり、大国の皇位継承権第一位となってしまう。しかし、当時はそんな未来のことは私も含めて誰も想像できないことだった。正直に言うと、もしかすると唯一陛下だけはこのことを予測していたのかもしれない。
この時はまだ、遥か辺境の地に居を構える素朴なリシェール伯爵としてしか、私は彼のことを知らない。
貧しい没落令嬢であった私ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、仇であった自分を死に追いやろうとした公爵家次男のジェラールを追い払ってくれた男性が、自分の夫になるという衝撃から立ち直れないまま、母と妹が帰宅して質問攻めにあっているところだった。
「ロザーラ、こちらの方は?」
「執事もまだお名前を伺っていないとか。あの……こちらは?」
母と姉は執事と侍女の手助けを借りて、玄関で服に降り積もった雪をはたき落として、賑やかにおしゃべりをしながら暖かい暖炉の燃える部屋に入ってきたところだった。すぐに4名の騎士と一緒に暖をとっていたリシェール伯が、サッと母と姉に恭しく挨拶をした。
「お母様、お姉様……あの……こちらの方は私の夫になるそうです」
母と姉は私の言葉に狼狽えて、言葉も出ない様子だった。
「あなたの夫と言ったの?ロザーラ!?」
「ええ、私もそう聞こえましたわよ、ロザーラ!?」
やっと二人が絞り出すように言うと、私は手に持っていた陛下からの手紙のことを思い出した。
「あの……て……手紙がありますっ!陛下のお手紙がこちらにあります」
私は母に駆け寄って手紙を渡した。母は震える手で広げて読み始めた。姉は母の肩に頬をくっつけて一緒に声をひそめて読んでいる。
私はジェラールのことを二人に話すつもりは全くなかった。私の様子からリシェール伯も何かを悟ったらしく、そのことのついては黙っていてくれた。
――どうやら察しが良い方のようで良かったわ。
私はそのことに心底ほっとしていた。公爵家の次男であるジェラールが私に何をしようとしたかについて母と姉に知られるのは絶対に嫌だった。母と姉には絶対に知られたくはない。私がそんな目にあったと知ればどれほど嘆き悲しむことだろう。
「『持参金は私が用意する。これは褒賞金の一部だ』なんですって……まあ……」
母が驚きのあまりに危うく床に崩れ落ちそうな様子を見せたので、素早く私とリシェール伯と姉が母を支えて、椅子に座らせた。
「あ……ありがとうございます」
私と姉はリシェール伯にお礼を伝えると、彼は「いえいえ、私を頼ってください」と小さくささやいてくれた。
私と姉は顔を見合わせた。私は小さく姉にうなずいた。姉は、大きな瞳にみるみる涙をいっぱいに溜め込んで唇を震わせて私に抱きついてきた。
「あなた、受けたのね?」
姉は小さな声で私に聞いてきた。
「ええ。受けたわ」
私は姉の背中をとんとんと優しく叩きながら、答えた。
「ロザーラ、おめでとう」
姉は涙を瞳から溢れ出させて嗚咽を漏らしながら、私を祝福してくれた。
「ありがとう、お姉様」
私は泣く姉の涙をそっとハンカチで拭ってあげて、椅子に呆然と座り込む母の膝に手を添えた。床に膝をついて母の顔を見上げる。私は微笑んだ。
「お母様、陛下の申し出を受けますわ。私はリシェール伯の元に嫁ぎます。幸せになりますわ。とても素敵な方ですもの。私は必ず幸せになりますわ」
私がそう母にささやくと、母は私の手を優しく握った後に、私の頬を両手で包んで私の顔をのぞき込んだ。
「ロザーラ、遠くに嫁ぐのね……」
「頻繁に手紙を書きますわ、お母様」
母は、私たちの様子を見守っていたリシェール伯の方を向いてゆっくりと立ち上がって言葉を発した。
「動揺してしまい、先程は少しふらついてしまったところを助けていただいてありがとうございます。どうか、娘をよろしくお願いいたします。こんな勿体無いお話、本当にありがとうございます。私からも申し上げます。我がエヴルー家は陛下の提案を謹んでお受けいたします。あなたのようなご立派な方に娘をもらっていただいて、本当に嬉しく思います」
母の言葉にリシェール伯はサッとひざまずいた。私のすぐ横にひざまずいてくれている。
「お嬢様を幸せにいたします。毎年は難しいかも知れませんが、数年に一度はこちらに戻って来れると思います。私も陛下に会う必要がございますため。ロザーラ嬢も一緒に連れて来られるよう、私も努力いたします」
私はその言葉を聞いて涙が溢れてきた。
――ジェラールから助けてくれたこの人は、私が凍死する運命を回避してくれたわ。母と姉が安心できるような温かい言葉を言ってくれている。私は感謝しなければ……
「ありがとうございます」
私は隣に一緒になってひざまずいているリシェール伯に感謝の言葉を心から告げた。彼はチラッと私の涙の溢れた顔を見て、一瞬戸惑った表情をして頬を赤らめた。
彼は吸い込まれそうなほどの透き通った碧い瞳をもち、どこか影を感じさせる際立つ美貌の持ち主だった。長身で長い髪を後ろに束ねていて、堂々とした佇まいだった。まるで王者のような風格を備えていながら、まだ若く初々しさもあり、美しい豹のような機敏さも持ち合わせていた。
「まあ!ありがとうございます。さあ、二人とも立ってください」
私とリシェール伯は母に手を差し伸べられて、一緒に立ち上がった。
「二人並ぶとあなたたちはお似合いに見えるわ」
母の横で姉が涙声でささやいた。姉も微笑んでいる。
「ええ、ほんとね」
母は声を震わせていて肩をひくつかせていたが、すっと深呼吸をするとにっこりと笑って私たちを見つめた。
「さあさ、今日はお祝いの食事を用意せねばですね。あなたはもう、私の息子も同然ですわ。騎士の皆さんも今日は我が家に泊まっていくしかありませんわよ。どのみち雪で帰れませんわ。お祝いのご馳走を精一杯用意させていただきますわ」
母は張り切った様子でリシェール伯の肩を抱き、4名の騎士の顔を見回して微笑んだ。
こうしてエヴルー家は大雪の中、お祝いの食事と5名の客人の宿泊準備で大忙しとなったのだった。
陛下のくれた褒賞金で食糧庫をいっぱいにしていたことが早速役立った。昔から勤めてくれていた料理人と侍女を呼び戻していて本当に良かった。料理人と侍女も私の結婚話に涙を流して喜んでくれて、張り切って料理の腕を振るってくれた。
私の死の代わりに、エヴルー家には幸せな笑いが溢れた夜だった。
私が死神に会うのはあと3回だ。この時代に大陸を横断する旅は命懸けであった。まだよく知らぬリシェール伯に従って、私が大陸を横断する旅に出るのは三日後のことだった。
死の運命を変えた日、私は未来の夫であり、大陸の果ての辺境伯の姿をした大国ジークベインリードハルトの未来の皇帝に出会ったのだ。
この時の未来の皇帝は自分の運命など知らず、実直でかっこいい辺境伯のラファエルそのものだった。
大陸の果てにある辺境の地だと考えられていたコンラート地方は、やがて大発展を遂げるのだが、当時は誰にも予想もつかないことだった。
リシェール伯の母君は陛下の妹だった。彼の母君は隣国の大国ジークベインリードハルトの皇帝の次男に嫁いだものの、そこで生まれた彼は叔父の元に送り込まれ、つまり我が国の陛下の元に送り込まれて十年あまりを修行に費やしていた。この十年あまり、陛下は甥っ子である彼を非常に可愛がっていた。
事実は、隣国の大国で後継者争いが活発化し、それに巻き込まれることを心配した妹君から、実の兄である陛下に我が子の庇護を求められて、陛下が若い甥っ子の面倒を見ていたという背景があった。けれども、そんなことは当時のほとんどの人が知るよしもなかった。
やがてリシェール伯の父君は、兄であった隣国の皇太子の暗殺に伴って隣国ジークベインリードハルトの皇帝となる。リシェール伯ラファエルは、大国の皇帝の嫡男となり、大国の皇位継承権第一位となってしまう。しかし、当時はそんな未来のことは私も含めて誰も想像できないことだった。正直に言うと、もしかすると唯一陛下だけはこのことを予測していたのかもしれない。
この時はまだ、遥か辺境の地に居を構える素朴なリシェール伯爵としてしか、私は彼のことを知らない。
貧しい没落令嬢であった私ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、仇であった自分を死に追いやろうとした公爵家次男のジェラールを追い払ってくれた男性が、自分の夫になるという衝撃から立ち直れないまま、母と妹が帰宅して質問攻めにあっているところだった。
「ロザーラ、こちらの方は?」
「執事もまだお名前を伺っていないとか。あの……こちらは?」
母と姉は執事と侍女の手助けを借りて、玄関で服に降り積もった雪をはたき落として、賑やかにおしゃべりをしながら暖かい暖炉の燃える部屋に入ってきたところだった。すぐに4名の騎士と一緒に暖をとっていたリシェール伯が、サッと母と姉に恭しく挨拶をした。
「お母様、お姉様……あの……こちらの方は私の夫になるそうです」
母と姉は私の言葉に狼狽えて、言葉も出ない様子だった。
「あなたの夫と言ったの?ロザーラ!?」
「ええ、私もそう聞こえましたわよ、ロザーラ!?」
やっと二人が絞り出すように言うと、私は手に持っていた陛下からの手紙のことを思い出した。
「あの……て……手紙がありますっ!陛下のお手紙がこちらにあります」
私は母に駆け寄って手紙を渡した。母は震える手で広げて読み始めた。姉は母の肩に頬をくっつけて一緒に声をひそめて読んでいる。
私はジェラールのことを二人に話すつもりは全くなかった。私の様子からリシェール伯も何かを悟ったらしく、そのことのついては黙っていてくれた。
――どうやら察しが良い方のようで良かったわ。
私はそのことに心底ほっとしていた。公爵家の次男であるジェラールが私に何をしようとしたかについて母と姉に知られるのは絶対に嫌だった。母と姉には絶対に知られたくはない。私がそんな目にあったと知ればどれほど嘆き悲しむことだろう。
「『持参金は私が用意する。これは褒賞金の一部だ』なんですって……まあ……」
母が驚きのあまりに危うく床に崩れ落ちそうな様子を見せたので、素早く私とリシェール伯と姉が母を支えて、椅子に座らせた。
「あ……ありがとうございます」
私と姉はリシェール伯にお礼を伝えると、彼は「いえいえ、私を頼ってください」と小さくささやいてくれた。
私と姉は顔を見合わせた。私は小さく姉にうなずいた。姉は、大きな瞳にみるみる涙をいっぱいに溜め込んで唇を震わせて私に抱きついてきた。
「あなた、受けたのね?」
姉は小さな声で私に聞いてきた。
「ええ。受けたわ」
私は姉の背中をとんとんと優しく叩きながら、答えた。
「ロザーラ、おめでとう」
姉は涙を瞳から溢れ出させて嗚咽を漏らしながら、私を祝福してくれた。
「ありがとう、お姉様」
私は泣く姉の涙をそっとハンカチで拭ってあげて、椅子に呆然と座り込む母の膝に手を添えた。床に膝をついて母の顔を見上げる。私は微笑んだ。
「お母様、陛下の申し出を受けますわ。私はリシェール伯の元に嫁ぎます。幸せになりますわ。とても素敵な方ですもの。私は必ず幸せになりますわ」
私がそう母にささやくと、母は私の手を優しく握った後に、私の頬を両手で包んで私の顔をのぞき込んだ。
「ロザーラ、遠くに嫁ぐのね……」
「頻繁に手紙を書きますわ、お母様」
母は、私たちの様子を見守っていたリシェール伯の方を向いてゆっくりと立ち上がって言葉を発した。
「動揺してしまい、先程は少しふらついてしまったところを助けていただいてありがとうございます。どうか、娘をよろしくお願いいたします。こんな勿体無いお話、本当にありがとうございます。私からも申し上げます。我がエヴルー家は陛下の提案を謹んでお受けいたします。あなたのようなご立派な方に娘をもらっていただいて、本当に嬉しく思います」
母の言葉にリシェール伯はサッとひざまずいた。私のすぐ横にひざまずいてくれている。
「お嬢様を幸せにいたします。毎年は難しいかも知れませんが、数年に一度はこちらに戻って来れると思います。私も陛下に会う必要がございますため。ロザーラ嬢も一緒に連れて来られるよう、私も努力いたします」
私はその言葉を聞いて涙が溢れてきた。
――ジェラールから助けてくれたこの人は、私が凍死する運命を回避してくれたわ。母と姉が安心できるような温かい言葉を言ってくれている。私は感謝しなければ……
「ありがとうございます」
私は隣に一緒になってひざまずいているリシェール伯に感謝の言葉を心から告げた。彼はチラッと私の涙の溢れた顔を見て、一瞬戸惑った表情をして頬を赤らめた。
彼は吸い込まれそうなほどの透き通った碧い瞳をもち、どこか影を感じさせる際立つ美貌の持ち主だった。長身で長い髪を後ろに束ねていて、堂々とした佇まいだった。まるで王者のような風格を備えていながら、まだ若く初々しさもあり、美しい豹のような機敏さも持ち合わせていた。
「まあ!ありがとうございます。さあ、二人とも立ってください」
私とリシェール伯は母に手を差し伸べられて、一緒に立ち上がった。
「二人並ぶとあなたたちはお似合いに見えるわ」
母の横で姉が涙声でささやいた。姉も微笑んでいる。
「ええ、ほんとね」
母は声を震わせていて肩をひくつかせていたが、すっと深呼吸をするとにっこりと笑って私たちを見つめた。
「さあさ、今日はお祝いの食事を用意せねばですね。あなたはもう、私の息子も同然ですわ。騎士の皆さんも今日は我が家に泊まっていくしかありませんわよ。どのみち雪で帰れませんわ。お祝いのご馳走を精一杯用意させていただきますわ」
母は張り切った様子でリシェール伯の肩を抱き、4名の騎士の顔を見回して微笑んだ。
こうしてエヴルー家は大雪の中、お祝いの食事と5名の客人の宿泊準備で大忙しとなったのだった。
陛下のくれた褒賞金で食糧庫をいっぱいにしていたことが早速役立った。昔から勤めてくれていた料理人と侍女を呼び戻していて本当に良かった。料理人と侍女も私の結婚話に涙を流して喜んでくれて、張り切って料理の腕を振るってくれた。
私の死の代わりに、エヴルー家には幸せな笑いが溢れた夜だった。
私が死神に会うのはあと3回だ。この時代に大陸を横断する旅は命懸けであった。まだよく知らぬリシェール伯に従って、私が大陸を横断する旅に出るのは三日後のことだった。
死の運命を変えた日、私は未来の夫であり、大陸の果ての辺境伯の姿をした大国ジークベインリードハルトの未来の皇帝に出会ったのだ。
この時の未来の皇帝は自分の運命など知らず、実直でかっこいい辺境伯のラファエルそのものだった。
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