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真相は

イザベルに話を聞こう カイル王子Side

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 さて、誰が俺にそんなことを仕掛けて、クラリッサを身代わりにして殺したのか、だ。犯人は3年後に俺を処刑するやつと同一人物ではないか。

 それとも別人なのだろうか。


 いずれにしても俺は許すつもりは毛頭なかった。徹底的に追い詰めて、葬り去ってやる。俺は復讐心に燃えた。


 目の前のエミリーは、俺が作ったミルクレープを食べて幸せそうに微笑んでいた。エミリーの存在には本当に癒された。

 エミリーという恋人がいない状態で、クラリッサの真実をカーダイアに聞かされていたら、俺は正気でいられたか自信がない。


 もう一度抱いたら、そう思うだけで、赤面してしまう……

 彼女の胸の先を刺激して……いや、いったい俺は何を考えているんだ!

 心臓がドキドキしてきて、エミリーを見てもエミリーの一糸纏わぬ姿しか見えない……。


 38歳まで我慢してきたからか、一度愛する人が出来たら今までの反動で抱きしめたくてたまらなくなるんだろうか……。


 そんな、まずいぞ……!?

 
「くくっ」


 横で吹き出す声がして、カーダイアがミルクレープを食べながら、声も出さずに笑いを噛み殺していた。


「あっ、カーダイアさん、どうされました?」


 エミリーがびっくりしたような顔でガーダイアに聞いた。


「いや、なんでもない。俺はこのあと帰ります。エミリーさん、あなたに会えて嬉しかったです。ゆっくりして行ってくださいね」


 カーダイアはそうエミリーに爽やかに言うと、俺を意味ありげな笑みを浮かべてチラッと見た。

 
 その顔やめろーっ!
 わかったような顔をしないで!

 
 俺は分かっなような表情で、おれの心を弄ぶような態度で言うカーダイアにイライラした。


「ガーダイア?一つ仕事がある」

 俺は突然仕事モードに切り替えて、ガーダイアに言った。


 エミリーと、その……恋人同士のいちゃつきを楽しみたいが、まずはガーダイアを帰してからだっ!



「当時パース子爵邸に出入りしていた交友関係を洗おう」
「分かった」


 カーダイアはがミルクレープを口いっぱいに頬張りながら、うなずいた。

 彼の綺麗な瞳は、今は俺がエミリーのために作った甘いミルクレープに夢中だ。


「それからエミリー、君にもお願いがある。最近ジーン令嬢に鳩屋郵便局にもたらされたパース子爵関連の郵便物がないか聞いてもらえないだろうか。俺からの依頼だと言って構わない」
「分かったわ、カイル」

 
 エミリーは俺に微笑んだ。


「俺はイザベルに会う」


 そう言った瞬間、エミリーの顔が引き攣ったのを俺は見逃さなかった。


「その……恋人としては、イザベルにカイルが2人っきりで会うのは嫉妬します。でも、聞かないことには始まりませんね。その……あの……私も一緒にこっそり聞くのは構いませんでしょうか。隠れて一緒に聞きたいのです」


 エミリーの顔は真っ赤だった。
 俺は彼女の提案に驚いた。


 なぜ?
 そこまで?


 イザベルに嫉妬してくれているのだとしたら、少し嬉しい。


 心配しなくても、俺はエミリーだけにぞっこんなんだが。


 ふと、横でガーダイアが目配せを俺にしているのに気づいた。


 何?
 あ、直接言えって……!?


「エミリー、心配しなくても俺は君だけにぞっこんだ。イザベルのことはなんとも思っていない」


 カーダイアが横でそうそうと言った様子で口角を上げて微笑むのと、エミリーが真っ赤になってグリーンの瞳をキラっと潤ませるのは同時だった。


「あぁ、カイル……」


 うわっー!
 抱きしめたい……!
 なんて可愛いいんだ……。


 
「エミリー、君がこの事件に巻き込まれるのは避けたいんだ。もう二度と愛しい人を失いたくないんだよ。エミリー、君は俺にとっては最高に大切な存在なの」


 カーダイアの前で恥ずかしげもなく俺は愛を囁いた。


「イザベルは俺の敵と繋がっているのは間違いないんだ。この前、敵に罠にはめられて魔物に襲われたところを、イザベルに助けてもらったんだ。10年前の事件に気づいたのも、当時9歳の彼女だけだし」


 俺の言葉に赤くなったり青くなったりしたエミリーは、両手を握りしめた。



 イザベル・トスチャーナ。当時9歳の彼女が暗殺事件に関わっているとは思えない。だが、イザベルは真実を話している可能性がある。

 少なくとも、俺はイザベルの話を聞く必要がある。


 彼女が前回助けてくれたのは罠だとしても、10年前の暗殺未遂事件について、イザベルは真実を話していると思う。


 イザベルが事件が起きることを予測したのは、パース子爵邸の地下室に出入りしていた男が口にしたことがきっかけだ。その事を詳しく聞く必要がある。パース子爵の身辺を洗い直す必要もある。

 
 当時、イザベルは9歳、俺の従者のルーニーは12歳、カーダイアは22歳、俺は28歳だ。


 成人していたカーダイアは、当時俺の仕事はしていなかった。


 あの結婚披露宴に出席していた人たちを全てあたるべきだろうか。


 いや?やはり、イザベルに話を聞くのが先だ。


 そもそもイザベルはメイドのエミリーにに負けるつもりはないと、俺への恋心を露わにしていた。あれは本気だろうか。

 
 エミリーが俺の恋人になったと知ったら、イザベルは逆上しそうだ……。


 まずいかもしれない。


「私はどうしても、カイルがイザベル嬢と会う現場にいたいのです」


 エミリーはきっぱりと俺に言った。

 
「愛されているね、カイル」


 横で立ち上がったガーダイアが俺の耳元で囁いた。


「分かった。俺も協力しよう。エミリーさんと俺が一緒に隠れている場所で、カイル王子はイザベルに会って話を聞こう。彼女がカイル王子を襲おうとしたら、俺が飛び出して行ってイザベルを止める。こうしよう」


 カーダイアは俺の肩を叩いてダイニング・ルームを出て行った。


「じゃあ、俺は帰るから、お2人はごゆっくり」

 
 カーダイアは振り返って意味ありげに俺を見つめると、帰って行った。


 その顔やめろーっ!

 
 俺は分かったようなガーダイアの目つきにイラッと来たが、目の前でほんのり顔を赤らめて俺を見つめるエミリーに気づいて、心臓がどきりとした。


 か、可愛いぃ……。


 まずい。
 エミリーを抱きたくてたまらない。


「イザベルはあなたの事が好きなのですよ」


 やっぱり嫉妬しているんだ。
 

「私はメイドで、あの方は子爵令嬢で貴族です。クラリッサさんは貴族でないからと婚約を反対されたんですよね。イザベル嬢はあなたの条件にどこからどう見ても適合します……」

 
 俺はテーブルを回ってエミリーに駆け寄り、抱きしめた。


 障害が大きい程、恋は燃え上がると言うが、俺は関係なくエミリーが好きだ。


 俺とエミリーは口づけをかわして、俺はそのままエミリーの手を黙って握り、廊下を通り抜けて寝室まで連れて行った。


 従者のルーニーと途中で目が合い、カーダイアそっくりの意味ありげな視線を俺に送ってきた。


 その顔やめろと思ったが、俺はただただ顔を赤らめて愛するエミリーと寝室にこもりたかった。


 愛しているんだ。
 初めてできた恋人なんだ。
 38歳でようやく愛する人と相思相愛になれたんだ。


 王子の職分は世継ぎを残すことも含まれるだろう……?

 あぁ、エミリーとはすぐに結婚しよう。
 未来を変えよう……。
 
 まずは今、エミリーを抱きしめたい。


 俺は頭の中ですぐに結婚しようと決めていた。


 
 
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