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真相は
間際の伝言 クラリッサSide
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全てがふわふわと現実味のない夢の様だった。
失恋してずっと忘れられなかった人が自分のことを好きだったと告白してくれた。
そんな事があるの?
さらに、付き合って欲しいと言われたら…。
幸せ過ぎた。
私の初恋は不発だった。
初恋を引きずっていて、心にずっと引っかかっている。
ハット子爵と恋に落ちて結婚して素晴らしい娘を授かったのに、初恋の失恋は私の心に消えようがない傷を作っていた。
そもそも初恋が破れた時は引きこもりになった。一時的にとは言え、世の中を捨ててしまいたくなった。
その暗黒を見た気持ちからすれば、初恋のやり直しは、やり直せるものであればやり直したいものだった。
たとえ、イザベルと王子が結婚する姿を目の当たりにさせられるとしてもだ。
クラリッサのプラトニックで終わった失恋を、もう一度やり直したかった。
「付き合ってもらえないだろうか」と思わぬ言葉を言われる前は、二度と傷つかないようにしたいと思っていた。
しかし、「付き合ってもらえないだろうか」と言われたら、その言葉一つで考えが変わってしまった。
あの失恋した初恋の人に、告白されて、付き合って欲しいと言われる。
そんな奇跡はこの世にないのだから。
今度の恋は、死んでしまったらできないことなのだから、全てを分かち合いたいと思った。プラトニックな恋にはしないと決めた。
きゃー!
恥ずかしい。
でも、ダメかしら?
不品行な母親を持っていたり、貧しい令嬢だと、資産のある若い男性からプレゼントを頻繁にされて気を引いて、弄ばれるのがオチだ。
私は貧しいメイドだ。資産のある王子から気のあるフリをされて、弄ばれるのだろうか?
そんな事はない気がした。
カイル王子はそんな人には見えない。
私を弄ぼうとは考えていないと思う。
ピアノを弾いているカイル王子は、若い18歳のカイル王子が弾いている姿を思い出させた。私は感慨深いものを感じて、自然に口づけに応じていた。
夢のようだわ。
本当に現実のことかしら?
ふわふわした心地の私は、明後日の午後もカイル王子とお会いする約束までした。そして、馬車でハット子爵邸まで送ってもらった。
秋の午後の陽光が煌めき、街路樹が黄色や赤色に染まる中、王子の笑顔は私に向けられて、私は天にも昇るような心地だった。
店に戻ると、同僚の若いメイドのジュディスが早速質問攻めにしてきた。
彼女は素晴らしいスピードで布をハサミで裁断しながら、私に質問をしてきた。
「エミリー、瞳が輝いているわ。何があったの?」
ジュディス、聞いて欲しい……!
ただ、私はどこまで言って良いのか分からないので、頬を赤らめて下を向いただけだった。
「王子の衣装全般のデザイナーになって欲しいと言われました。本日国王陛下にもお会いしてデザイナーになることをお許しいただきました」
その言葉を聞くなり、ジュディスはハサミを置いた。そして、次の瞬間はジーンも一緒に私を抱きしめようと駆け寄ってきた。マーシーに至っては、口をあんぐり開けて驚いていた。
「おめでとうっ!」
「ついに、エミリーの夢は叶うのねっ!?」
「はい。これからが大変ですけれど」
17歳で失恋した相手に初恋の告白をされたの。
そして、付き合って欲しいと言われたの。
私が心の中で思っていたことは、皆には言えなかった。
午後は鳩屋郵便局も大忙しだった。私は鳩のお世話をさせてもらった。
代筆屋を営むオークスドン子爵がジーンに手紙を預けて、2人が楽しそうに会話しているのを聞くのは至福の時間だった。
亡くなったクラリッサが見れなかったはずの、成長した娘と彼女の夫の仲睦まじい姿だ。
鳩たちのお世話で鳩小屋に入ると、意識を鳩たちに向けた。
「あんた、クラリッサかい?」
私は餌箱を掃除しながら、そう聞かれて思わず条件反射で答えてしまった。
「そうよ」
答えた後にハッとして、辺りを見渡した。鳩小屋には鳩しかいなかった。ただ、鳩たちが一斉に私を見ていた。私は真剣に鳩たちを見つめながら、聞いた。
「だ……だれ?私に今話しかけたのは誰かしら?」
「おいらだよ」
年老いた1羽の鳩が私の前の枝にぴょんと飛んできて、私に話しかけた。お腹と尻尾が白くて胴体がグレーの普通の鳩だ。
「クラリッサをご存知なの?」
「あったりめーさ」
鳩の平均寿命は10年だ。人に飼われている場合はもっと長かったりする。
「カイル王子には会えたんだな?一昨日も店に来ていたようだし、今朝もお前さんを迎えに来た」
私は年老いた鳩が話すのを驚愕した思いで聞いていた。手が震えた。
なぜ分かるの?
あなたは全て分かるの?
「ハット子爵様の奥様と娘のジーンだけ、おいらたちと話せる。それなのに、今までおいらたちと話せなかったメイドのエミリーが急に奥様と同じ力を持った。そんなことはあり得ないんだ。だから、あんたは死んだはずのクラリッサだと思った」
首を傾げて私を見つめる鳩に、私はタジタジとなった。
「そ……そうなんですけど、なぜか急に目が覚めたらメイドのエミリーだったのよ。このことは誰一人知らないわ」
鳩は黙り込んだ。
ずいぶん無言の時間が流れたと思った。私は鳩が話すのをやめたのかと思って、餌箱の掃除の続きを始めた。
時間内に終わらせなければ、ジーンがやってきて、この会話を聞かれてしまうわ!
「クラリッサから、伝言がある」
私はハッとして手を止めて年老いた鳩を振り返った。
「自分の死はカイル王子暗殺未遂事件に関係している。気をつけなさい。犯人は分からないが、また同じ事が起きるかもしれない」
衝撃の話に私は心臓が止まりそうなほど驚いた。
何ですって!?
10年前に亡くなったのは事件によるものだった?
カイル王子暗殺未遂事件?
「なぜ、あなたがそれを……ご存知なのかしら?他にその事を知っている人は誰?」
年老いた鳩は、しわがれた声で答えた。
「他の人間はおそらく誰も知らない。当時、ハット子爵邸を住処にしていた鳩たちの中でも一部の仲間が知っていたが、鳩はこんな話は誰にもしておらん。おいらが当時の事情を知る鳩の最後の生き残りだと思う」
私は自分が10年前に自分が死んだ理由は、カイル王子に絡んでいた事を初めて知って、震え上がった。
他の人は誰も知らないってどういうことだろう?
「クラリッサはカイル王子を守って亡くなった。必死に屋敷まで戻ってきたが、庭を歩いて屋敷に入るまでの間に倒れた。突然の心臓麻痺が原因だと医者を始めとする周囲には思われた」
鳩が話す声が遠くから聞こえる。
耳の奥からごわーっとした音が聞こえ始めた。
急激なストレスだ。
倒れちゃダメだ。
私は最後まで聞かなければ。
これは、自分からの必死のダイニングメッセージだ。
「おいらは庭で倒れたクラリッサが息を引き取る最後の瞬間に立ちあって、芝に横たわるクラリッサから伝言された。娘にも秘密にしてくれと言われたから、おいらたちはずっと秘密にしていた」
私は胸を押さえて、涙が溢れるのにまかせた。
「ある時、自分と同じ力がある人物が現れたら、自分かもしれないから、伝言してくれと言われた。カイル王子は、毒殺を仕掛けられたことすら知らないはずだと」
私の頬から涙が現れた。
私ったら、やっぱりカイル王子の事が大好きなままだったんじゃない。
なんてバカなことを……!
私は自分のカラダには知識がない。動物には分かる事が、人間には分からないのだ。人間が分かる動物に出会えたら、知識を得られるかもしれないが。
「あなた。人間のカラダに詳しい動物を知らないかしら?」
私は年老いた鳩に聞いた。
覚悟を決めた。
伝言をしっかり受け止めたわ。
私の死を無駄にはしないわ。
事前に教えてくれてありがとう。
「ちょっとその辺りを聞き回ってみるよ。おい、みんな話は聞いていただろ?ジーンにも他の皆にも内緒だぜ。大切なジーンや旦那様を巻き込んではならないと言われたんだ。おいらたちはエミリーに協力しようぜ。亡くなった奥様なんだから、この方は」
私は死ぬ前もカイル王子が大好きだったのだ。誰にもカイル王子にも知られずに、自分がフラれてしまった大好きな人を守って死んでしまっていた。
クラリッサ、あなたカイル王子に愛されていたのよ。
私は涙を急いでぬぐい、餌箱の仕事を手早く丁寧に終わらせた。鳩小屋を出る瞬間、振り返って年老いた鳩に私は聞いた。
「ありがとう、あなた、名前は何かしら?」
「ピープスってクラリッサは呼んでいた」
私はクスッと笑ってしまった。
寄宿舎学校時代に唯一の話し相手になってくれた寄宿学校の庭師の息子の名前だ。退学が決まった時、泣いてくれた唯一の人だ。
「ピープス、ありがとう。あなたがいてくれて幸せだわ。生きていてくれてありがとう」
私はお世話用のスモッグのエプロンを取り、笑顔で仕立て屋に戻った。
さあ、色々忙しくなる。
私は自分が、リベンジを仕掛けているのだと悟った。
失恋してずっと忘れられなかった人が自分のことを好きだったと告白してくれた。
そんな事があるの?
さらに、付き合って欲しいと言われたら…。
幸せ過ぎた。
私の初恋は不発だった。
初恋を引きずっていて、心にずっと引っかかっている。
ハット子爵と恋に落ちて結婚して素晴らしい娘を授かったのに、初恋の失恋は私の心に消えようがない傷を作っていた。
そもそも初恋が破れた時は引きこもりになった。一時的にとは言え、世の中を捨ててしまいたくなった。
その暗黒を見た気持ちからすれば、初恋のやり直しは、やり直せるものであればやり直したいものだった。
たとえ、イザベルと王子が結婚する姿を目の当たりにさせられるとしてもだ。
クラリッサのプラトニックで終わった失恋を、もう一度やり直したかった。
「付き合ってもらえないだろうか」と思わぬ言葉を言われる前は、二度と傷つかないようにしたいと思っていた。
しかし、「付き合ってもらえないだろうか」と言われたら、その言葉一つで考えが変わってしまった。
あの失恋した初恋の人に、告白されて、付き合って欲しいと言われる。
そんな奇跡はこの世にないのだから。
今度の恋は、死んでしまったらできないことなのだから、全てを分かち合いたいと思った。プラトニックな恋にはしないと決めた。
きゃー!
恥ずかしい。
でも、ダメかしら?
不品行な母親を持っていたり、貧しい令嬢だと、資産のある若い男性からプレゼントを頻繁にされて気を引いて、弄ばれるのがオチだ。
私は貧しいメイドだ。資産のある王子から気のあるフリをされて、弄ばれるのだろうか?
そんな事はない気がした。
カイル王子はそんな人には見えない。
私を弄ぼうとは考えていないと思う。
ピアノを弾いているカイル王子は、若い18歳のカイル王子が弾いている姿を思い出させた。私は感慨深いものを感じて、自然に口づけに応じていた。
夢のようだわ。
本当に現実のことかしら?
ふわふわした心地の私は、明後日の午後もカイル王子とお会いする約束までした。そして、馬車でハット子爵邸まで送ってもらった。
秋の午後の陽光が煌めき、街路樹が黄色や赤色に染まる中、王子の笑顔は私に向けられて、私は天にも昇るような心地だった。
店に戻ると、同僚の若いメイドのジュディスが早速質問攻めにしてきた。
彼女は素晴らしいスピードで布をハサミで裁断しながら、私に質問をしてきた。
「エミリー、瞳が輝いているわ。何があったの?」
ジュディス、聞いて欲しい……!
ただ、私はどこまで言って良いのか分からないので、頬を赤らめて下を向いただけだった。
「王子の衣装全般のデザイナーになって欲しいと言われました。本日国王陛下にもお会いしてデザイナーになることをお許しいただきました」
その言葉を聞くなり、ジュディスはハサミを置いた。そして、次の瞬間はジーンも一緒に私を抱きしめようと駆け寄ってきた。マーシーに至っては、口をあんぐり開けて驚いていた。
「おめでとうっ!」
「ついに、エミリーの夢は叶うのねっ!?」
「はい。これからが大変ですけれど」
17歳で失恋した相手に初恋の告白をされたの。
そして、付き合って欲しいと言われたの。
私が心の中で思っていたことは、皆には言えなかった。
午後は鳩屋郵便局も大忙しだった。私は鳩のお世話をさせてもらった。
代筆屋を営むオークスドン子爵がジーンに手紙を預けて、2人が楽しそうに会話しているのを聞くのは至福の時間だった。
亡くなったクラリッサが見れなかったはずの、成長した娘と彼女の夫の仲睦まじい姿だ。
鳩たちのお世話で鳩小屋に入ると、意識を鳩たちに向けた。
「あんた、クラリッサかい?」
私は餌箱を掃除しながら、そう聞かれて思わず条件反射で答えてしまった。
「そうよ」
答えた後にハッとして、辺りを見渡した。鳩小屋には鳩しかいなかった。ただ、鳩たちが一斉に私を見ていた。私は真剣に鳩たちを見つめながら、聞いた。
「だ……だれ?私に今話しかけたのは誰かしら?」
「おいらだよ」
年老いた1羽の鳩が私の前の枝にぴょんと飛んできて、私に話しかけた。お腹と尻尾が白くて胴体がグレーの普通の鳩だ。
「クラリッサをご存知なの?」
「あったりめーさ」
鳩の平均寿命は10年だ。人に飼われている場合はもっと長かったりする。
「カイル王子には会えたんだな?一昨日も店に来ていたようだし、今朝もお前さんを迎えに来た」
私は年老いた鳩が話すのを驚愕した思いで聞いていた。手が震えた。
なぜ分かるの?
あなたは全て分かるの?
「ハット子爵様の奥様と娘のジーンだけ、おいらたちと話せる。それなのに、今までおいらたちと話せなかったメイドのエミリーが急に奥様と同じ力を持った。そんなことはあり得ないんだ。だから、あんたは死んだはずのクラリッサだと思った」
首を傾げて私を見つめる鳩に、私はタジタジとなった。
「そ……そうなんですけど、なぜか急に目が覚めたらメイドのエミリーだったのよ。このことは誰一人知らないわ」
鳩は黙り込んだ。
ずいぶん無言の時間が流れたと思った。私は鳩が話すのをやめたのかと思って、餌箱の掃除の続きを始めた。
時間内に終わらせなければ、ジーンがやってきて、この会話を聞かれてしまうわ!
「クラリッサから、伝言がある」
私はハッとして手を止めて年老いた鳩を振り返った。
「自分の死はカイル王子暗殺未遂事件に関係している。気をつけなさい。犯人は分からないが、また同じ事が起きるかもしれない」
衝撃の話に私は心臓が止まりそうなほど驚いた。
何ですって!?
10年前に亡くなったのは事件によるものだった?
カイル王子暗殺未遂事件?
「なぜ、あなたがそれを……ご存知なのかしら?他にその事を知っている人は誰?」
年老いた鳩は、しわがれた声で答えた。
「他の人間はおそらく誰も知らない。当時、ハット子爵邸を住処にしていた鳩たちの中でも一部の仲間が知っていたが、鳩はこんな話は誰にもしておらん。おいらが当時の事情を知る鳩の最後の生き残りだと思う」
私は自分が10年前に自分が死んだ理由は、カイル王子に絡んでいた事を初めて知って、震え上がった。
他の人は誰も知らないってどういうことだろう?
「クラリッサはカイル王子を守って亡くなった。必死に屋敷まで戻ってきたが、庭を歩いて屋敷に入るまでの間に倒れた。突然の心臓麻痺が原因だと医者を始めとする周囲には思われた」
鳩が話す声が遠くから聞こえる。
耳の奥からごわーっとした音が聞こえ始めた。
急激なストレスだ。
倒れちゃダメだ。
私は最後まで聞かなければ。
これは、自分からの必死のダイニングメッセージだ。
「おいらは庭で倒れたクラリッサが息を引き取る最後の瞬間に立ちあって、芝に横たわるクラリッサから伝言された。娘にも秘密にしてくれと言われたから、おいらたちはずっと秘密にしていた」
私は胸を押さえて、涙が溢れるのにまかせた。
「ある時、自分と同じ力がある人物が現れたら、自分かもしれないから、伝言してくれと言われた。カイル王子は、毒殺を仕掛けられたことすら知らないはずだと」
私の頬から涙が現れた。
私ったら、やっぱりカイル王子の事が大好きなままだったんじゃない。
なんてバカなことを……!
私は自分のカラダには知識がない。動物には分かる事が、人間には分からないのだ。人間が分かる動物に出会えたら、知識を得られるかもしれないが。
「あなた。人間のカラダに詳しい動物を知らないかしら?」
私は年老いた鳩に聞いた。
覚悟を決めた。
伝言をしっかり受け止めたわ。
私の死を無駄にはしないわ。
事前に教えてくれてありがとう。
「ちょっとその辺りを聞き回ってみるよ。おい、みんな話は聞いていただろ?ジーンにも他の皆にも内緒だぜ。大切なジーンや旦那様を巻き込んではならないと言われたんだ。おいらたちはエミリーに協力しようぜ。亡くなった奥様なんだから、この方は」
私は死ぬ前もカイル王子が大好きだったのだ。誰にもカイル王子にも知られずに、自分がフラれてしまった大好きな人を守って死んでしまっていた。
クラリッサ、あなたカイル王子に愛されていたのよ。
私は涙を急いでぬぐい、餌箱の仕事を手早く丁寧に終わらせた。鳩小屋を出る瞬間、振り返って年老いた鳩に私は聞いた。
「ありがとう、あなた、名前は何かしら?」
「ピープスってクラリッサは呼んでいた」
私はクスッと笑ってしまった。
寄宿舎学校時代に唯一の話し相手になってくれた寄宿学校の庭師の息子の名前だ。退学が決まった時、泣いてくれた唯一の人だ。
「ピープス、ありがとう。あなたがいてくれて幸せだわ。生きていてくれてありがとう」
私はお世話用のスモッグのエプロンを取り、笑顔で仕立て屋に戻った。
さあ、色々忙しくなる。
私は自分が、リベンジを仕掛けているのだと悟った。
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