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その後
最高のイルージョン(颯介)
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10万人の大観衆が歓声をあげ、腕を振って喜んでいる。
俺はプテラノドンを召喚した。
大観衆に翼竜が現れて、上空をゆっくり旋回した。 歓喜の歓声が、とてつもない悲鳴に変わった。
しかし、俺が素早く腕を突き上げ、俺のすぐそばに着地したプテラノドンに俺が軽々と乗ると、ようやくパフォーマンスだと理解した大観衆は熱狂した。
ドラムの音とギターの音が激しく俺の動きに合わせてかき鳴らされ、大空高く俺がプテラノドンで旋回すると、地鳴りが起きたようなすごい歓声が湧き上がった。もう、俺はロック歌手になった気分で感無量だった。
が、俺は気づいた。
あれ、いつものプテラノドンじゃない? こいつは、いつもの俺のプテラだっけ? 本当に?
「いつものプテラ?」俺は翼竜に聞いた。
すると、心なしかプテラノドンがビクッと身震いしたような気がした。 ステージに降り立ったプテラノドンと俺はお互いに真正面から顔を突き合わせた。 絶対に、いつものプテラノドンじゃない気がする・・・
俺は聞いた。「お前は、誰だ?」
スルッとプテラノドンが、一人の人間の形に変わった。 大観衆はマジックショーだと思って、ますます熱狂した。
それは、すんごい煌びやかなスタイリッシュな衣装を着た若者だった。超絶美形だ。帝!!!
となると、俺のプテラノドンの沙織さんはどこだ?
俺は辺りを見渡して、沙織さんを見つけた。沙織さんはステージの隅っこに立って手を振っていた。沙織さんまでスタイリッシュな忍び服を着ていた。結婚したからペアルックを着ているとかかもしれない。
大観衆は熱狂的に誰だかわからない若者を歓迎していた。 この若者は一体誰だ? 大観衆の期待が高まるなか、帝は手を振ってくるくる回転してみせた。 信じがたい翼竜からのイルージョンを見せてもらっていると思い込んでいる大観衆は、手をあげて歓声をあげている。
帝は、10万人の大観衆が見守るステージ上で背中から光輝く光を出して、絶叫した。
マイクも使っていないのに、10万人の大観衆に聞こえるシャウトだった。そうか、『雷声道の術』を使っているのか。
大観衆はますます熱狂して歓声を上げた。 「私、歌、いけます!」 帝はそう言った。 そして、なんとそこにあったマイクスタンドからマイクを取り上げ、勝手に何か歌のようなものをシャウトし始めた。
俺は、よくわからないが、もうなるようになれという気持ちで、ロック歌手のように体をのけぞらせて右手から炎の光線を花火のように打ち上げた。
帝のよく何語かわからない言葉の不思議なシャウトと俺の花火光線で、大観衆のボルテージは最高潮に達した。
その時だ。
「待たせたな!」
ロンドサ・ザッキースが満を時してステージ上幕下から飛び上がって登場した。
ぎゃあ!というような大歓声がさらに起こり、俺は耳が潰れそうだと思った。 しかし、俺は心底ほっとしていた。どうやらステージをつなげというナディア姉さんからの司令は果たせたようだ。 ロンドサ・ザッキースが合図をして、ドラムが始まり、曲の演奏が激しく始まった。すぐにロンドサ・ザッキースは世界的なヒット曲で華麗に歌を披露し始めた。
俺は帝を引きずるようにバックステージに連れて行った。もう、役目は果たせたので退場してもいい。 しかし、帝は俺のことを振り切った。
「最後にバク転だけ。」
帝はそう言い、ステージ上にもう一度飛び出して、華麗なスピードでバク転を繰り返した。仕方ないので、龍者の実効果のある俺もやってやった。まあ、人間技とは思えないバク転の連続なので、大観衆から歓声をまたもらえたのだった。
そこになぜか沙織さんも参戦した。宙に弧を描くような宙返りを帝と二人で披露して、喝采を浴びていた。
バックステージに三人でひっこむと、俺は礼を言った。
「帝と沙織さん、とても助かりました。」「いえいえ。久しぶりで、私たちも興奮しましたよ。楽しかったです。」 沙織さんも帝も満面の笑みだった。
「颯介、ありがとう!」 いきなりナディア姉さんに抱きつかれた。
「ああ!もう、びっくりしたよ。いきなりなんだから。」 俺はナディア姉さんにそう言った。「ごめん、ごめん。ちょっと失敗しちゃって、ロンドサ・ザッキースが中世ヨーロッパについてきちゃったのよ。」
「帝も沙織さんも、本当にありがとう!」 ナディア姉さんはそう言って、二人にも抱きついていた。
「今度、何が起きたのか話ゆっくり聞かせて。」
俺はそういうと、ミランを探した。「もう日本に戻りたいんだけど、ミランはどこ?」 ナディア姉さんにそう聞いた。日本の自分の家に戻って、もう寝たい。何せ俺は徹夜あけにロック歌手の繋ぎをやってのけたのだ。気が緩んだら、眠くて眠くて仕方がなくなったのだ。
ミランは見当たらなかった。 仕方あるまい。 俺は、バックステージを見回した。そして、誰のかわからないが、ゴージャスなクーラーボックスを見つけて、中を勝手に開けた。中には、冷たく冷えた水や炭酸水などが入っていた。そして、ビールを見つけた。
「ナディア姉さん、話は今度ね。」 俺はそう言うと、ビールを片手に解放の呪文を唱えた。
そして辺りが暗転するのに安堵した。目を開けると、保険会社のエレベーターの前だった。
ほっとして、ビールをカバンにしまう前に一気に飲み干した。 朝早いのであたりに誰もいない。いいのだ、今日は俺はオフだ。だって徹夜明けなのだから。
帰ってこのままゆっくり寝るのだ。
帝と沙織さんも幸せそうで何よりだ。忍び服のペアルックには驚いたけれども。
「帝と沙織は元気だった?」 誰もいないと思ったのに、ビルの前でいきなり田中さんが現れて俺に笑いかけた。 一瞬、田中さんにそう言われたような気がして、俺は絶句した。聞き間違いかもしれない。
ハッとしてもう一度田中さんの顔を見たら、なんでもなさそうな顔で朝日に向かって歩き始めていた。そうか、やっぱり聞き間違いか。田中さんが帝と沙織さんのことを知っているはずがないか。
「うーん、帰ろっかな~。そろそろ。」 田中さんはそう言うと、俺の方を振り向いた。
「はい。俺は家に帰ろうと思います。」「うん、だね!」
「二十一世も最高だけど、忍びの帝国も最高だわ。牡丹にそろそろ会いたいし、じゃあまたね。」 田中さんはそれだけ言うと、姿を消した。
うーん、俺は徹夜明けで10万人の大観衆を相手に離れ業を繰り広げたので、疲れ切ってだいぶ寝ぼけているようだ。
帰って寝よう。それにしてもロンドサ・ザッキースの歌は最高だったな。
俺はプテラノドンを召喚した。
大観衆に翼竜が現れて、上空をゆっくり旋回した。 歓喜の歓声が、とてつもない悲鳴に変わった。
しかし、俺が素早く腕を突き上げ、俺のすぐそばに着地したプテラノドンに俺が軽々と乗ると、ようやくパフォーマンスだと理解した大観衆は熱狂した。
ドラムの音とギターの音が激しく俺の動きに合わせてかき鳴らされ、大空高く俺がプテラノドンで旋回すると、地鳴りが起きたようなすごい歓声が湧き上がった。もう、俺はロック歌手になった気分で感無量だった。
が、俺は気づいた。
あれ、いつものプテラノドンじゃない? こいつは、いつもの俺のプテラだっけ? 本当に?
「いつものプテラ?」俺は翼竜に聞いた。
すると、心なしかプテラノドンがビクッと身震いしたような気がした。 ステージに降り立ったプテラノドンと俺はお互いに真正面から顔を突き合わせた。 絶対に、いつものプテラノドンじゃない気がする・・・
俺は聞いた。「お前は、誰だ?」
スルッとプテラノドンが、一人の人間の形に変わった。 大観衆はマジックショーだと思って、ますます熱狂した。
それは、すんごい煌びやかなスタイリッシュな衣装を着た若者だった。超絶美形だ。帝!!!
となると、俺のプテラノドンの沙織さんはどこだ?
俺は辺りを見渡して、沙織さんを見つけた。沙織さんはステージの隅っこに立って手を振っていた。沙織さんまでスタイリッシュな忍び服を着ていた。結婚したからペアルックを着ているとかかもしれない。
大観衆は熱狂的に誰だかわからない若者を歓迎していた。 この若者は一体誰だ? 大観衆の期待が高まるなか、帝は手を振ってくるくる回転してみせた。 信じがたい翼竜からのイルージョンを見せてもらっていると思い込んでいる大観衆は、手をあげて歓声をあげている。
帝は、10万人の大観衆が見守るステージ上で背中から光輝く光を出して、絶叫した。
マイクも使っていないのに、10万人の大観衆に聞こえるシャウトだった。そうか、『雷声道の術』を使っているのか。
大観衆はますます熱狂して歓声を上げた。 「私、歌、いけます!」 帝はそう言った。 そして、なんとそこにあったマイクスタンドからマイクを取り上げ、勝手に何か歌のようなものをシャウトし始めた。
俺は、よくわからないが、もうなるようになれという気持ちで、ロック歌手のように体をのけぞらせて右手から炎の光線を花火のように打ち上げた。
帝のよく何語かわからない言葉の不思議なシャウトと俺の花火光線で、大観衆のボルテージは最高潮に達した。
その時だ。
「待たせたな!」
ロンドサ・ザッキースが満を時してステージ上幕下から飛び上がって登場した。
ぎゃあ!というような大歓声がさらに起こり、俺は耳が潰れそうだと思った。 しかし、俺は心底ほっとしていた。どうやらステージをつなげというナディア姉さんからの司令は果たせたようだ。 ロンドサ・ザッキースが合図をして、ドラムが始まり、曲の演奏が激しく始まった。すぐにロンドサ・ザッキースは世界的なヒット曲で華麗に歌を披露し始めた。
俺は帝を引きずるようにバックステージに連れて行った。もう、役目は果たせたので退場してもいい。 しかし、帝は俺のことを振り切った。
「最後にバク転だけ。」
帝はそう言い、ステージ上にもう一度飛び出して、華麗なスピードでバク転を繰り返した。仕方ないので、龍者の実効果のある俺もやってやった。まあ、人間技とは思えないバク転の連続なので、大観衆から歓声をまたもらえたのだった。
そこになぜか沙織さんも参戦した。宙に弧を描くような宙返りを帝と二人で披露して、喝采を浴びていた。
バックステージに三人でひっこむと、俺は礼を言った。
「帝と沙織さん、とても助かりました。」「いえいえ。久しぶりで、私たちも興奮しましたよ。楽しかったです。」 沙織さんも帝も満面の笑みだった。
「颯介、ありがとう!」 いきなりナディア姉さんに抱きつかれた。
「ああ!もう、びっくりしたよ。いきなりなんだから。」 俺はナディア姉さんにそう言った。「ごめん、ごめん。ちょっと失敗しちゃって、ロンドサ・ザッキースが中世ヨーロッパについてきちゃったのよ。」
「帝も沙織さんも、本当にありがとう!」 ナディア姉さんはそう言って、二人にも抱きついていた。
「今度、何が起きたのか話ゆっくり聞かせて。」
俺はそういうと、ミランを探した。「もう日本に戻りたいんだけど、ミランはどこ?」 ナディア姉さんにそう聞いた。日本の自分の家に戻って、もう寝たい。何せ俺は徹夜あけにロック歌手の繋ぎをやってのけたのだ。気が緩んだら、眠くて眠くて仕方がなくなったのだ。
ミランは見当たらなかった。 仕方あるまい。 俺は、バックステージを見回した。そして、誰のかわからないが、ゴージャスなクーラーボックスを見つけて、中を勝手に開けた。中には、冷たく冷えた水や炭酸水などが入っていた。そして、ビールを見つけた。
「ナディア姉さん、話は今度ね。」 俺はそう言うと、ビールを片手に解放の呪文を唱えた。
そして辺りが暗転するのに安堵した。目を開けると、保険会社のエレベーターの前だった。
ほっとして、ビールをカバンにしまう前に一気に飲み干した。 朝早いのであたりに誰もいない。いいのだ、今日は俺はオフだ。だって徹夜明けなのだから。
帰ってこのままゆっくり寝るのだ。
帝と沙織さんも幸せそうで何よりだ。忍び服のペアルックには驚いたけれども。
「帝と沙織は元気だった?」 誰もいないと思ったのに、ビルの前でいきなり田中さんが現れて俺に笑いかけた。 一瞬、田中さんにそう言われたような気がして、俺は絶句した。聞き間違いかもしれない。
ハッとしてもう一度田中さんの顔を見たら、なんでもなさそうな顔で朝日に向かって歩き始めていた。そうか、やっぱり聞き間違いか。田中さんが帝と沙織さんのことを知っているはずがないか。
「うーん、帰ろっかな~。そろそろ。」 田中さんはそう言うと、俺の方を振り向いた。
「はい。俺は家に帰ろうと思います。」「うん、だね!」
「二十一世も最高だけど、忍びの帝国も最高だわ。牡丹にそろそろ会いたいし、じゃあまたね。」 田中さんはそれだけ言うと、姿を消した。
うーん、俺は徹夜明けで10万人の大観衆を相手に離れ業を繰り広げたので、疲れ切ってだいぶ寝ぼけているようだ。
帰って寝よう。それにしてもロンドサ・ザッキースの歌は最高だったな。
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