94 / 107
4. 決着
第82話 婚約お披露目祝賀パーティー(沙織)
しおりを挟む
城で多くの人を呼んで祝賀会が開かれた。クーデーター阻止を祝う会と、帝が私を正式に紹介する会だ。帝と私の婚約が発表された。
「このたびはおめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
私はにっこり笑って美しい振袖を着た牡丹に頭を下げた。
貴和豪一族の家長は牡丹に変わっていた。牡丹は兄に変わって貴和豪一族を牛耳ることになったらしい。そこのいきさつは私もよく聞いていなかった。今度時間ができた時にじっくり聞いてみよう。
ザリガンコ・エクスロゲもいなくなった。事実上、赤の秘密結社のトップも牡丹になった。史上最高に美しい権力者の誕生かもしれない。
姉の琴乃は多くの男性陣の目を奪いながら、誰とも群れずに一人お酒を飲んでいる。姉のことだ。きっと頭の中は実家の牧場に帰って乗馬を楽しみたいと思っているはずだ。
「沙織さん。」
声をかけられて、私は振り向いた。
「五右衛門さん。」
五右衛門さんだった。
私は言葉がうまく出なかった。何から話したら良いのかわからず、焦ってしまう。
五右衛門さんは違う惑星の者だった。しかもすごい召喚術を見せられた。あれはブラックホール召喚か物質をタイムワープさせる術だ。ゲームに参加したナディアや颯介は異能を身につけたけれども、五右衛門さんはそうではない。忍術と魔術のようなものを身につけた人だ。
「五右衛門さん!」
すぐ近くに帝が嬉しそうにやってきて、私の背中に手をおいて優しく私にほほ笑んだ。
「本当にありがとう。助かった。」
「いえ、私の役目を果たしただけです。ナディアと颯介の登場が少し遅れてしまっても成功しなかったんです。そういう計算されたタイミングだっただけです。」
「すごいんだな。未来の技術は。」
「はい、私ではなく博士が算出した分岐点だったのですけれども。」
五右衛門さんは私たち二人の顔を見てすがすがしい笑顔を浮かべた。
「あの瞬間のおかげで、全てが良い方向に未来は変わっています。」
「そうなのか?」
「はい」
「私の今の別荘は木星にあります。宇宙鉄道で地球から木星までは小一時間です。」
「ほお?」
帝は頬を緩めて嬉しそうだ。颯介ならきっと東京―大阪間で木星に?というだろうと私は内心思った。
「N5062星雲に私の両親がバカンス先を見つけました。今、そこが6時間くらいでいけますよ。」
「なんと。」
帝はなんだかロマンを感じたようで、右手にもったお酒の杯をぐいっとあおって晴れ晴れとしたご様子になった。颯介なら東京ーハワイ間ぐらいと言うだろう。
「いつか行ってみたいな。」
「はい、沙織さんもいつか。」
「いえ、もう、歴史を変えたと言われて怒られるのは大変ですから。」
私は慌てて辞退した。
「我々はそれは言わないですよ。」
五右衛門さんは笑って言った。
「私の時空召喚術は地球に限定されて可能なんです。宇宙空間を隔てては、まだまだできないのですが、いつか必ずマスターしたらご招待します。」
「ありがとう!」
帝は始終嬉しそうだった。
「みなさん、ここにいる私の妻となる沙織の、奉行所の同僚である五右衛門さんがこちらです!」
帝は声を張って祝賀会にいる皆に五右衛門さんを紹介した。
「ぜひ、素晴らしい方ですのでお見知りおきを。」
「ありがとうございます。改めて、ご婚約おめでとうございます。」
五右衛門さんも杯をグッとあおって祝ってくださった。
「このたびはおめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
私はにっこり笑って美しい振袖を着た牡丹に頭を下げた。
貴和豪一族の家長は牡丹に変わっていた。牡丹は兄に変わって貴和豪一族を牛耳ることになったらしい。そこのいきさつは私もよく聞いていなかった。今度時間ができた時にじっくり聞いてみよう。
ザリガンコ・エクスロゲもいなくなった。事実上、赤の秘密結社のトップも牡丹になった。史上最高に美しい権力者の誕生かもしれない。
姉の琴乃は多くの男性陣の目を奪いながら、誰とも群れずに一人お酒を飲んでいる。姉のことだ。きっと頭の中は実家の牧場に帰って乗馬を楽しみたいと思っているはずだ。
「沙織さん。」
声をかけられて、私は振り向いた。
「五右衛門さん。」
五右衛門さんだった。
私は言葉がうまく出なかった。何から話したら良いのかわからず、焦ってしまう。
五右衛門さんは違う惑星の者だった。しかもすごい召喚術を見せられた。あれはブラックホール召喚か物質をタイムワープさせる術だ。ゲームに参加したナディアや颯介は異能を身につけたけれども、五右衛門さんはそうではない。忍術と魔術のようなものを身につけた人だ。
「五右衛門さん!」
すぐ近くに帝が嬉しそうにやってきて、私の背中に手をおいて優しく私にほほ笑んだ。
「本当にありがとう。助かった。」
「いえ、私の役目を果たしただけです。ナディアと颯介の登場が少し遅れてしまっても成功しなかったんです。そういう計算されたタイミングだっただけです。」
「すごいんだな。未来の技術は。」
「はい、私ではなく博士が算出した分岐点だったのですけれども。」
五右衛門さんは私たち二人の顔を見てすがすがしい笑顔を浮かべた。
「あの瞬間のおかげで、全てが良い方向に未来は変わっています。」
「そうなのか?」
「はい」
「私の今の別荘は木星にあります。宇宙鉄道で地球から木星までは小一時間です。」
「ほお?」
帝は頬を緩めて嬉しそうだ。颯介ならきっと東京―大阪間で木星に?というだろうと私は内心思った。
「N5062星雲に私の両親がバカンス先を見つけました。今、そこが6時間くらいでいけますよ。」
「なんと。」
帝はなんだかロマンを感じたようで、右手にもったお酒の杯をぐいっとあおって晴れ晴れとしたご様子になった。颯介なら東京ーハワイ間ぐらいと言うだろう。
「いつか行ってみたいな。」
「はい、沙織さんもいつか。」
「いえ、もう、歴史を変えたと言われて怒られるのは大変ですから。」
私は慌てて辞退した。
「我々はそれは言わないですよ。」
五右衛門さんは笑って言った。
「私の時空召喚術は地球に限定されて可能なんです。宇宙空間を隔てては、まだまだできないのですが、いつか必ずマスターしたらご招待します。」
「ありがとう!」
帝は始終嬉しそうだった。
「みなさん、ここにいる私の妻となる沙織の、奉行所の同僚である五右衛門さんがこちらです!」
帝は声を張って祝賀会にいる皆に五右衛門さんを紹介した。
「ぜひ、素晴らしい方ですのでお見知りおきを。」
「ありがとうございます。改めて、ご婚約おめでとうございます。」
五右衛門さんも杯をグッとあおって祝ってくださった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】
迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。
ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。
自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」
「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」
※表現には実際と違う場合があります。
そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。
私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。
※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。
※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる