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4. 決着
第82話 婚約お披露目祝賀パーティー(沙織)
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城で多くの人を呼んで祝賀会が開かれた。クーデーター阻止を祝う会と、帝が私を正式に紹介する会だ。帝と私の婚約が発表された。
「このたびはおめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
私はにっこり笑って美しい振袖を着た牡丹に頭を下げた。
貴和豪一族の家長は牡丹に変わっていた。牡丹は兄に変わって貴和豪一族を牛耳ることになったらしい。そこのいきさつは私もよく聞いていなかった。今度時間ができた時にじっくり聞いてみよう。
ザリガンコ・エクスロゲもいなくなった。事実上、赤の秘密結社のトップも牡丹になった。史上最高に美しい権力者の誕生かもしれない。
姉の琴乃は多くの男性陣の目を奪いながら、誰とも群れずに一人お酒を飲んでいる。姉のことだ。きっと頭の中は実家の牧場に帰って乗馬を楽しみたいと思っているはずだ。
「沙織さん。」
声をかけられて、私は振り向いた。
「五右衛門さん。」
五右衛門さんだった。
私は言葉がうまく出なかった。何から話したら良いのかわからず、焦ってしまう。
五右衛門さんは違う惑星の者だった。しかもすごい召喚術を見せられた。あれはブラックホール召喚か物質をタイムワープさせる術だ。ゲームに参加したナディアや颯介は異能を身につけたけれども、五右衛門さんはそうではない。忍術と魔術のようなものを身につけた人だ。
「五右衛門さん!」
すぐ近くに帝が嬉しそうにやってきて、私の背中に手をおいて優しく私にほほ笑んだ。
「本当にありがとう。助かった。」
「いえ、私の役目を果たしただけです。ナディアと颯介の登場が少し遅れてしまっても成功しなかったんです。そういう計算されたタイミングだっただけです。」
「すごいんだな。未来の技術は。」
「はい、私ではなく博士が算出した分岐点だったのですけれども。」
五右衛門さんは私たち二人の顔を見てすがすがしい笑顔を浮かべた。
「あの瞬間のおかげで、全てが良い方向に未来は変わっています。」
「そうなのか?」
「はい」
「私の今の別荘は木星にあります。宇宙鉄道で地球から木星までは小一時間です。」
「ほお?」
帝は頬を緩めて嬉しそうだ。颯介ならきっと東京―大阪間で木星に?というだろうと私は内心思った。
「N5062星雲に私の両親がバカンス先を見つけました。今、そこが6時間くらいでいけますよ。」
「なんと。」
帝はなんだかロマンを感じたようで、右手にもったお酒の杯をぐいっとあおって晴れ晴れとしたご様子になった。颯介なら東京ーハワイ間ぐらいと言うだろう。
「いつか行ってみたいな。」
「はい、沙織さんもいつか。」
「いえ、もう、歴史を変えたと言われて怒られるのは大変ですから。」
私は慌てて辞退した。
「我々はそれは言わないですよ。」
五右衛門さんは笑って言った。
「私の時空召喚術は地球に限定されて可能なんです。宇宙空間を隔てては、まだまだできないのですが、いつか必ずマスターしたらご招待します。」
「ありがとう!」
帝は始終嬉しそうだった。
「みなさん、ここにいる私の妻となる沙織の、奉行所の同僚である五右衛門さんがこちらです!」
帝は声を張って祝賀会にいる皆に五右衛門さんを紹介した。
「ぜひ、素晴らしい方ですのでお見知りおきを。」
「ありがとうございます。改めて、ご婚約おめでとうございます。」
五右衛門さんも杯をグッとあおって祝ってくださった。
「このたびはおめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
私はにっこり笑って美しい振袖を着た牡丹に頭を下げた。
貴和豪一族の家長は牡丹に変わっていた。牡丹は兄に変わって貴和豪一族を牛耳ることになったらしい。そこのいきさつは私もよく聞いていなかった。今度時間ができた時にじっくり聞いてみよう。
ザリガンコ・エクスロゲもいなくなった。事実上、赤の秘密結社のトップも牡丹になった。史上最高に美しい権力者の誕生かもしれない。
姉の琴乃は多くの男性陣の目を奪いながら、誰とも群れずに一人お酒を飲んでいる。姉のことだ。きっと頭の中は実家の牧場に帰って乗馬を楽しみたいと思っているはずだ。
「沙織さん。」
声をかけられて、私は振り向いた。
「五右衛門さん。」
五右衛門さんだった。
私は言葉がうまく出なかった。何から話したら良いのかわからず、焦ってしまう。
五右衛門さんは違う惑星の者だった。しかもすごい召喚術を見せられた。あれはブラックホール召喚か物質をタイムワープさせる術だ。ゲームに参加したナディアや颯介は異能を身につけたけれども、五右衛門さんはそうではない。忍術と魔術のようなものを身につけた人だ。
「五右衛門さん!」
すぐ近くに帝が嬉しそうにやってきて、私の背中に手をおいて優しく私にほほ笑んだ。
「本当にありがとう。助かった。」
「いえ、私の役目を果たしただけです。ナディアと颯介の登場が少し遅れてしまっても成功しなかったんです。そういう計算されたタイミングだっただけです。」
「すごいんだな。未来の技術は。」
「はい、私ではなく博士が算出した分岐点だったのですけれども。」
五右衛門さんは私たち二人の顔を見てすがすがしい笑顔を浮かべた。
「あの瞬間のおかげで、全てが良い方向に未来は変わっています。」
「そうなのか?」
「はい」
「私の今の別荘は木星にあります。宇宙鉄道で地球から木星までは小一時間です。」
「ほお?」
帝は頬を緩めて嬉しそうだ。颯介ならきっと東京―大阪間で木星に?というだろうと私は内心思った。
「N5062星雲に私の両親がバカンス先を見つけました。今、そこが6時間くらいでいけますよ。」
「なんと。」
帝はなんだかロマンを感じたようで、右手にもったお酒の杯をぐいっとあおって晴れ晴れとしたご様子になった。颯介なら東京ーハワイ間ぐらいと言うだろう。
「いつか行ってみたいな。」
「はい、沙織さんもいつか。」
「いえ、もう、歴史を変えたと言われて怒られるのは大変ですから。」
私は慌てて辞退した。
「我々はそれは言わないですよ。」
五右衛門さんは笑って言った。
「私の時空召喚術は地球に限定されて可能なんです。宇宙空間を隔てては、まだまだできないのですが、いつか必ずマスターしたらご招待します。」
「ありがとう!」
帝は始終嬉しそうだった。
「みなさん、ここにいる私の妻となる沙織の、奉行所の同僚である五右衛門さんがこちらです!」
帝は声を張って祝賀会にいる皆に五右衛門さんを紹介した。
「ぜひ、素晴らしい方ですのでお見知りおきを。」
「ありがとうございます。改めて、ご婚約おめでとうございます。」
五右衛門さんも杯をグッとあおって祝ってくださった。
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