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3. 時間に広がるさざなみ(辺境の星からの刺客)
第75話 ふわふわの番犬と帝と私(沙織)
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ー時は西暦2018年より数億年先の地球 忍歴2020年 帝の城ー
目が覚めた。帝の右手が私の肩に回っている。帝は危険なほど接近していた。
目の前に帝の寝顔がこちらを向いていて、目を開けられたら私と帝はキスをしてしまいそうな距離にあった。
私の右手の感覚がない・・・
私の右手は帝の体の下にある?
紐をくくりつけた帝の左手は私の胸元すぐそばに置かれていた。
ああ、この状況は!
どうすればよろしいのでしょうか。
帝を起こさぬよう、私の右手を帝の下から引き出したい。けれども、長い間帝の体の下敷きになっていたらしく、まったく右手の感覚がなくて自分で引き出すことができない。
私は目を動かして、白いふわふわの毛でおおわれた大型犬のサキを探した。
番犬のサキは、静かに帝の体の向こう側に寝そべっているようだ。
私の自由に動く左手をそっと帝の腰の上に伸ばした。
帝は寝ているようだ。目を覚さない。
そのまま私も帝側にグッと近寄り、左手をピンと伸ばして、帝の体越しにサキの方まで手を伸ばそうとした。
宙をかく私の左手。
サキのふわふわの白い毛を頭の中に思い浮かべて、どうか、サキまで手が届きますようにと思いながら、手を必死で伸ばす。
ひやあ!!
サキが私の手の指先を舐めた。この大型犬は私のことを気に入ってくれているようだ。
私は思わず声をあげそうになったが、そのままサキの首の辺りまで手を伸ばそうとグッと力を入れて手を伸ばした。
なんとか、サキが帝を揺り動かした体にして、帝を起こさずに帝の体を私の右手の上からどかしたいのだ。
「うっ」
わずかに私の声が漏れた。
「なんだ、サキ?」
帝がグッと体を反応させた。
その瞬間、私はサキに浴衣生地の袖口を引っ張られ、帝の体の上に回転するような体制で馬乗りになっていた。
「む、む、謀反か!」
帝が目を見開いて驚いたような声でそう叫んだ。
「ち、ちがいますでございます。」
私は馬乗りになったまましどろもどろで答えた。
「さ、サキが私の袖口を引っ張って私も帝の体の下敷きになった私の右手を救い出そうとして・・・」
私はしどろもどろで言った。
「その体制はまずい!」
帝はそう叫んだ。
「沙織、すぐおりて!」
帝はそう言い、私を馬乗りの体制から私の腕をつかんで引きずり下ろした。
私たちは帝のベッドの上に寝ていた。反動で帝の体が私の体の上に半分乗ってしまっている。
「た、た、た、大変申し訳ございませんでした。」
私は叫ぶように謝り、帝と私は飛び跳ねるように慌てて体を引き離した。途端に私と帝の手をつないでいる紐にまた引き寄せられてしまった。
サキはもふもふの白い尻尾を大きくフリフリし、口を開けて、私たちを微笑んでいるような表情で見ている。私たちが遊んでいると思っているようだ。
私の右上には感覚が戻ってきて、悶えるような痺れがやってきた。
ベッドの上で悶える私に、帝は呆気にとられた表情で眺めた。
「手が痺れているのでございます。」
私はやっとの思いでそう答えた。
「すまぬ。私の体が上に乗っていたのか。」
帝は謝ってくれたけれども、そのまま吹き出した。
「はい、帝の体が私の右手の上に乗っておりまして。起こしてしまいまして大変申し訳ございません。」
私も謝った。
「いや、すまぬ。」
その時だった。サキがいきなり吠えた。
そして、帝の使いのものがかすかに走り寄ってくる音が聞こえた。
スッと帝の自室の前に膝をついたらしく、そのものが声を殺して低い声で告げた。
「帝、敵が動きました。クーデーターでございます!」
低い声で、だが鋭い口調で告げた。
瞬間的に帝は立ち上がった。左手に巻き付けられた紐を自分で解いた。
「すまぬ。沙織。敵の方が早かったようだ。」
帝はそのまま枕元の刀をつかみ、浴衣姿のまま自室を飛び出していかれた。
私は呆然とベッドの上に座っていたが、素早く立ち上がった。
帝をお守りするのだ!
目が覚めた。帝の右手が私の肩に回っている。帝は危険なほど接近していた。
目の前に帝の寝顔がこちらを向いていて、目を開けられたら私と帝はキスをしてしまいそうな距離にあった。
私の右手の感覚がない・・・
私の右手は帝の体の下にある?
紐をくくりつけた帝の左手は私の胸元すぐそばに置かれていた。
ああ、この状況は!
どうすればよろしいのでしょうか。
帝を起こさぬよう、私の右手を帝の下から引き出したい。けれども、長い間帝の体の下敷きになっていたらしく、まったく右手の感覚がなくて自分で引き出すことができない。
私は目を動かして、白いふわふわの毛でおおわれた大型犬のサキを探した。
番犬のサキは、静かに帝の体の向こう側に寝そべっているようだ。
私の自由に動く左手をそっと帝の腰の上に伸ばした。
帝は寝ているようだ。目を覚さない。
そのまま私も帝側にグッと近寄り、左手をピンと伸ばして、帝の体越しにサキの方まで手を伸ばそうとした。
宙をかく私の左手。
サキのふわふわの白い毛を頭の中に思い浮かべて、どうか、サキまで手が届きますようにと思いながら、手を必死で伸ばす。
ひやあ!!
サキが私の手の指先を舐めた。この大型犬は私のことを気に入ってくれているようだ。
私は思わず声をあげそうになったが、そのままサキの首の辺りまで手を伸ばそうとグッと力を入れて手を伸ばした。
なんとか、サキが帝を揺り動かした体にして、帝を起こさずに帝の体を私の右手の上からどかしたいのだ。
「うっ」
わずかに私の声が漏れた。
「なんだ、サキ?」
帝がグッと体を反応させた。
その瞬間、私はサキに浴衣生地の袖口を引っ張られ、帝の体の上に回転するような体制で馬乗りになっていた。
「む、む、謀反か!」
帝が目を見開いて驚いたような声でそう叫んだ。
「ち、ちがいますでございます。」
私は馬乗りになったまましどろもどろで答えた。
「さ、サキが私の袖口を引っ張って私も帝の体の下敷きになった私の右手を救い出そうとして・・・」
私はしどろもどろで言った。
「その体制はまずい!」
帝はそう叫んだ。
「沙織、すぐおりて!」
帝はそう言い、私を馬乗りの体制から私の腕をつかんで引きずり下ろした。
私たちは帝のベッドの上に寝ていた。反動で帝の体が私の体の上に半分乗ってしまっている。
「た、た、た、大変申し訳ございませんでした。」
私は叫ぶように謝り、帝と私は飛び跳ねるように慌てて体を引き離した。途端に私と帝の手をつないでいる紐にまた引き寄せられてしまった。
サキはもふもふの白い尻尾を大きくフリフリし、口を開けて、私たちを微笑んでいるような表情で見ている。私たちが遊んでいると思っているようだ。
私の右上には感覚が戻ってきて、悶えるような痺れがやってきた。
ベッドの上で悶える私に、帝は呆気にとられた表情で眺めた。
「手が痺れているのでございます。」
私はやっとの思いでそう答えた。
「すまぬ。私の体が上に乗っていたのか。」
帝は謝ってくれたけれども、そのまま吹き出した。
「はい、帝の体が私の右手の上に乗っておりまして。起こしてしまいまして大変申し訳ございません。」
私も謝った。
「いや、すまぬ。」
その時だった。サキがいきなり吠えた。
そして、帝の使いのものがかすかに走り寄ってくる音が聞こえた。
スッと帝の自室の前に膝をついたらしく、そのものが声を殺して低い声で告げた。
「帝、敵が動きました。クーデーターでございます!」
低い声で、だが鋭い口調で告げた。
瞬間的に帝は立ち上がった。左手に巻き付けられた紐を自分で解いた。
「すまぬ。沙織。敵の方が早かったようだ。」
帝はそのまま枕元の刀をつかみ、浴衣姿のまま自室を飛び出していかれた。
私は呆然とベッドの上に座っていたが、素早く立ち上がった。
帝をお守りするのだ!
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