83 / 107
3. 時間に広がるさざなみ(辺境の星からの刺客)
第71話 謀略を吹き飛ばせー最強忍術発動(沙織)
しおりを挟む
ー時は西暦2018年より数億年先の地球 忍歴2020年ー
六万人の大観衆は、歓声をあげ、地鳴りのようなブーイングや歓喜の声でシュッケー会場は揺れるようだった。
私は帝が心配なのと自分たちが置かれた状況が心配なので、身も心も散り散りになりそうな気分だ。
いや、本当はそのことが私を動揺させていて胸が痛いのではない。
「あなたは、沙織さんを守る一心で、瞬時の判断で会ったこともない彼女をお妃候補にした。」
「そしてあなたは今、沙織さんを本当に好きになったという。」
「これは敵の謀略にはまってしまったのではないですか?」
颯介がサバンナで帝に言った言葉が耳の音で繰り返し響き、体の震えを抑えることができない。
「余計なお世話。颯介さん、それは、あなたの余計なお世話!」
私は体の震えを止めるために、口に出して強く言った。
これから秘術を使うのだ。気持ちが揺れていては最強忍術を発動できない。
私の恋する帝は、一人で数億年前の地球に駆けつけるゲームに参加するか、中世ヨーロッパの伯爵家で作戦を立てている。この場に戻るためにはもう一度ゲームに参加し、そしてプテラノドンに化けるという忍術を完璧に駆使するミッションを、おそらく命懸けでやるだろう。
その帝の不在を必死にごまかしている五右衛門と私は、一蓮托生の仲間だ。奉行所で三年あまり一緒に仕事してきた同僚というだけではない。私と五右衛門さんは命懸けのミッションを行う一蓮托生の同士だ。
今、五右衛門さんを疑うべきではない。
「余計なお世話。颯介さん、それはあなたの余計なお世話!」
私はまた大きな声で強い口調で口に出して言った。
帝が一人で数億年前の地球のゲームに参加しなければならないと決まった瞬間に、私は確信してしまったのだ。私は帝のことが好きだ。好きだ。好きだ。それに改めて自分で気づいてしまった。
私は深く息を吸って吐いた。
そして、全神経を集中させて帝になりきっている五右衛門さんの周囲の人間に人を惑わす術を増幅させていった。
「どうか帝が無事に戻ってきますように。そして、五右衛門が帝になりきっていることに誰も気づきませんように。」
私は承継門前と呼ばれる最強忍術を唱え始めた。
遥か数億年先の地球で想いを馳せる、私の帝への気持ちは、恋だ。私の初恋は始まったばかり。恋をしたことがなかった私の命懸けのミッションは始まった。秘術を使えば、命の危険もある。そもそもこの秘術をできる忍びがほぼいないのだ。
私がやるしかあるまい!
六万人の大観衆は、歓声をあげ、地鳴りのようなブーイングや歓喜の声でシュッケー会場は揺れるようだった。
私は帝が心配なのと自分たちが置かれた状況が心配なので、身も心も散り散りになりそうな気分だ。
いや、本当はそのことが私を動揺させていて胸が痛いのではない。
「あなたは、沙織さんを守る一心で、瞬時の判断で会ったこともない彼女をお妃候補にした。」
「そしてあなたは今、沙織さんを本当に好きになったという。」
「これは敵の謀略にはまってしまったのではないですか?」
颯介がサバンナで帝に言った言葉が耳の音で繰り返し響き、体の震えを抑えることができない。
「余計なお世話。颯介さん、それは、あなたの余計なお世話!」
私は体の震えを止めるために、口に出して強く言った。
これから秘術を使うのだ。気持ちが揺れていては最強忍術を発動できない。
私の恋する帝は、一人で数億年前の地球に駆けつけるゲームに参加するか、中世ヨーロッパの伯爵家で作戦を立てている。この場に戻るためにはもう一度ゲームに参加し、そしてプテラノドンに化けるという忍術を完璧に駆使するミッションを、おそらく命懸けでやるだろう。
その帝の不在を必死にごまかしている五右衛門と私は、一蓮托生の仲間だ。奉行所で三年あまり一緒に仕事してきた同僚というだけではない。私と五右衛門さんは命懸けのミッションを行う一蓮托生の同士だ。
今、五右衛門さんを疑うべきではない。
「余計なお世話。颯介さん、それはあなたの余計なお世話!」
私はまた大きな声で強い口調で口に出して言った。
帝が一人で数億年前の地球のゲームに参加しなければならないと決まった瞬間に、私は確信してしまったのだ。私は帝のことが好きだ。好きだ。好きだ。それに改めて自分で気づいてしまった。
私は深く息を吸って吐いた。
そして、全神経を集中させて帝になりきっている五右衛門さんの周囲の人間に人を惑わす術を増幅させていった。
「どうか帝が無事に戻ってきますように。そして、五右衛門が帝になりきっていることに誰も気づきませんように。」
私は承継門前と呼ばれる最強忍術を唱え始めた。
遥か数億年先の地球で想いを馳せる、私の帝への気持ちは、恋だ。私の初恋は始まったばかり。恋をしたことがなかった私の命懸けのミッションは始まった。秘術を使えば、命の危険もある。そもそもこの秘術をできる忍びがほぼいないのだ。
私がやるしかあるまい!
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる