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3. 時間に広がるさざなみ(辺境の星からの刺客)

第71話 謀略を吹き飛ばせー最強忍術発動(沙織)

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ー時は西暦2018年より数億年先の地球 忍歴にんれき2020年ー 

 六万人の大観衆は、歓声をあげ、地鳴じなりのようなブーイングや歓喜かんきの声でシュッケー会場は揺れるようだった。
 私は帝が心配なのと自分たちが置かれた状況が心配なので、身も心も散り散りになりそうな気分だ。

 いや、本当はそのことが私を動揺させていて胸が痛いのではない。

「あなたは、沙織さんを守る一心で、瞬時の判断で会ったこともない彼女をお妃候補にした。」
「そしてあなたは今、沙織さんを本当に好きになったという。」
「これは敵の謀略ぼうりゃくにはまってしまったのではないですか?」
 颯介がサバンナで帝に言った言葉が耳の音で繰り返し響き、体のふるえを抑えることができない。

余計よけいなお世話。颯介さん、それは、あなたの余計よけいなお世話!」

 私は体のふるえを止めるために、口に出して強く言った。
 これから秘術ひじゅつを使うのだ。気持ちが揺れていては最強忍術さいきょうにんじゅつを発動できない。

 私の恋する帝は、一人で数億年前の地球にけつけるゲームに参加するか、中世ヨーロッパの伯爵家はくしゃくけで作戦を立てている。この場に戻るためにはもう一度ゲームに参加し、そしてプテラノドンに化けるという忍術を完璧に駆使くしするミッションを、おそらく命懸いのちがけでやるだろう。

 その帝の不在を必死にごまかしている五右衛門ごえもんと私は、一蓮托生いちれんたくしょうの仲間だ。奉行所ぶぎょうしょで三年あまり一緒に仕事してきた同僚というだけではない。私と五右衛門さんは命懸いのちがけのミッションを行う一蓮托生いちれんたくしょうの同士だ。

今、五右衛門さんを疑うべきではない。

「余計なお世話。颯介さん、それはあなたの余計なお世話!」
 私はまた大きな声で強い口調で口に出して言った。

 帝が一人で数億年前の地球のゲームに参加しなければならないと決まった瞬間に、私は確信してしまったのだ。私は帝のことが好きだ。好きだ。好きだ。それに改めて自分で気づいてしまった。

 私は深く息を吸っていた。
 そして、全神経を集中させて帝になりきっている五右衛門さんの周囲の人間に人をまどわす術を増幅させていった。

「どうか帝が無事に戻ってきますように。そして、五右衛門が帝になりきっていることに誰も気づきませんように。」
 
 私は承継門前しょうけいもんぜんと呼ばれる最強忍術をとなえ始めた。

 遥か数億年先の地球で想いを馳せる、私の帝への気持ちは、恋だ。私の初恋は始まったばかり。恋をしたことがなかった私の命懸いのちがけのミッションは始まった。秘術を使えば、命の危険もある。そもそもこの秘術をできる忍びがほぼいないのだ。

 私がやるしかあるまい!
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