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3. 時間に広がるさざなみ(辺境の星からの刺客)

第70話 あなたの恋は敵の謀略にはまったからでは?ー解放の呪文(沙織)

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「沙織さん、『承継門前しょうけいもんぜん』の術だ。」

 帝杯のなりかわり作戦について、五右衛門さんに相談したとき、五右衛門さんはそう私に言ささやいた。

承継門前しょうけいもんぜん』の術は秘術ひじゅつだ。ほとんどの人が知らないことだが、私はその承継門前しょうけいもんぜんが子供のころ得意とくいだった。なりきる術も完璧にできたが、なぜか皆ができない難易度ウルトラCの『承継門前しょうけいもんぜん』の術ができた。

 なぜ、それを五右衛門ごえもんさんが知っているのだろう?

 私はそれが分からなかったが、とにかく帝杯に私がそれを使うことが必要なことは理解できた。

 強力な人をあやつる術だ。使える忍びはそもそもあまりいない。姉の琴乃ことのですら、この術に関しては私には負けた。

 五右衛門ごえもんさんは帝になりきって、平然へいぜんよそおってシュッケー杯の帝席に座る。姉の琴乃ことのと、まさみと牡丹は人を操る術を使って帝杯の周りの人を欺くのだ。

 まもなく試合終了となる。帝は勝者に手裏剣型しゅりけんがたトロフィーを授けるセレモニーを行わなければならない。大観衆を欺くには、私の『承継門前しょうけいもんぜん』が必要だった。

 颯介とナディアは帝とすり合わせすることがあるので、私たちは二手に別れた。
 カメラアプリミッションクリアのあと、き火であぶって焼いた鶏肉を私たちは手に解放の呪文を唱えた。ナディアと颯介と帝は手をつなぎ、私一人に分かれて立った。

 焼き鳥を持ったナディアと、私が同時に解放の呪文しゅもんとなえた。

 私は数億年先の地球の忍歴にんれき2020年の帝杯の会場に戻った。

 帝は中世ヨーロッパの伯爵家はくしゃくけに颯介とナディアと戻ったのだ。


「違う惑星から来た五右衛門ごえもんさん」
 颯介の推理するこの話の衝撃は、私と帝の中に動揺を与えた。

「あなたは、沙織さんを守る一心で瞬時の判断で会ったこともない彼女をお妃候補にした。」
「そしてあなたは今、沙織さんを本当に好きになったという。」
「これは敵の謀略ぼうりゃくにはまってしまったのではないですか?」
 颯介がサバンナで帝にそう言ったとき、私は目眩めまいがした。

 シュッケー会場に戻った私は、大観衆の声を聞きながら体のふるえを抑えることができなかった。

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