未来の地球と辺境の星から 趣味のコスプレのせいで帝のお妃候補になりました。初めての恋でどうしたら良いのか分かりません!

西野歌夏

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3. 時間に広がるさざなみ(辺境の星からの刺客)

第63話 シュッケー帝杯(沙織)

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 ー時は西暦2018年より数億年先の地球 忍歴にんれき2020年ー

 天井席てんじょうせきは、さわやかな夜風よかぜただよい、夕暮れから夜に変わる瞬間の夕日も遠くに見えて最高の心地になれる席だった。私は五右衛門ごえもんさんとの約束を果たしたのだ。

 今日は、シュッケーの帝杯みかどはいだ。

たかホーのマンゴリラン3つと、シュッケーの帝杯の天井席」
 最初に五右衛門ごえもんさんと交わした約束の通り、マンゴリランは帝と買いに行った時のものを、五右衛門さんに渡した。そして、シュッケーの帝杯の天井席てんじょうせきに招待した。最初は五右衛門さんがおごる約束だったが、状況てきに私がおごることになって約束を果たした。

 ふえの音やラッパの音がひびき渡り、6万人もの大観衆が試合の展開に一喜一憂いっきいちゆうしていた。

「もう、最高!」

 私は贅沢ぜいたくな天井席に座って、そうつぶやいた。

 私の少し離れたところに、貴和豪一門きわごういちもんのお嬢様である牡丹ぼたんも座っていた。
 私と牡丹ぼたんは互いに知らぬ顔をしている。私の隣には姉の琴乃ことのも座っていた。今日は、まさみは二つはなれた席に座っていた。五右衛門さん、まさみ、姉の琴乃、私の席は、何を隠そう帝が用意してくれたものだ。

「沙織、今日はお酒はだめよ」
「わかっていますってば」

「私は飲んじゃおうかしら?」
 私と姉の会話を聞いた、まさみがひとりごとのように言った。

 結局、まさみはパチパチと音の出そうなぐらいに炭酸が吹いて出ているカンきりと言われるお酒をたのみ、少しずつ飲みながらのんびりと試合の行方を見守っていた。シュワシュワした喉越のどごしで、爽やかなお酒だ。私も飲みたかったが、我慢。お酒がなくても文字通り最高の試合だった。

 両チームが接戦せっせんで試合は展開している。

「すごいお客さんの数だな」
 隣に座った五右衛門さんが言った。

「五右衛門さんは飲み物はまだ大丈夫です?」
  私は、隣の席の空になりそうな水のカップを見て、五右衛門さんに確認した。

「大丈夫。今日、呼び出しあったら、シラフでプテラノドンになってゲームに参加しなくてはならないでしょう?もしくは別のミッションかもしれないけど」
   五右衛門さんはそう言って笑った。私は苦笑にがわらいした。

 地上では竹馬たけうまに乗った忍者が走り回り、両陣営りょうじんえいの城には天守閣てんしゅかく含めて、壁をすごいスピードで走り回る忍びが縦横無尽じゅうおうむじんに動いていた。

 城のてっぺんにある玉を、敵陣営てきじんえいの城の天守閣てんしゅかくに置いたらゴールだ。
 それ以外にも得点が細かく加算減算されて行く。
 帝杯なので、帝もさらに一段高い席に座っていた。

 天井席てんじょうせきから帝席にいる帝を見ると、帝はすごい美男子で威厳いげんに溢れていた。
 あの、ゲームの冒険を楽しむ『わか』感はまるでなかった。
 
「そこだ!」

 五右衛門さんは敵陣てきじん天守閣てんしゅかくに迫った忍びを応援して声を張りあげた。

「いまだ!イェイ!そこだー!」
 私もいつもより大声を張り上げて応援していた。

 その時だ。

 ついにおそれていたことが起きた。いや、待ち構えていたというべきか。
 
 私は立ち上がった。颯介そうすけからの召喚だ。
 私は帝席の帝を見た。帝はわずかにうなずいた。この時のために私たちは計画をったのだ。

 帝が欠席はできない帝杯で、ゲームの召喚が来たらどうするかの作戦を練った。

 ナディアと颯介そうすけへのネタバラシ後の呼び出しは、きっと敢えて私たちと話し合うための呼び出しのはずだ。そのため、帝はゲームに参加したい。しかし、帝杯で帝が消えるわけにはいかない。おそらく話し合いは長引くはずなので、誰かが帝にわる必要があった。

 帝の前の薄いきらびやかな御簾みすが上がり、帝がスタッと帝席から降りた。そのままスタスタとこちらにやってきた。 

 周りの観客席がざわめいた。帝は私たちに人知れぬ合図を密かに送り、立ち去った。

 ついてまいれ。
 帝はそう私と五右衛門さんに合図をしていた。

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