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3. 時間に広がるさざなみ(辺境の星からの刺客)

第55話 フランスの古い伯爵家で

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 ー時は西暦2018年ー

 フランスのとある地方の古い伯爵家はくしゃくけで働くルボワは、旦那様だんなさまは一向にとしをとらないと思っていた。
 ジュスタンは結婚もしていない若者に見える。二十歳そこそこに見える。それは五年前にルボワが勤めて初めてから変わらない。ルボワより最初は五つ年下ぐらいに見えたが、五年った今は十歳若く見える。

 ジュスタンは、自分で料理もするし、掃除もする。何でも器用にやってのけた。ルボワの仕事は客間を整えたり、庭仕事を手伝ったり、時々大鍋おおなべみがくのを手伝うくらいだった。

 ワイン業を営んでいたが、完全に別の者に管理を任せているようだった。

 普段はレコードで音楽を聴いたり、読書をしたり、運動したりしているくらいだった。自転車に乗って出かけたり、車を運転したり、どこかにフラッと出かけているのはよく見かけていた。

 ある日、ルボワはジュスタンが慌ててキッチン横の扉を開け閉めしているのを見た。

 それは、一度も使われたことがない扉だった。普段はかぎがしまっていた。

「非常事態でなければ使ってはならないことになっている。未来の情報を過去に伝えてはならない。互いに情報交換じょうほうこうかんをしてはならないルールだった。」

 ジュスタンが、誰かに慌てた様子でそう言っているのが耳に入った。
「いつもは、監視結果、誰もルールを乱してはいないというやりとりがわされるのみだったんだ。」
 スタイル抜群の女性の姿がチラッとルボワの目に入った。この五年の間、一度も伯爵家はくしゃくけで見たことのなかった女性だ。

「ジュスタン、だめよ。」
「誰に協力するかを今決めなければだめよ。」
 彼女はささやくようにジュスタンに言った。

 ルボワは聞いてはいけないことを聞いてしまったと思い、そっとその場をはなれた。
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