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2. レエリナサウラと秘密結社 →数億年前地球 中世ヨーロッパ
第50話 思わずドギマギ(帝)
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十三世紀ミャンマーのバガンとポッパ山から時空を超えて戻ったあと、私は沙織と一緒に自室にいた。私は沙織を抱き寄せていた。
沙織の袂からのぞいた白い肌に思わずドギマギしてしまい、私はためらった。なりきる術を使って空を飛んだので、少し袂が乱れてしまっていたようだ。
沙織の口びるに思わず視線が吸い込まれそうになり、私は慌てて目をそらした。今日の私はどうかしている。一気に色々なことが起こりすぎたからだろうか。
沙織に潤んだ瞳で見つめられるとどうにかしてしまいたくなり、慌てて体を離した。
「琴乃さんや、牡丹やまさみが待っていると思う。皆に会いに行こうか。」
「はい。」
沙織は顔を赤めたまま、そううなずいた。
どうも調子が狂う。何か急に沙織がとてつもなく愛しい存在に感じてしまい、自分の気持ちを制御できないように思う。
いや、私は既に沙織と結婚しようと決めていたはずだ。二回目のデートで決意したはずだ。けれどもこれほど強い衝動を感じてしまっては、目的を達せない。
沙織の髪から微かに汗の香りがし、それが微かに私の鼻をくすぐり、そのまま抱きしめたままではいられなくなりそうな衝動を感じる。
まずい。
私はまず、敵を欺いて沙織と自分を守らないとならない。
「沙織。手を出して。」
「なんでしょう。」
「ポッパ山に咲いていた花だ。」
私は山に咲いていた赤い花をつみ取って密かに持ち帰っていた。可憐な姿が、なぜか沙織によく似ているように思えたのだ。赤い花を持つ沙織はこの上なく可愛らしく見えた。最初、初めて沙織を見た時は感じなかった感情に溢れてしまう。
「ありがとございます。大切にします。」
「今の地球では見かけない花だ。まずかったかな。」
「そうですね。でもとても嬉しいです。枯れたら押し花にしておきます。」
沙織は、そっと袂から出したハンカチーフの中に赤い花を包んで、また袂にしまった。その時、自分の袂が乱れて肌が見えてしまっていたことに気づいた。
「あ!大変申し訳ございません。」
沙織は慌てて、かなり焦った様子で袂を整えた。
私は、その様子もまたとても可愛らしいなと思ってしまった。
だめだ。敵の思うつぼとナディアにも指摘されたではないか。
しっかりせねば。沙織の命も懸かっている。
私はまず、自分のお妃候補と自分の命を守らねればならない。
私が彼女をお妃候補にしたのだ。私は帝だ。帝国の命運は私の手にかかっている。
沙織の袂からのぞいた白い肌に思わずドギマギしてしまい、私はためらった。なりきる術を使って空を飛んだので、少し袂が乱れてしまっていたようだ。
沙織の口びるに思わず視線が吸い込まれそうになり、私は慌てて目をそらした。今日の私はどうかしている。一気に色々なことが起こりすぎたからだろうか。
沙織に潤んだ瞳で見つめられるとどうにかしてしまいたくなり、慌てて体を離した。
「琴乃さんや、牡丹やまさみが待っていると思う。皆に会いに行こうか。」
「はい。」
沙織は顔を赤めたまま、そううなずいた。
どうも調子が狂う。何か急に沙織がとてつもなく愛しい存在に感じてしまい、自分の気持ちを制御できないように思う。
いや、私は既に沙織と結婚しようと決めていたはずだ。二回目のデートで決意したはずだ。けれどもこれほど強い衝動を感じてしまっては、目的を達せない。
沙織の髪から微かに汗の香りがし、それが微かに私の鼻をくすぐり、そのまま抱きしめたままではいられなくなりそうな衝動を感じる。
まずい。
私はまず、敵を欺いて沙織と自分を守らないとならない。
「沙織。手を出して。」
「なんでしょう。」
「ポッパ山に咲いていた花だ。」
私は山に咲いていた赤い花をつみ取って密かに持ち帰っていた。可憐な姿が、なぜか沙織によく似ているように思えたのだ。赤い花を持つ沙織はこの上なく可愛らしく見えた。最初、初めて沙織を見た時は感じなかった感情に溢れてしまう。
「ありがとございます。大切にします。」
「今の地球では見かけない花だ。まずかったかな。」
「そうですね。でもとても嬉しいです。枯れたら押し花にしておきます。」
沙織は、そっと袂から出したハンカチーフの中に赤い花を包んで、また袂にしまった。その時、自分の袂が乱れて肌が見えてしまっていたことに気づいた。
「あ!大変申し訳ございません。」
沙織は慌てて、かなり焦った様子で袂を整えた。
私は、その様子もまたとても可愛らしいなと思ってしまった。
だめだ。敵の思うつぼとナディアにも指摘されたではないか。
しっかりせねば。沙織の命も懸かっている。
私はまず、自分のお妃候補と自分の命を守らねればならない。
私が彼女をお妃候補にしたのだ。私は帝だ。帝国の命運は私の手にかかっている。
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