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2. レエリナサウラと秘密結社 →数億年前地球 中世ヨーロッパ
第45話 とろけてしまいそうな感覚(沙織)
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そのまま、帝のあたたかい手は私の頬に触れて、優しく親指で私の頬の涙をぬぐった。
私は心拍数が急に高くなるのを感じた。息を止めてしまって呼吸するのも忘れてしまった。
帝の両手が私の顔を優しく包んでいる。そのまま帝のお顔が近づいてくる。
スローモーションで、私を見つめる眼差しが近づいてくるのがわかり、私は思わず目を閉じた。体の力が完全に抜けてしまっているのに自分の中の何かがとても熱い。
そのまま抱き寄せられた。私の顔を優しく包んでいた両手は、自然な流れで私の体を包んでいた。溢れ出す何か熱いものに、私はとろけてしまいそうな感覚を初めて味わった。
「沙織」
「はい」
そのまま帝が私の名前をささやくように呼び、私も返事をして、もう一度見つめあった。時が永遠かと思われるほどゆっくりと過ぎる。私の両手も、自然と帝のがっしりとした背中にまわって帝を抱きしめた。
◇◆◇◆
「うわっ!そこのお二人さん、こんなところでいきなり何!」
お馴染みの颯介の声で、私たちは一瞬で目を開けて周囲を見まわした。
私と帝は断崖絶壁に立って抱き合っていた。
私の左下には遥か遠くに地面が見える。風が強めに吹いていて、気をつけないと風で吹き飛ばされて断崖絶壁から落ちてしまいそうだ。足元は断崖絶壁から十五センチのところに立っていた。
えええええええええ?
今、ゲームに召喚されたらしい。
今日は既に二回目だ。颯介たちの時間軸と私の時間軸は全く合っていない。間違いなくずれている。
「えんっ」
帝が妙な咳払いをして、私を断崖絶壁から引き離した。ご自身も断崖絶壁から遠ざかった。
「いや、彼女が落ちそうになったので助けようと。」
「あれ?あなたは、この前プテラと一緒にいた80年代アイドルじゃないですかっ!」
颯介がびっくりしたような様子で帝に言った。
「こちらはどなた?」
颯介は私を指さして、私は誰かと聞いた。
『あなたのプテラです』そう言いたかったが、私はにっこり笑って言った。
「初めまして。」
「その、彼女は私の恋人です。」
帝は私を恋人として颯介に紹介した。
「こんなところで何してんですか。もしかしてプテラが近くに来てくれているということですか?」
「そうですね。あっちの方にいましたよ。」
帝がちょっと遠くの方を指さした。そこは森になっていた。
「なーに颯介。誰と話しているの?」
そこにスタイル抜群のナディアが薮をかき分けて現れた。ゲームの参加者の一人だ。
ナディアは、二十一世紀の凄腕のスパイだ。彼女が、人間がゲームに参加して生き残れないはずのところを生き残れるようにしてしまった、もう一人の人間だ。颯介とナディアが出会わなければ、このゲームの参加者はとっくに死んでしまっていたはずだった。
帝はちらっとナディアの様子を見た。
ナディアも私と帝を鋭い目線で見た。向こうは凄腕のスパイだ。銃もナディアは持っている。それは前回二回目にゲームに参加した帝も知っている。
寺小屋時代から培った忍びの秘密言葉で帝が私に言った。
「沙織、正体をバラそう。」
「え?ここででしょうか。」
「そうだ。」
「敵の裏をかこう。」
私は心拍数が急に高くなるのを感じた。息を止めてしまって呼吸するのも忘れてしまった。
帝の両手が私の顔を優しく包んでいる。そのまま帝のお顔が近づいてくる。
スローモーションで、私を見つめる眼差しが近づいてくるのがわかり、私は思わず目を閉じた。体の力が完全に抜けてしまっているのに自分の中の何かがとても熱い。
そのまま抱き寄せられた。私の顔を優しく包んでいた両手は、自然な流れで私の体を包んでいた。溢れ出す何か熱いものに、私はとろけてしまいそうな感覚を初めて味わった。
「沙織」
「はい」
そのまま帝が私の名前をささやくように呼び、私も返事をして、もう一度見つめあった。時が永遠かと思われるほどゆっくりと過ぎる。私の両手も、自然と帝のがっしりとした背中にまわって帝を抱きしめた。
◇◆◇◆
「うわっ!そこのお二人さん、こんなところでいきなり何!」
お馴染みの颯介の声で、私たちは一瞬で目を開けて周囲を見まわした。
私と帝は断崖絶壁に立って抱き合っていた。
私の左下には遥か遠くに地面が見える。風が強めに吹いていて、気をつけないと風で吹き飛ばされて断崖絶壁から落ちてしまいそうだ。足元は断崖絶壁から十五センチのところに立っていた。
えええええええええ?
今、ゲームに召喚されたらしい。
今日は既に二回目だ。颯介たちの時間軸と私の時間軸は全く合っていない。間違いなくずれている。
「えんっ」
帝が妙な咳払いをして、私を断崖絶壁から引き離した。ご自身も断崖絶壁から遠ざかった。
「いや、彼女が落ちそうになったので助けようと。」
「あれ?あなたは、この前プテラと一緒にいた80年代アイドルじゃないですかっ!」
颯介がびっくりしたような様子で帝に言った。
「こちらはどなた?」
颯介は私を指さして、私は誰かと聞いた。
『あなたのプテラです』そう言いたかったが、私はにっこり笑って言った。
「初めまして。」
「その、彼女は私の恋人です。」
帝は私を恋人として颯介に紹介した。
「こんなところで何してんですか。もしかしてプテラが近くに来てくれているということですか?」
「そうですね。あっちの方にいましたよ。」
帝がちょっと遠くの方を指さした。そこは森になっていた。
「なーに颯介。誰と話しているの?」
そこにスタイル抜群のナディアが薮をかき分けて現れた。ゲームの参加者の一人だ。
ナディアは、二十一世紀の凄腕のスパイだ。彼女が、人間がゲームに参加して生き残れないはずのところを生き残れるようにしてしまった、もう一人の人間だ。颯介とナディアが出会わなければ、このゲームの参加者はとっくに死んでしまっていたはずだった。
帝はちらっとナディアの様子を見た。
ナディアも私と帝を鋭い目線で見た。向こうは凄腕のスパイだ。銃もナディアは持っている。それは前回二回目にゲームに参加した帝も知っている。
寺小屋時代から培った忍びの秘密言葉で帝が私に言った。
「沙織、正体をバラそう。」
「え?ここででしょうか。」
「そうだ。」
「敵の裏をかこう。」
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