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2. レエリナサウラと秘密結社 →数億年前地球 中世ヨーロッパ

第44話 これで殺れる(沙織)

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手打てうちにする。」

 私はそう帝に言われるのではとおそれて、目をつぶった。

 なぜもっと早く真実を告げぬのか。
 そう叱責しっせきされると思った。

 帝の手が私の首のあたりに近づく気配を感じた。
 そう、ころされる。

 帝の手のひらが、私のほほを包んだ。
 片手で私のほほを包み、もう片方の手できっと短剣たんけんを振りかざしている。私はそう想像した。目をつぶったまま、涙を流してじっと身動きをしなかった。私は恋した人にころされるのだ。

「沙織!」
「はい。」

 私は涙が流れ続けるまま目をつぶっていた。身体中が熱い。せつない。心が焼けるように痛い。

「それだ!」

「え?」
 私は目を開けた。
 帝のもう片方の手のひらが、私のもう片方のほほを優しく包んだ。

 帝は微笑ほほみ、私の両頬を両手のひらでふわりと包んでいる。帝は私の両頬を包んだまま、私の顔を上にやさしく向けた。帝が笑顔で私の顔をのぞき込んでいる。

「何がですか・・・・・?」

陰謀いんぼうがやっとわかったぞ。」
。よくぞ言ってくれた。」

 私は意味がわからない。

「帝、私はころされるのでは?」

 私は涙がまった目で、喜ぶお顔の帝を見上げる。

「なぜだ。なぜそうなる。」
「沙織をころしはせぬ。」

 帝は優しく言った。まだ、帝の手のひらは私の両頬をふんわり包んだままだ。

「私はかまわぬ。構わぬから、沙織と結婚したいのだ。」
「私を狙うものは以前からずっといるのだ。私は沙織が好きなのだ。沙織が私のそばにいようといなかろうと私は狙われているのだ。好きな沙織と私は一緒になりたいのだ。」

 帝は私の頬を両手で包んだまま、優しく笑って言った。帝の親指が、私のしたまぶたに落ちた涙をそっとぬぐった。なんとあたたかかい手だ・・・・・。

「沙織の話で、私はついに陰謀いんぼう全貌ぜんぼうが分かったぞ。」

「これで、敵をれる。一網打尽いちもうだじんにできる。」

 優しく微笑む帝の表情から一転してニヤッと笑う帝に、私はおそれをなして呆然ぼうぜんとした。

「あいつら、後でえづらをかくなよ。」
 帝は言った。

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