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2. レエリナサウラと秘密結社 →数億年前地球 中世ヨーロッパ
第33話 貴族の社交会 舞踏会で舞う淑女の記憶(2)
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「さあさ、ドレスに着替えて。」
私は、とある一族の館にいた。だいぶ後の世に、黒い貴族と呼ばれる一族の館であった。
たいそう豪華なドレスを鏡の前でゆっくり着付けられる。髪も結いあげられる。首にも宝石がついたネックレスをつけられる。
「ジョリーナ、素敵よ。あなたの赤い髪は本当にこのドレスに生えるわ。」
召使いも紳士も皆々が口々に私をほめそやした。
私にそっくりの娘が数ヶ月前に病死したらしく、紳士の妻とその母は失意のあまりに気が触れそうにまで憔悴しきっていた。
最初に私を見た紳士の妻は、私を娘だと思い込んでしまった。私は自分の正体を明かせない。また、なぜかゲーム解放もなく、颯介からの呼び出しもパタリとなくなり、食べるものもなく、寝るところもなく中世ヨーロッパに放り出された状態だった。
結局、私は誘惑に負けてしまった。こんなに都合の良い話があるわけがない。私を運よく娘と思うなんて奇跡のようなものだ。
「できません。」
何度も紳士に断った。
私は断ったけれども、紳士に頼み込まれて最後の最後に、この奇跡のような話を引き受けてしまった。娘の祖母が私を見ておいおいと泣くので、その様子に断れきれなくなったのもある。けれども、本来であればお断りするのが正しいことだと頭の中ではわかっていた。
「今日の舞踏会はずっと楽しみにしていたんだから。」
そう娘の母親と祖母に言われて、私は娘のために仕立てられた豪華なドレスを着せられた。
そして、事件のあった舞踏会に参加したのだ。
事件は、この煌びやかな貴族の舞踏会で私がとある男性に求婚されたことで始まった。王家の息子だった。
「結婚していただけますか。」
「え!」
この時点で私は何かがおかしいと思うべきであった。都合が良い展開が続いている。ありえない展開だ。王子は私に迫ってきた。
挙句の果てに、私はドレスを脱がされそうになった。
そして、ことは起きた。
この夜、王家の息子は暗殺されるはずだったことが、このあと分かったのだ。
しかし、忍びの私は、その王子を忍術で救ってしまい、暗殺を阻止してしまった。華麗に手裏剣を使った。術も使った。武力ももちろん使った。
連続回転で空中を舞い、相手に飛びかかり、素手で技を決める。壁も走り、屋根も走り、敵を本気で成敗しようとしてしまった。忍びの本気を見せてしまった。
「なぜお前は邪魔をする?」
敵はそう叫んだ。
どうやら、私は王家の息子を誘惑し、王家の息子とともに葬り去られるはずの娘として送り込まれていたようだ。
この現場を目撃したのは、暗殺を仕掛けた側だ。私がどうやって暗殺を邪魔したのかを目撃されてしまった。
もっとも最悪だったのは、暗殺を阻止し終わった時に颯介からの呼び出しがきたのだ。私は誰も見ていないと思い、そのままプテラノドンになりきる術でなりきって飛び立った。
もしかしたら夢ではないかと何度も思ったが、実際に起きたことで間違いない。
私はこの話を帝にしなくてはならない。きっとお叱りを受けるだろう。許してくれないであろう。
貴和豪一門の忍びに命を襲われたときに、私は悟ったのだ。引き返せないし、取り返しがつかないことを私はしたのであろう。
私は歴史を変える行動をとった。禁断のゲームに参加して、忍びと人間が関わっただけでなく、私はしてはならない行動をとったのだ。
私は、とある一族の館にいた。だいぶ後の世に、黒い貴族と呼ばれる一族の館であった。
たいそう豪華なドレスを鏡の前でゆっくり着付けられる。髪も結いあげられる。首にも宝石がついたネックレスをつけられる。
「ジョリーナ、素敵よ。あなたの赤い髪は本当にこのドレスに生えるわ。」
召使いも紳士も皆々が口々に私をほめそやした。
私にそっくりの娘が数ヶ月前に病死したらしく、紳士の妻とその母は失意のあまりに気が触れそうにまで憔悴しきっていた。
最初に私を見た紳士の妻は、私を娘だと思い込んでしまった。私は自分の正体を明かせない。また、なぜかゲーム解放もなく、颯介からの呼び出しもパタリとなくなり、食べるものもなく、寝るところもなく中世ヨーロッパに放り出された状態だった。
結局、私は誘惑に負けてしまった。こんなに都合の良い話があるわけがない。私を運よく娘と思うなんて奇跡のようなものだ。
「できません。」
何度も紳士に断った。
私は断ったけれども、紳士に頼み込まれて最後の最後に、この奇跡のような話を引き受けてしまった。娘の祖母が私を見ておいおいと泣くので、その様子に断れきれなくなったのもある。けれども、本来であればお断りするのが正しいことだと頭の中ではわかっていた。
「今日の舞踏会はずっと楽しみにしていたんだから。」
そう娘の母親と祖母に言われて、私は娘のために仕立てられた豪華なドレスを着せられた。
そして、事件のあった舞踏会に参加したのだ。
事件は、この煌びやかな貴族の舞踏会で私がとある男性に求婚されたことで始まった。王家の息子だった。
「結婚していただけますか。」
「え!」
この時点で私は何かがおかしいと思うべきであった。都合が良い展開が続いている。ありえない展開だ。王子は私に迫ってきた。
挙句の果てに、私はドレスを脱がされそうになった。
そして、ことは起きた。
この夜、王家の息子は暗殺されるはずだったことが、このあと分かったのだ。
しかし、忍びの私は、その王子を忍術で救ってしまい、暗殺を阻止してしまった。華麗に手裏剣を使った。術も使った。武力ももちろん使った。
連続回転で空中を舞い、相手に飛びかかり、素手で技を決める。壁も走り、屋根も走り、敵を本気で成敗しようとしてしまった。忍びの本気を見せてしまった。
「なぜお前は邪魔をする?」
敵はそう叫んだ。
どうやら、私は王家の息子を誘惑し、王家の息子とともに葬り去られるはずの娘として送り込まれていたようだ。
この現場を目撃したのは、暗殺を仕掛けた側だ。私がどうやって暗殺を邪魔したのかを目撃されてしまった。
もっとも最悪だったのは、暗殺を阻止し終わった時に颯介からの呼び出しがきたのだ。私は誰も見ていないと思い、そのままプテラノドンになりきる術でなりきって飛び立った。
もしかしたら夢ではないかと何度も思ったが、実際に起きたことで間違いない。
私はこの話を帝にしなくてはならない。きっとお叱りを受けるだろう。許してくれないであろう。
貴和豪一門の忍びに命を襲われたときに、私は悟ったのだ。引き返せないし、取り返しがつかないことを私はしたのであろう。
私は歴史を変える行動をとった。禁断のゲームに参加して、忍びと人間が関わっただけでなく、私はしてはならない行動をとったのだ。
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