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2. レエリナサウラと秘密結社 →数億年前地球 中世ヨーロッパ

第30話 兄に捕まる牡丹(牡丹)

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「お前、妹だからってお前のことを信用しているわけじゃないからな。」
 私、牡丹ぼたんは兄の貴和豪智也きわごうともやに吐き捨てるように言われた。

「間宮琴乃は関係ないでしょう、兄上。」

 私がいくら言っても兄の智也は聞く耳を持たなかった。
 標的は間宮沙織だと言っても聞かずに、兄は勝手に間宮琴乃を拉致らちして来てしまったのだ。

「お前、あの時、なんでしくじった?間宮沙織を殺せたのに、なぜしくじったんだ?」

 私は今日も美しい振袖姿ふりそですがただったが、両腕を後ろにしばられて、太い柱にくくりつけられた。

 兄だからといって油断したのが大きな間違いだった。

「お前はわざと逃しただろう?俺を裏切っただろう?」

「違う!」
 地下の一室で、私は兄に問い詰められていた。ここには誰も助けにこれない。着物ははだけ、とっくにめちゃくちゃにみだれている。力づくで抵抗しようとしたが、最初に油断したことがあだになり、柱にくくりつけられてしまったのだ。

 髪の毛もみだれまくっていた。

 私は目を細めて兄を見た。私と兄は全然似ていない。兄と父も全然似ていない。兄と私の母は違った。やはり、兄は父の子ではないといううわさは本当なのか。

 冷徹れいてつな兄が感情的になり、自制じせいが効かなくなり、けもののような目をして私を見ている。

 実の妹にこんな仕打ちをするものはいないのではないか。兄は、噂が真実で、私が兄の妹ではないことを知っているのではないか。

 力でここから巻き返すのは無理だ。泣き落としで行こう。

「ごめんなさい。兄上。」
 私は大粒の涙を流して泣きながら兄に懇願こんがんする。もちろん嘘泣きで、芝居だ。

「私があの時しくじったばかりに。」
 私はわんわん泣く。まるで子供の頃のように。

「泣くな!」
 兄はその様子を見てめんどうくさそうに言った。まだ私を疑って値踏ねぶみしている。

 私は泣き続けて謝り続けてひたすら兄上に忠誠ちゅうせいを尽くすと言い続けた。


 そこに、突然、部屋のドア板が吹っ飛んで兄が風圧ふうあつでひっくり返った。何かが部屋の外から空気を震わせていた。部屋の壁も揺れている。

 素早く、走り込んできたその何者かは、ひっくり返った兄に飛びりを三発決めた。
 兄は身動きが取れずに悶絶もんぜつし、そのまま気絶きぜつした。

「間宮琴乃、参上。」

 その美しい女忍びは、兄の様子を冷たく一瞥いちべつし、私に言い放った。

「助けに参った。」
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