未来の地球と辺境の星から 趣味のコスプレのせいで帝のお妃候補になりました。初めての恋でどうしたら良いのか分かりません!

西野歌夏

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2. レエリナサウラと秘密結社 →数億年前地球 中世ヨーロッパ

第21話 初めてのデートのうちわけ(沙織)

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 私は実家に戻って、その夜寝る前に、帝との初めてのデートのことを思い返した。

 ゲームに召喚されて、颯介そうすけに会った後の経緯いきさつはこうだ。

 ◇◆◇◆

 ー ザルツブルク ゲーム召喚中 シーン名称:雪のホーエンザルツブルク城 クリア率0.001% ー

 与えられた装備そうび:無し
 カメラアプリミッション:上空からホーエンザルツブルク城の秘密角度を認識させよ
 ザルツァッハ渓谷けいこくにあるまちヴェルフェンとの位置関係を認識させよ。
 クリア条件:解放かいほうされる条件は、食べ物ゲットと、カメラアプリミッションクリアの二つを満たすこと


 雪のザルツブルクで、私はなりきる術でプテラノドンに変身していた。

「プテラの知り合いなの?」
 颯介にそう聞かれた私は、プテラノドンの姿のまま、こっくりうなずく。
「そうなんだね。」

「会いたかったよ、プテラ!」
 颯介は私に飛びついて抱きしめた。
 途端とたんに、隣に立つ帝がたじろいで眉をひそめてイライラとした表情を見せた。
「な、そんなに飛びつかなくても。プテラは逃げないから。」
 帝は私と颯介を引きはなそうと、私と颯介の間に手をいれてきた。
「え?あ、はい。すみません。」
 颯介は帝の剣幕けんまくに驚いた様子だったけれども、少し私から体を話してくれた。帝はまだ、プテラになった私の体の背中せなかに手をおいたままだ。

「あのホーエンザルツブルク城の上空を飛びたいんだ。カメラアプリミッションなんだよ。」
 颯介がそういうので、私はまたこっくりうなずいた。

 そして、私は素早すばやく、おさなき頃から寺小屋時代から培ったで、帝にささやいた。

「帝、颯介と一緒に私の。」
「そんなことできまい。」
 帝もすかさず秘密言葉で返してくる。

「え、今何かおっしゃいました?」
「いえ、ひとりごとです。」
 颯介は帝が話す言葉を聞きとれないので帝に聞きかえしていて、帝が否定するやりとりが、私にはおもしろい。

「とにかく乗ってください。」
御意ぎょい。失礼する。」
 帝も、やっとしぶしぶながらも颯介と一緒にプラノドンに化けた私の背中にのってくれた。

 う、

 私はよろよろとホーエンザルツブルク城に向かって飛び始めた。
 その途端とたん、どういうわけかふっと背中が軽くなった。

 あれ?と思ったその時、私の目の横に、シノマクロプス・ボンディの小さな翼竜の姿が見えた。
「その可愛いは、帝ですか?」
 私は思わず秘密言葉で言った。
「そうだ。」
 帝も秘密言葉でかえしてくれた。

「私の大切なお妃候補にのるなんて、できまい。」

「重かったであろう・すまない。」
「本当に、こうしないとならないのか・・・理不尽りふじんだ。」
 シノマクロプス・ボンディになった帝は秘密言葉でささやいてきた。

 颯介は、上空から城を撮影するカメラアプリミッションに夢中で、後ろに座ったはずの帝がいなくなったことに全く気づかなかった。

「颯介は、漆黒しっこくの髪をしているが、あれは貴和豪一門きわごういちもんのものか?」
「違います。彼は貴和豪一門ではありません。二十一世紀の日本人のサラリーマンです。」
「なんと。」
「ゲームに参加して中世ヨーロッパにタイムスリップさせられているんですよ。」
「すごいものであるな。」
 可愛いシノマクロプス・ボンディは感嘆かんたんのため息をつきながら、そう言った。

「これは初めてのデートみたいなものだな。」

 突然とつぜん、可愛いシノマクロプス・ボンディに言われて、プテラノドンの私は驚き、次に顔が真っ赤に熱くなり、体中がほてるのを感じた。

「あ、私がデートをしたのは、そなたが初めての相手だ。勘違かんちがいせぬよう。」
「これは、私にとっても初めてのデートだ。」

 可愛いシノマクロプス・ボンディは慌てたようにそうつけ加えた。

「あの、私にとっても初めてのデートです。今までそういった方はおりませんでしたので。」
 プテラになった私も消えいるような声で、そうささやき返すのが精一杯せいいっぱいだった。

「沙織さんにとっても私が初めてのデートの相手か。それはとても嬉しい。ありがとう。」
 可愛いシノマクロプス・ボンディはれた様子でそう言った。

 このあと、無事にホーエンザルツブルク城の敷地しきちに着地すると、帝はすぐに元の姿に戻った。颯介が城内に入ったタイミングで私も元の姿に戻った。

 二人で寄りって、雪におおわれた城のキッチンで、あたたかい飲み物を分けてもらった。私は、なんだかとても楽しかった。

 ◇◆◇◆

 思い返すと、胸の辺りがふんわり暖かくなり、ほほが勝手にゆるんでしまう。
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