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1. 標的の選別 時は数億年先の地球
第17話 初めて助けに行く(帝)
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誰かを気にかけて救いにいくのは初めてのことだ。
翼竜にのって飛ぶのは慣れている。
「いいか、お前がさっき乗せた忍びのところまで行かなければならない。」
私は翼竜にそう言い聞かせる。
耳元で風の音がバタバタとうるさいけれども、今は一刻を争う事態だ。
翼竜のザラザラとした肌触りが、焦りで汗ばむ手には心強い。今は、このプテラノドンだけが頼みの綱だ。
萌激川は激流があることで有名な川だ。
忍びを縄で縛って落とすとすれば、橋があるところであろう。
眼下を必死で見つめる私の目に、レエリナサウラが一匹、全力疾走している姿が映る。レエリナサウラの進行方向とは真逆に、深緋色の欄干が有名な大きな橋がある。その名も深緋(こきひ)橋だ。
私はそこだと当たりをつける。
橋から落とされたのであれば、萌激川の流れに沿って流されていくのではないか。
「おまえ、分かるか?さっきのせた忍びの匂いがするか?」
私は、プテラノドンに話しかけた。
プテラノドンはかなりの下流まで飛んでいく。
私はプテラノドンのザラザラとした肌触りの背中から、身を乗りだして川の周辺をのぞき込んだ。間宮沙織と橘五右衛門の姿がないか、必死で探す。
貴和豪一門の忍びが襲ったのであれば、もしかしたら望みがあるかもしれないと思って残っていた僅かな期待が、だんだんしぼむのを感じる。
私は間に合わなかったのか?
また、半泣きでなぜ自分がお妃候補になったのかと問うた時の間宮沙織の表情が、頭の中にちらつく。私の口の中に苦味が広がった。
翼竜にのって飛ぶのは慣れている。
「いいか、お前がさっき乗せた忍びのところまで行かなければならない。」
私は翼竜にそう言い聞かせる。
耳元で風の音がバタバタとうるさいけれども、今は一刻を争う事態だ。
翼竜のザラザラとした肌触りが、焦りで汗ばむ手には心強い。今は、このプテラノドンだけが頼みの綱だ。
萌激川は激流があることで有名な川だ。
忍びを縄で縛って落とすとすれば、橋があるところであろう。
眼下を必死で見つめる私の目に、レエリナサウラが一匹、全力疾走している姿が映る。レエリナサウラの進行方向とは真逆に、深緋色の欄干が有名な大きな橋がある。その名も深緋(こきひ)橋だ。
私はそこだと当たりをつける。
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「おまえ、分かるか?さっきのせた忍びの匂いがするか?」
私は、プテラノドンに話しかけた。
プテラノドンはかなりの下流まで飛んでいく。
私はプテラノドンのザラザラとした肌触りの背中から、身を乗りだして川の周辺をのぞき込んだ。間宮沙織と橘五右衛門の姿がないか、必死で探す。
貴和豪一門の忍びが襲ったのであれば、もしかしたら望みがあるかもしれないと思って残っていた僅かな期待が、だんだんしぼむのを感じる。
私は間に合わなかったのか?
また、半泣きでなぜ自分がお妃候補になったのかと問うた時の間宮沙織の表情が、頭の中にちらつく。私の口の中に苦味が広がった。
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