未来の地球と辺境の星から 趣味のコスプレのせいで帝のお妃候補になりました。初めての恋でどうしたら良いのか分かりません！

１. 標的の選別 時は数億年先の地球

第2話 私のこと（間宮沙織）

　私の仕事は、いわゆる下級武士かきゅうぶしだ。奉行所で算盤方そろばんがたをやっている。

　たまに、私の得意な人をあやつる術で、めんどうくさい数字をごまかして提出するのだが、私の上司の方が一枚上手だ。

「間宮沙織まみやさおりくん。ここの数字を計算しなおして。」

　すぐに上司に見破みやぶられて突き返される。この優秀すぎる上司のせいで、私のささやかな反抗心が時々むくむくとおさえきれなくなり、ちょっとしたストレス発散でプテラノドンに変身する趣味を始めたしだいだ。

　もちろん、人間が生きていた地球より数億年先のこの地球には、本物のプテラノドンもたくさんいる。けれども、私の忍びとしてのなりきる術は結構いけている。人間には、プテラノドンにしか見えない完成度でなりきることができた。

　焼酎しょうちゅうを飲んで銭湯せんとうに行こうとして、颯介そうすけに呼びだされたことがある。

　そのまま銭湯に行っていたら、溺おぼれ死んでいたかもしれない。しかし、颯介がゲームでゲットしたトラビコンの魚という、奇妙な魚を少しわけてもらったおかげで、エラ呼吸がしばらくできるようになった。

   戻ってきて忍びに戻った時は、しばらく銭湯せんとうで酒が残っていても大丈夫だった。その数日後にジムのプールで偶然であった職場の後輩に水術すいじゅつを披露しようとしたら、200メートル潜ったまま無呼吸で泳げたので、後輩からは水術すいじゅつの天才の称号しょうごうをもらえた。

　いつも数字をごまかして人をあやつる術でなんとかしようとする私に対する目が、ちょっと職場で変わった瞬間だった。

　ま、颯介にプテラとして呼びだされることで、私が損することばかりではないことは確かだ。面白い冒険も数多く経験させてもらった。

　忍びで奉行所勤ぶぎょうしょつとめの算盤方そろばんがたには、一生かかっても経験できない冒険ばかりであることはまちがいなかった。

　連続回転で空中を舞い、相手に飛びかかり、素手すでで技を決める。壁も走り、屋根も走り、敵を手裏剣しゅりけんや短剣で成敗せいばいする。そういった忍びの技わざを使う冒険もあるが、それだけが冒険ではない。

　ゲームの参加者の颯介が、とびきりの異能いのうを使って敵を成敗せいばいするのを眺めたり、それに協力するのは面白かった。