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魔法
58_己の心に従え
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崖の上からの、全世界中継となるガールズバンド“ミッチェリアル”のコンサートが開始された。
「ついこの間まで戦地だった国です!」
世界各国のファンが見つめる画面にテロップが流れた。
頭に包帯を巻いて、左足をギブスで固めて松葉杖をついたメロンはため息をついた。左足は捻挫ですんだ。メンバーが演奏して気持ちよさそうに歌っている姿を、メロンは木の影から眺めていた。
この世界は不思議で楽しいと思う。
片付けをタヌキとキツネが助けてくれたり、タヌキにどやされたり、猫に猫パンチされたり、善意のイノシシに助けられたり。
人科だけの世界じゃない。
それは、動物たちは人を救うこともできる。
それは、とても変わった冒険だった。メロンはここ1ヶ月半ものことをしみじみと思い返した。
「姉ちゃん、知っているか?伊賀一族第17条、己の心に従えだ。海を超えた先祖が最後に付け加えた条項だぜ。」
隣にたっていた弟のミカエルが、メロンにささやいた。
「俺たちの先祖は、海を超えた忍びだ。全ての条項は第十七条に準じる、だぜ。」
「じゃあな。あばよ。」
ミカエルは、一気に駆け出して崖からダイブして行った。
「おうああ!ミカエル!」
メロンは叫んだ。
「大丈夫!俺は、伊賀の血を引くだけじゃねえ。」
目を凝らすと、パラシュートが開いて一人の男が森の上を飛んでいくのが見えた。
ミカエルだ!
メロンは、忍びのまたたびの術でも、全世界に中継されているカメラの前で使うのかと思って肝を冷やしたが、大丈夫そうだ。
メロンは思った。
「私は私でいいのだ。
伊賀一族第十七条、己の心に従え。
海を渡った先祖のように、自由に世界を歩いて行くのだ。自分を不必要に隠さずに、自分を卑下せずに。」
チェロを弾くトオルが、私に向かってウィンクした。
メロンは笑って、手をふった。
「ついこの間まで戦地だった国です!」
世界各国のファンが見つめる画面にテロップが流れた。
頭に包帯を巻いて、左足をギブスで固めて松葉杖をついたメロンはため息をついた。左足は捻挫ですんだ。メンバーが演奏して気持ちよさそうに歌っている姿を、メロンは木の影から眺めていた。
この世界は不思議で楽しいと思う。
片付けをタヌキとキツネが助けてくれたり、タヌキにどやされたり、猫に猫パンチされたり、善意のイノシシに助けられたり。
人科だけの世界じゃない。
それは、動物たちは人を救うこともできる。
それは、とても変わった冒険だった。メロンはここ1ヶ月半ものことをしみじみと思い返した。
「姉ちゃん、知っているか?伊賀一族第17条、己の心に従えだ。海を超えた先祖が最後に付け加えた条項だぜ。」
隣にたっていた弟のミカエルが、メロンにささやいた。
「俺たちの先祖は、海を超えた忍びだ。全ての条項は第十七条に準じる、だぜ。」
「じゃあな。あばよ。」
ミカエルは、一気に駆け出して崖からダイブして行った。
「おうああ!ミカエル!」
メロンは叫んだ。
「大丈夫!俺は、伊賀の血を引くだけじゃねえ。」
目を凝らすと、パラシュートが開いて一人の男が森の上を飛んでいくのが見えた。
ミカエルだ!
メロンは、忍びのまたたびの術でも、全世界に中継されているカメラの前で使うのかと思って肝を冷やしたが、大丈夫そうだ。
メロンは思った。
「私は私でいいのだ。
伊賀一族第十七条、己の心に従え。
海を渡った先祖のように、自由に世界を歩いて行くのだ。自分を不必要に隠さずに、自分を卑下せずに。」
チェロを弾くトオルが、私に向かってウィンクした。
メロンは笑って、手をふった。
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