ガールズバンド“ミッチェリアル”

全世界の諸君に告ぐ

５７_助け

　ミカエルは姉の体をつかんで宙を回転する車外から飛び出した。
　そこに、待機していたドローン２２台がハンモックのように網を広げてミカエルとメロンの体をキャッチした。
「イエス！」
「よっしゃ！」
　ダルマとソフィがガッツポーズをするような喜びの声を上げた。

「わたしたちを敵国で運んだドローンの応用版よっ！」
　ダルマが解説している。

「転んでもタダじゃ起きないわっ！」
　ソフィも勝ち気な性格が溢れ出る言葉で言った。

「すごいな。」
　ゴムドリは感嘆の声を上げた。


「ミカエル、聞こえる？」
「聞こえないわね。」
「よくやったわ。さすが伊賀！」
「これぞ伊賀！」
　口々に三人が褒め称えた。

「おーい、メロン、聞いているか？」
　ゴムドリは言ったが、シーンと静まりかえっている。

「気を失った状態から目覚めたら、感動するわね。」
「眠りの森の姫どころじゃないわっ！敵国で私たちが命を失いかねた経験がいきたわね。うふっ！」
「ダルマ、ウフってあなたがいうとなんだか怖いわ。」
「おだまり、ソフィ。」
「そこの二人、今は感動のシーンなんだから争いはやめて。」
「はいはいはーい。」
　三人は無駄口を叩きながら、嬉しそうにドローン２２台がハンモックのように網を広げて、ミカエルとメロンを運んでいく様を見つめた。

「で、どこに連れてくの？」
「どこって・・・」
「ドローンの基地に戻るしかないんじゃない？」
「メロンが気づいてくれないと、下におろせないんじゃない？」
「あーっ！」
「そこまで考えてなかった。」
　　
　街の建物の上を飛び続けるドローンに、人々が気づいて手にスマホをかざしている。このままでは動画がUPされてしまう。動画がUPされたら、不可思議な天候が武器倉庫を襲撃した前に見られた猫２匹がドローンに運ばれていった現象との類似点に敵国はきっと気づくだろう。

「頼む、メロン、起きてくれ！」

　そこに突然、無線に乱入者があった。
「君たち、急がないと危ないぞ。」
　
　アンジェロの声だ！

「ご主人さまっ！いつからそこに？」
　ソフィがどうやらアンジェロに見つかったらしい。

「ようやく分かったんだよ。『ミプロトルスの恋』の意味が。一つは、叶わぬ恋。それはガールズバンドのメンバーもよく知っているね。君たちだって知っているはずだ。」
　アンジェロは素早く、どこかの座標をソフィのパソコンから打ち込みながら言った。

「この座標って？」
　ゴムドリが聞いた。
「ちなみに、俺はそのなんとかの恋ってやつは知らない。」

「あー、君は普通の人科だからね。」
　アンジェロはゴムドリに答えた。
「その座標は、わたしの別宅の座標だ。ドローンをそこまで飛ばしてくれ。広大な農園を持っていて、そこに大きなトランポリンを設置している。ああ、僕の単なる趣味だ。大丈夫。そこならきっとメロンとミカエルを救える。今いるところからすごく近い。」

「OK！」
　ゴムドリは素早くドローンの移動先を変更した。

　全員がドローンが方向を変えて移動していくのを見守った。

「あの、ご主人さま。さっきの続きですが、その・・・」
　ソフィがアンジェロに聞いた。

「ああ、『ミプロトルスの恋』の別の意味ね。種族を超えた叶わぬ恋。それと、同じ星に生きる生き物が助け合って互いを守る、『平和』の意味だよ。」

「つまり、俺たちってこと？」
　ゴムドリがすっとんきょうな声で言った。

「そう。もうすぐ着くぞ！」
　アンジェロがつぶやいた。