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全世界の諸君に告ぐ

45_コンサート会場で(金の亡者)

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「ちぇっ。うるせーなあ。」

金の亡者、アンジェロの仕事用電話は鳴りっぱなしだった。メッセージもバンバン入ってくる。

何せ切実に武器を買いたいやつ、正確には国がいるからな。
みんな、狂ったように連絡を取ろうとしてきている。

だが、残念だ。俺の商売もあがったりで、期待に応えてあげられない。俺は無視していた。ガールズバンドのコンサートに今日は行くのだ。仕事用携帯はOFFにした。

プライベート携帯のうち、ソフィだけが知っている携帯だけをONにして、他も全て電源OFFにした。

一体、何が起きているのか。そもそもソフィとはここ2日あまり連絡が取れない。ソフィの携帯は全てOFFになっている。位置情報をつかめない。そして、悲しいことにトルコから出てくる時、猫のモーリーが姿を消していることに気づいた。これまでもちょいちょい姿を消すことがあったから、きっと今回もそれだろうと自分に言い聞かせたが、ちょっと不安だった。

トルコの部屋は契約をそのまま続けておいた。モーリーが戻ってくるかもしれないからな。窓をちょっとだけ開けておいた。誰かに侵入されてももぬけの空状態にしてきたので、たとえモーリー以外のものが侵入したとしても、害はないだろう。

ガールズバンドのミッチェリアルは凄まじい人気だった。コンサート会場の熱気に俺は早くも気後れを感じた。もちろん、YouTubeやTikTokで彼らの人気ぶりは知っていた。しかし、コンサート会場に集まった人々を見ていると、とてつもないうねりのような人気を肌で感じた。

「まったく、ミカナのやつ、ロシア皇帝の隠し財産なんて、要らないじゃないか。」

俺はひとりごとをつぶやいた。

俺は、ミカナがロシア皇帝の隠し財産の方の相続放棄しなかったことに違和感を覚えた。ドイツ本国の創業者一族側の遺産相続の方は放棄の意思を明確に伝えてlきていた。そっちはあながち嘘でもなさそうだ。自力で大金を手にすることができる状態にあることは間違いない。面倒なものは要らないだろう。

だが、ミカナは実際にロシア皇帝の隠し財産の方は喜んで相続し、しかも一気に3分の二も使い込んでいた。使い道は世界中の武器の買い占めだ。政治思想のない奴という報告しか受けていなかったので、俺は仰天した。しかも、意味不明なことに、ミカナは開発中の衛星やロケットやいつ金になるともわからない代物まで大金叩いて一気に買い漁っていた。

「あいつの目的は一体なんだ?」
「俺に恨みでもあって、使い果たそうという気か?」

俺に恨みでもあって、俺と同じ商売を始めようとして武器を買い漁っているのか。まだ10代の小娘が?
ミカナは大学生でもない。高校生だ。一体、ミカナが何を考えているのかさっぱり分からなかった。

コンサート会場に着くと、俺の席は結構いい席だった。まあ、金の力で無理やり手に入れたから当たり前なのだが。

「あ、どうも。」
隣のやつに気づかずに手が当たり、相手が英語で俺に謝ってきた。

「あ、どうも。すみません。」
俺も英語で返事をする。

「もしかして、ミッチェリアルのコンサートは初めてですか?あ、私は彼女たちの担当をしているレコード会社営業のカマジリと申します。」

隣の男は、気さくに日本訛りの英語で自己紹介してきた。

「カマジリさん?あ、どうも。アンジェロです。彼女たちのコンサートは初めてです。」

ミカナの行動を考えるのに忙しくて、俺はうっかり本名を喋ってしまった。おいっ!と自分に慌てふためいたが、まあこんなところで本名喋ったところで、害にはならないだろうと思い直した。レコード会社営業と武器商人では、住む世界がかけ離れすぎていて、本名を知られたところで、仕事上は月とスッポンくらいに距離がある。

「初めてなんですねっ!楽しめると思うので、存分にお楽しみくださいねっ!」
カマジリというレコード会社営業は愛想良く俺にそういうと、ニッコリ笑った。俺もつられて、社交用の笑顔を顔に貼り付けた。
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