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全世界の諸君に告ぐ

40_ドローン食料配達の結果

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「はいはいはーい!」
 突然、私たちの回線に誰かが割り込んできた。夢中になってモニターを食い入るように見つめていた全員がギョッとして息を止めて動きを止めた。

 だれ?

「くっそ!国防総省!」
 ゴムドリがいきなり悪態をついた。
パソコンを狂ったように叩き、侵入者の回線をコマンドで力づくで断ち切ろうとしている。

「無駄よ。」
 割り込んできた声の主が言った。

「こちら国防長官だ。私の乱入は、そっちからは切れない。」
 それだけ言って、真っ赤なスーツを上下着た女性がモニターに映った。
 金髪の髪をボブカットにしている。メロンは真っ赤な口紅を引いているその顔を凝視した。

 顔から滲み出る圧力がすごくて、抵抗する気力を奪い去る。
 一瞬、こんな人が国防総省長官にいたかもしれないと思わせる雰囲気があった。けだがしかし、残念。私は合衆国の国防総省長官をよく知っている。

「ハゲワシじゃないわ。」
 私はつぶやいた。
私は勝手に現在の合衆国防総省長官にハゲワシと名付けていた。今割り込んできた相手は、ハゲワシとは別人だった。

「あなた誰?テロ組織?」
 私は真っ赤なスーツを着た乱入者に静かに聞いた。

「いや、この人ネコだから。」
 突然、トルコにいるソフィが、モニター越しに女性を見て言った。

「ねこだと?」
 ゴムドリがすっとんきょうな声をあげた。

「何かの隠語か?」
 

「まあ、そんなものね。」
 ソフィはゴムドリに言って笑った。
そして、その赤いスーツの乱入者に告げた。

「あなた、国防長官のとこの猫よね?」
「だったら、私たちがドローンを使って、紛争地域に食料を配るのを見逃して。」

「いやいやいや。合衆国のドローンを使って紛争地域に行ったことがバレてごらんなさい。アメリカがやったと思われる。」
「紛争地域からしたら、合衆国が危険を犯してまで食料配達をしたとみなすわ。それだと、合衆国に報復テロが仕掛けられるかもしれないでしょう?」
 赤いスーツの女性はそう言った。威圧的な態度で腕組みをしている。

「これはガールズバンド『ミッチェリアル』のミッションなの!猫のあなたが邪魔してどうするんのよ!」
 ソフィはガミガミと言った。

「ゴムドリ、スピードを落としていいわ。渡り鳥に包囲させてカモフラージュを続けてもらいましょう。」
「ソフィ?言えるかしら?」
 私はゴムドリとソフィにそれぞれ言った。
「OK。」
「ベクベクベクベクベク」
 ソフィが言った。

 ゴムドリはドローンのスピードを落として、渡り鳥に引き続き取り囲んでもらった。

「追跡システムを止めな。」
 ソフィが赤いスーツの女性に言った。

「嫌だね。お前は生意気だ。」
 赤いスーツの女性が言った。

「お前も猫だろ?お前に言われたくない。」
 ソフィが悪態ついた。
「なんだと、この泥棒猫。」
 赤いスーツの女性が言い返した。

 ほんの数分、にゃあにゃあうるさかった。
 人間のメロンとミカエル、ゴムドリには、何を言っているのかさっぱり不明だった。

「猫じゃねえわ、鳥だわ、って渡り鳥たちが反論している。」
 そうソフィが言った。

 どうやら、猫と猫との言い争いが渡り鳥たちにドローンを通じて流れており、渡り鳥たちは自分たちに言われたと思って気分を害したらしい。

「カオス!」
 ミカエルが頭を抱えた。
「お前鳥でもないくせに、俺たちに見守ってもらっている分際で偉そうだ。」
 ソフィが言いはじめた。そう渡り鳥たちが言っているらしい。

 渡り鳥たちは、こちらの声がドローンから聞こえてきたので、ドローンに悪口を言われたと思って、ドローンに悪態をつきはじめた。

「待て!」
 私は皆に一回とまれと言った。

「ちょっとそこやめなっ!国防長官の猫さん!」
 私は喧嘩の間に入った。
「見返りは、この作戦の結果をリアルタイムで見守れるメリットよ。今すぐに、追跡を止めて!」
 私は赤いスーツの女性に怒鳴った。

「仕方ないわ。」
 赤いスーツの女性はそういうと、猛烈な勢いでパソコンを叩きまくった。

 すぐにNASAの追跡システムはリターンした。
 追跡をやめたのだ。

 鳥型ドローンは、渡り鳥と同じスピードで紛争地域上空を飛び続けた。

 敵のレーダーにも、味方のレーダーにも引っかかっていない。

「蜂ドローン。正確な位置情報を鳥型ドローンにリンクして!」
 私は言いながら、ゴムドリのパソコンに侵入してペアになっている蜂型ドローンと鳥型ドローンの最終調整をした。

 この動きは私の方がゴムドリより熟知しているし、得意だ。

 全員が固唾を飲んだ。

 まず蜂型ドローンの映像と、鳥型ドローンの映像の両方が画面に映り、一軒目の家の前にそっと鳥型ドローンが食料を置いて飛び去る状況が映し出された。

「イエス!」
 固唾を飲んで見守っていた全員が小さくガッツポーズをした。


 渡り鳥たちは、鳥型ドローンの周囲を囲み、同じ動きをしてくれた。

「今日の夕方のニュースは、全国各地で渡り鳥が庭に舞い降りる姿があちこちで見られました、だな。」
 ゴムドリがそうつぶやいた。

「ハリポタの最初の方になんかそんなんのなかったっけ?」
 ミカエルがゴムドリの言葉を聞きながらそう言った。

 応用科学を勉強していたミカエルが、任務を終えたドローンの戻り経路について、一気に鳥型ドローンの動きを変えた。
 任務を終えたら、一目散に基地に戻るに限る。

 蜂型ドローンは、ゴムドリが操作した。

 こうして、メロンが食料配達まで、ミカエルが戻りの鳥型ドローン、ゴムドリが戻りの蜂型ドローンの面倒を見ることで、連続作業で食料配達の任務完了したドローンたちが速やかに基地に帰還しはじめた。


「国防長官、名前は?」
 ソフィが赤いスーツの女性に聞いた。

「ダルマよ。」
赤いスーツの女性は答えた。

「ダルマ、あんたの任務はあらゆる追跡システムのチェックと、何か変わった動きがないか国防長官のパソコンから見張ることよ。」
 ソフィがダルマに言った。

「なんで、あんたに指示を出されなければならない?」
 ダルマがまた喧嘩をふっかけようとしてきた。

「そこ、うるさい!さっさと任務を果たしな。ソフィは紛争国のネットワークに侵入して、ガールズバンドミッチェリアルの食料配達を動物の言葉で流して。」
 私はソフィとダルマを牽制して、ソフィに指示を出した。

「OK」
「分かったわ。」
 ソフィとダルマはそれぞれの任務に集中しはじめた。

 こうして、敵陣に気づかれずに、密かに食料配達が行われたのだ。

 (ちなみに、グンチェとアンソニーの家にも無事に配布された。)
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