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全世界の諸君に告ぐ

37_私のドローン計画(メロン)

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さと子さんのスイートルームに戻ると、みんなが私をちょっとニヤニヤしながら見つめてきた。
「えっ、何ですか?」
 私はキョトンとして聞いた。

「だって、メロン、カマジリにチューされてた。」
 ミカナがカタコトの日本語で言った。

「されてない、されてない!」
 私は息をのんで驚いて、次の瞬間に慌てて否定した。
「いや、だって抱き寄せられてたよね。」
 トオルが言った。

 くっ・・クジャクさままで!

「違います!あれは、蜂がいたから、カマジリさんが私を蜂から遠ざけようとしただけで!」
 
「ああ、蜂が。」
 しし丸が、納得したように言った。

「そう!そう!そうなの蜂があそこにいたの!」
 私は変な汗をかきながら、しどろもどろで説明した。

「ふふーん。まあ、そういうことにしたっちゃる。」
 ミケがふふんと鼻で笑って言った。十五歳の猫さまに、私はからかわれた。

「ミケちゃんだって、出発前に尋ねてきた同じ中学の男の子のことで、私に怒ったでしょう?」
 私は焦ったあまりに、思わずまた余計なことを口走ってしまった。

「きゅうり!それは黙って!」
 ミケは最後まで言わせないぐらいに、食い気味に私の言葉を打ち消してきた。

「まあ、まあ、みんな大人をからかっちゃいけん。」
 ブー子が優しい目をして私とミケを見つめて言った。

 きつねさまにそう言われると、私もあたふたした自分を恥じた。

「ごめんなさい、ミケちゃん。」
 私は謝った。

 ミケはこくりと黙ってうなずいた。

「うちもごめん。」
 ミケも謝った。

 ここで私は本題を思い出した。

「あのね、パソコンを私に貸してくれないでしょうか?私は国境沿いから食料を配達することをソフィと実現できます。」

 私は思い切って言った。

「ほほう。どうやって?」
 しし丸が身を乗り出して聞いてきた。

「私はボスに仕える前は、NASAで研究員をやっていました。その前はハーバードで生命科学を研究していました。」
「弟は、ボスに仕える前はハーバードで応用工学をやっていました。レーザーが反応できない鳥型ドローンと、蜂型ドローンについて、私たちは非常に詳しい兄弟です。」

 私はそこまで一気にしゃべった。
 私の人生、無駄な時間なんてなかった。私はそんな思いで勝手に胸が溢れた。

「で?」
 しし丸が言った。

「だから、レーザーに反応しない鳥型ドローンと蜂型ドローンをくみわせて、紛争地域に食料を配達するってことでしょ?」
 トオルが解説してくれた。

「そうです!」
 私はトオルが理解してくれて、感激して声を震わせて言った。

「盛り上がっているところ、ごめんちゃ。ほんで、その鳥型ドローンと蜂型ドローンはどこから運ぶの?そしてそのドローンは、どこから手に入れるの?」

 ブー子が言った。ブー子は期待に目を輝かせて私を見つめている。

「私のNASAの研究員だった頃の同僚に、ゴムドリというあだ名を持つ同僚がいました。科学漫画サバイバルシリーズのオタクだからなんですが、彼は生命科学を使ったドローンを専門にしていました。その彼はお金に困っています。お金を払って仕事として依頼すれば、協力してくれるはずです。」

「彼なら、どこで鳥型ドローンを手に入れて、どういうルートで運ぶかを考えられます。」
 私は、身振り手振りも添えて、力説した。

「メロン、私のパソコン、最新型。貸すよ。」
 ミカナがそう言って、私にパソコンを渡してくれた。
 さっき、ソフィとやりとりして、ボスの口座にミカナの口座から入金した時に使ったパソコンだ。

「ありがとう。」
 私はそう言って、早速スイートルームのテーブルの前の椅子に座った。
「弟のミカエルを仲間に入れます。」
「ソフィはすでに仲間なので、私が何をしようとしているのか、ソフィに告げて、ソフィにも協力を仰ぎます。」
「いいですか?」
 私はテーブルの上に置いたパソコンを開いて、そこにいる全員の顔を見渡した。

「お願い!」
 ミケが言った。
「うん、やってくれっちゃ。」
 ブー子が微笑んで言った。
「メロン、やってみな。」
 トオルは腕組みしたまま、私を見つめて言った。
「よし、やってみよ。」
 しし丸もニッコリ笑って言った。
「ほな、全員一致やな。メロン、頼んだ。」
 いつの間にか戻ってきたさと子さんがそう言った。

 私はクルクルと腕を回し、手首を回し、首を回した。
 さあ、行くぜ。

 私はただの伊賀の血を引くだけじゃない。
 友達がいない動物オタクだったせいで、ハーバードにまで行って、生命科学を学んで、NASAの研究員をやっていた筋金いりの動物オタクだ。レーザーの網の目を掻い潜れるドローンの開発は、生命科学を応用して開発されていた。
 この知識を決して無駄にしない。このバンドが始めたことを、私は実りあるものに変えてやる。


「じゃ、うちらはそろそろリハーサルに行くで。本業をおろそかにしちゃいけん。」
 さと子さんはそう言った。

「メロンは、ここに残ってその仕事をやっといてな。」
 さと子さんはそういった。

「いいんですか?」
 私は皆の監視が外れることに、驚いた。

「大丈夫。あんたを信用しちょるけん。」
 ブー子はそう言って、私に1台のスマホを差し出した。

「渡そうと思っちょったけん。ししちゃんが用意してくれた。」
 ブー子は私に新しいスマホを渡してくれた。

「ありがとうございます!」
 私はきつねさまやみんなに信用されたことに、胸が熱くなった。
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