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全世界の諸君に告ぐ
35_オークランドのホテルで
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ロサンゼルスからオークランドに移動してきた俺たちは、午後から始まるリハに備えて、ホテルで休憩していた。
メンバーはまたまた、さと子さんのスイートルームに集合していた。スイートルームのバルコニーからは、ホテルのプールが見えていた
「ね、泳いでみない?」
ミケがトオルに言った。ミケは体を動かしたくてうずうずしているようだ。華奢な体なのに、筋肉質で、格闘技の技を素早く連続技で繰り出せるのは、根っから体を動かすのが好きで、四六時中体を動かして技の練習をしていることも起因しているだろう。
「いやだ。」
トオルは長い髪を風に靡かせながら、眩しそうに太陽の光を浴びて、ふっと微笑みながらミケに言った。今日も相変わらずトオルは美しかった。トオルの美少女ぶりはハリウッドでも評判で、俺の所には、今日だけでそちら方面からのオファーの電話が数本かかってきたくらいだ。
俺は、そのことをまだトオルに話していない。ここ数日、トオルが何か気がかりなことがあるような様子を見せていたので、黙っていた。
バルコニーからは、青々としたプールが見えた。その周りをぐるっと緑の芝風が囲み、あちこちに整然とパラソルが置かれて、飲み物を給仕しているウェイターやウェイトレスが歩き回っている。
「泳いだら、気持ちいいだろうなあ。」
ミケはうっとりと言った。
「水着、持ってきた?ミケ?」
ミカナがカタコトの日本語でミケに聞いた。
「持ってきた!ミカナはどう?」
ミケはそう言ってミカナを誘っている。
「ミケ、濡れても化けの方は大丈夫かんね?」
ブー子がミケを心配そうにみて言った。
「うん、一応ね。」
ミケは力づよくうなずいた。
「そうかね。私はちょっと自信なかあ。」
ブー子は言っている。
「へえ。本業のキツネさんでもそんなもんかね。」
ミケはへーっとちょっと驚いた様子で言った。
「そだよ。サウナとか、地元のスーパー銭湯とか平気だっちゃ。でもね、外国のプールだとちょっと緊張するなあ。」
ブー子はそう言って笑った。
「ししちゃんは?」
ブー子は俺に聞いてきた。
「俺は平気だ。どこでも平気だ。」
俺はちょっと威張って胸を張って言った。
カマジリにこっぴどく怒られたので、リハの前にホテルから外出するのはやめようということになったのだ。外出する気分になれないほど、事態は急変したので、カマジリに言われなくても、外出しようと言い出すメンバーはいなかった。
さっきまで、世界の動物たちから連絡があった内容をさと子さんとミカナを中心に、まとめ上げていたところだった。
例の戦争をしている国が、戦争を二週間中止することになった。
ミカナは送金先をチェックして、必要な送金を行っていた。
まず、ソフィのご主人さまの口座に、何事もなかったかのように金を戻した。
武器はミカナ名義に変わった。
メロンは、ソフィがやらかしたことを知ると、ウェルカムドリンクのお酒も飲んでしまい、フラフラになって、スイートルームから出て行った。
そもそも、メロンは自分のボスの飼っている猫のモーリーが、ボスの部下のソフィと同一生物だと知らなかったらしく、「ひええええっ」と気味の悪い奇声を上げて、驚いていた。
スイートルームから出て行ったメロンを、さと子さんが密かに追って行った。
「うちにまかしといて。メロンは信用できるんやけど、まあ、野放しにはできんからな。」
そう言って、さと子さんはメロンの後を追って、部屋を出て行った。
そして、全員で何気なくバルコニーで気持ちの良い風を感じていたところだった。
「あ!あれみて!」
ミケが何かに気づいて言った。
「あ、メロンとカマジリ!」
トオルが言った。
「待って。その後ろに、さと子さんがやぶに隠れて二人を見ている!」
ブー子が笑いながら、言った。
プールサイドの青々と茂る木の下に、メロンとレコード会社営業のカマジリがいた。
メロンはちょっとポカンとした様子でカマジリを見ているが、カマジリの方はデレッデレした様子がここからでも見てとれた。
「デレデレしてる?」
ミカナがカタコトの日本で言った。
「してるねえ。」
トオルが言った。
「伊賀の血と、カマジリかあ。」
トオルはそう言って、不思議そうに二人を見つめていた。
「うん、なんか面白いものが見れそうだね。」
ミカナがそう言って、ブー子に小さくたしなめられた。
「大人をからかっちゃいかんよ。」
ブー子は小さな声でそう言った。
俺からみて、トオルは少し安心したように見えた。
トオルはやはり、何かメロンのことで気がかりなことがあったんだな、と俺はぼんやり思った。
今日のリハが終わったら、またオークランドコンサートが明日に控えている。
バンドも正念場だ。
だが、ミカナが宣言して、メンバー全員で始めた「ロシア皇帝の隠し財産を全部使い切ってやれ計画」も、すでに取り返しがつかないレベルでスタートしてしまっていた。こっちもこれからが正念場だった。
メンバーはまたまた、さと子さんのスイートルームに集合していた。スイートルームのバルコニーからは、ホテルのプールが見えていた
「ね、泳いでみない?」
ミケがトオルに言った。ミケは体を動かしたくてうずうずしているようだ。華奢な体なのに、筋肉質で、格闘技の技を素早く連続技で繰り出せるのは、根っから体を動かすのが好きで、四六時中体を動かして技の練習をしていることも起因しているだろう。
「いやだ。」
トオルは長い髪を風に靡かせながら、眩しそうに太陽の光を浴びて、ふっと微笑みながらミケに言った。今日も相変わらずトオルは美しかった。トオルの美少女ぶりはハリウッドでも評判で、俺の所には、今日だけでそちら方面からのオファーの電話が数本かかってきたくらいだ。
俺は、そのことをまだトオルに話していない。ここ数日、トオルが何か気がかりなことがあるような様子を見せていたので、黙っていた。
バルコニーからは、青々としたプールが見えた。その周りをぐるっと緑の芝風が囲み、あちこちに整然とパラソルが置かれて、飲み物を給仕しているウェイターやウェイトレスが歩き回っている。
「泳いだら、気持ちいいだろうなあ。」
ミケはうっとりと言った。
「水着、持ってきた?ミケ?」
ミカナがカタコトの日本語でミケに聞いた。
「持ってきた!ミカナはどう?」
ミケはそう言ってミカナを誘っている。
「ミケ、濡れても化けの方は大丈夫かんね?」
ブー子がミケを心配そうにみて言った。
「うん、一応ね。」
ミケは力づよくうなずいた。
「そうかね。私はちょっと自信なかあ。」
ブー子は言っている。
「へえ。本業のキツネさんでもそんなもんかね。」
ミケはへーっとちょっと驚いた様子で言った。
「そだよ。サウナとか、地元のスーパー銭湯とか平気だっちゃ。でもね、外国のプールだとちょっと緊張するなあ。」
ブー子はそう言って笑った。
「ししちゃんは?」
ブー子は俺に聞いてきた。
「俺は平気だ。どこでも平気だ。」
俺はちょっと威張って胸を張って言った。
カマジリにこっぴどく怒られたので、リハの前にホテルから外出するのはやめようということになったのだ。外出する気分になれないほど、事態は急変したので、カマジリに言われなくても、外出しようと言い出すメンバーはいなかった。
さっきまで、世界の動物たちから連絡があった内容をさと子さんとミカナを中心に、まとめ上げていたところだった。
例の戦争をしている国が、戦争を二週間中止することになった。
ミカナは送金先をチェックして、必要な送金を行っていた。
まず、ソフィのご主人さまの口座に、何事もなかったかのように金を戻した。
武器はミカナ名義に変わった。
メロンは、ソフィがやらかしたことを知ると、ウェルカムドリンクのお酒も飲んでしまい、フラフラになって、スイートルームから出て行った。
そもそも、メロンは自分のボスの飼っている猫のモーリーが、ボスの部下のソフィと同一生物だと知らなかったらしく、「ひええええっ」と気味の悪い奇声を上げて、驚いていた。
スイートルームから出て行ったメロンを、さと子さんが密かに追って行った。
「うちにまかしといて。メロンは信用できるんやけど、まあ、野放しにはできんからな。」
そう言って、さと子さんはメロンの後を追って、部屋を出て行った。
そして、全員で何気なくバルコニーで気持ちの良い風を感じていたところだった。
「あ!あれみて!」
ミケが何かに気づいて言った。
「あ、メロンとカマジリ!」
トオルが言った。
「待って。その後ろに、さと子さんがやぶに隠れて二人を見ている!」
ブー子が笑いながら、言った。
プールサイドの青々と茂る木の下に、メロンとレコード会社営業のカマジリがいた。
メロンはちょっとポカンとした様子でカマジリを見ているが、カマジリの方はデレッデレした様子がここからでも見てとれた。
「デレデレしてる?」
ミカナがカタコトの日本で言った。
「してるねえ。」
トオルが言った。
「伊賀の血と、カマジリかあ。」
トオルはそう言って、不思議そうに二人を見つめていた。
「うん、なんか面白いものが見れそうだね。」
ミカナがそう言って、ブー子に小さくたしなめられた。
「大人をからかっちゃいかんよ。」
ブー子は小さな声でそう言った。
俺からみて、トオルは少し安心したように見えた。
トオルはやはり、何かメロンのことで気がかりなことがあったんだな、と俺はぼんやり思った。
今日のリハが終わったら、またオークランドコンサートが明日に控えている。
バンドも正念場だ。
だが、ミカナが宣言して、メンバー全員で始めた「ロシア皇帝の隠し財産を全部使い切ってやれ計画」も、すでに取り返しがつかないレベルでスタートしてしまっていた。こっちもこれからが正念場だった。
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