ガールズバンド“ミッチェリアル”

西野歌夏

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襲撃(始まる前に、襲われた)

18_俺の夏休みの計画(しし丸)

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「あんのやろうっ!」
「あっ!」

 俺が行く前に、薄い顔の女メロンがサスケの前に素早く立ちはだかった。俺たちは、たちの悪いこのアジア人風美男子のパパラッチを「サスケ」とあだ名で呼んでいた。本名は知らない。

 サスケはしつこいパパラッチだ。
 顔とスタイルだけは一丁前いっちょうまえだ。芸能人か何かぐらいに見栄みばえがする。

 あまりの堂々とした態度に、一瞬芸能人かと思ってSPも思わず通してしまう瞬間があるのだ。

 要するにこのサスケは、俺たちガールズバンド「ミッチェリアル」にとっては大敵だ。秘密を抱えるバンドとしては、しつこいパパラッチは命取りだ。

 つい最近は、ミカナとミカナが憧れる「ジュラさま」のことを面白おかしく書いた記事が週刊誌に掲載されそうになり、俺とさと子さんとカマジリは必死の思いで掲載を止めた。十六歳のミカナは当然このことは知らない。面白おかしく嘘でも書こうとするのが、このサスケというパパラッチのたちの悪さでもあった。
 
 今、空港のロビーで、メロンはサスケを一度は押しもどしたかに見えたが、サスケはメロンを騙して飛び上がって駆けより、至近距離しきんきょりでブー子にカメラを向けた。

 その瞬間、人の動きとは思えない身のこなしで、メロンはサスケをはったおした。

 さすが、「くノ一」!

 俺は心の中で拍手喝采はくしゅかっさいした。すごい動きだ。ミケとも違った敏捷性びんしょうせいだ。
 
 へー。伊賀いがの末裔ってやっぱりすごいんじゃん。

 俺は少し感動すら覚えた。
 メロンのもとに、レコード会社営業のカマジリが駆けよった。カマジリもニッコニコだ。

 ブー子と俺は目があった。

「メロン、信用できるかも。」
 ブー子が俺にささやいた。

 俺もうなずいた。

「でかした、きゅうり。」
 さと子さんが、サングラスをかけたマフィアのボス然のままで、ボソッと言ったのが聞こえた。

 ギターを抱えたミケが、トレードマークのツインテールを揺らして、密かに、メロンにグッドと親指をたてて合図をした。トオルも小さくメロンにうなずいた。

 ただ、メロンは何かカマジリにささやかれて呆然ぼうぜんした様子だった。
 とにかく変わったやつだ。

 メロンはまた、ブー子から借りた帽子をまかぶに被り直し、辺りをうかがうようにまた急ぎ歩き始めた。

「私、メロンと同じ部屋でいいわよ。」

 ブー子が歩きながら俺にささやいてきた。

「よかった。本当に助かる。」

 俺はブー子に感謝した。誰かがメロンを見張っていなければならないのは変わらない。ホテルの部屋を誰と同室にするかは、マネージャーの俺としては悩みどころだったのだ。

 俺はイノシシだけど、一応男なので、さすがにメロンと同室にはなれない。

 さと子さんもかなりの変わり者で、かつ本性はマフィアのボスなので、何をしでかすか分からないところがある。

 ブー子なら、安心できた。

 こうして俺たちは無事に空港を抜け、ホテルに向かったのだ。

 ガールズバンド「ミッチェリアル」ワールドツアー日程
 一日目 ロスに到着後ホテル移動
 二日目 午後からコンサート会場でリハ
 三日目 コンサート
 四日目 オフ
 五日目 オークランド移動&リハ
 七日目 コンサート
 八日目 オフ

 組まれた日程表はこんな調子で続く。となるとだ。

 俺の夏休みの始まりはこうなる。
 二日目の午前中にロス近郊の動物園に行く。四日目のオフの日に大陸の兄弟に会いに山に行く。

 メロンも連れて行くべきかもしれない。
 ブー子も一緒に行くと言って聞かない。

 しかし、四日目の山に行くは、イノシシ狩りに遭遇そうぐうする危険がある。

 うーん、悩む!!

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