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第一章 波乱と契約婚の花嫁生活幕開け
恋 スティーブン王子Side
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ブルク家当主ジャイルズと相談してからは話が早かった。
一気に動いた。他にも私の妻となるフランソワーズを不服として、排除する者が現れるのを抑止するためにも、ことを急いだ。
あの日、フランソワーズが短刀と長弓で狙われてから、一気に物事が動いた。ブルク家当主ジャイルズは、自分の駒となる娘を未来の王の花嫁とするために、自分の大事な娘を簡単に暗殺しようとするジットウィンド枢機卿に反旗を翻すことを決断した。
フランソワーズの父のことだが、ブルク家当主ジャイルズが正式に謝罪した。当時、内密にしろというジットウィンド枢機卿の脅迫に屈してしまったことについて、フランソワーズに謝罪したのだ。フランソワーズのラヴォイアの名前を聞いて、フェリックス・ブルックと並ぶフランソワーズを見て思い出したブルク家ジャイルズはすぐに謝罪してくれたのだ。
フランソワーズは泣いて喜んだ。
ブルク家当主ジャイルズは、自分の娘を守るためにスキルを使って身代わりになろうとしたフランソワーズに感謝しており、今後全面的にブルク家が彼女の後ろ盾になり、様々なことをバックアップをすることを約束してくれたのだ。
彼女の母親は良い病院に転院させた。最近は修道院の取り壊しが進み、都市病院の整備を進めている中で、薬種商協会もできた。聖女を国家が認めているのは、スキルを的確に王の内科医も含めて判断する必要があるからだ。悪質な薬や医師や、勝手に医師を名乗るヤブ医者からも民を守る必要があるからだ。
僕とフランソワーズの甘い婚約期間は間もなく終わる。新婚時代に突入する。その前に僕の気持ちをフランソワーズに正式に伝えたいと思っているのだが、彼女はどうも僕に気持ちがないようだ。どう僕を愛してもらえるかを悩んでいる。
愛らしい彼女と過ごすのは最高だ。一緒にいてリラックスしているが、不意に彼女にドキドキする毎日を過ごすのは夢のようだ。
第一聖女ヴィラに対する気持ちはすっかり消えた。彼女は大事な友達には変わりがないが、僕の目の前にいるフランソワーズだけで僕の胸には幸せが満ちる。
ジットウィンド卿が投獄されたあと、証拠となる過去の手紙の発見ですっかり意気投合したダニエルとフランソワーズがニーズベリー城でお酒を飲んで乾杯していた。
夕暮れで赤く染まる空と湖のように広がるお堀がとても美しく見える日だった。酔ったフランソワーズが、上機嫌になったダニエルに馬車を用意して、彼が乗ってきた馬を従者の一人に乗って行ってもらう手筈をして部屋に戻ってきたところで僕は彼女を抱きしめた。
「今日は最後までいいかな?」
彼女は真っ赤になって狼狽えた表情をしたが、小さくうなずいてくれた。
式の準備は着々と進んでいた。愛のない結婚のはずが、僕の方は一方的な愛に溢れている。
気持ちを伝えたい。でも、彼女の気持ちを聞くのが怖かった。
彼女が抱いていた劣等感は、少しずつ改善しているように思う。フランソワーズのパン屋は開業して、連日賑わっていた。仕切りはフェリックス・ブルックが行っており、フランソワーズはパンの種を仕込みに、毎日1時間は店に滞在し、客の反応を楽しんでいた。
「夫の義務だから……ですよね」
フランソワーズは真っ赤になってそういうと、「アガサに湯を用意してもらいます」と小さな声で言って部屋を出ていった。
――しまった。そんな言葉を使うんじゃなかった。
――彼女の心をこちらに振り向かせたいのに、義務で抱くのだと思い込ませてしまった。
僕はニーズベリー城の庭に落ちる赤い夕陽の煌めきを見つめながら、頭を抱えた。
――いや、待てよ?こうなったら告白するなら、結婚式の後の初夜がいいか?もう後戻りできない婚姻契約成立の後に、告白した方がいいだろうか。
――悩ましい。恋とはこういうものだった。でも、恋する人と結婚できるのだから、僕は最高に幸せだ。幸せな悩みだな。
一気に動いた。他にも私の妻となるフランソワーズを不服として、排除する者が現れるのを抑止するためにも、ことを急いだ。
あの日、フランソワーズが短刀と長弓で狙われてから、一気に物事が動いた。ブルク家当主ジャイルズは、自分の駒となる娘を未来の王の花嫁とするために、自分の大事な娘を簡単に暗殺しようとするジットウィンド枢機卿に反旗を翻すことを決断した。
フランソワーズの父のことだが、ブルク家当主ジャイルズが正式に謝罪した。当時、内密にしろというジットウィンド枢機卿の脅迫に屈してしまったことについて、フランソワーズに謝罪したのだ。フランソワーズのラヴォイアの名前を聞いて、フェリックス・ブルックと並ぶフランソワーズを見て思い出したブルク家ジャイルズはすぐに謝罪してくれたのだ。
フランソワーズは泣いて喜んだ。
ブルク家当主ジャイルズは、自分の娘を守るためにスキルを使って身代わりになろうとしたフランソワーズに感謝しており、今後全面的にブルク家が彼女の後ろ盾になり、様々なことをバックアップをすることを約束してくれたのだ。
彼女の母親は良い病院に転院させた。最近は修道院の取り壊しが進み、都市病院の整備を進めている中で、薬種商協会もできた。聖女を国家が認めているのは、スキルを的確に王の内科医も含めて判断する必要があるからだ。悪質な薬や医師や、勝手に医師を名乗るヤブ医者からも民を守る必要があるからだ。
僕とフランソワーズの甘い婚約期間は間もなく終わる。新婚時代に突入する。その前に僕の気持ちをフランソワーズに正式に伝えたいと思っているのだが、彼女はどうも僕に気持ちがないようだ。どう僕を愛してもらえるかを悩んでいる。
愛らしい彼女と過ごすのは最高だ。一緒にいてリラックスしているが、不意に彼女にドキドキする毎日を過ごすのは夢のようだ。
第一聖女ヴィラに対する気持ちはすっかり消えた。彼女は大事な友達には変わりがないが、僕の目の前にいるフランソワーズだけで僕の胸には幸せが満ちる。
ジットウィンド卿が投獄されたあと、証拠となる過去の手紙の発見ですっかり意気投合したダニエルとフランソワーズがニーズベリー城でお酒を飲んで乾杯していた。
夕暮れで赤く染まる空と湖のように広がるお堀がとても美しく見える日だった。酔ったフランソワーズが、上機嫌になったダニエルに馬車を用意して、彼が乗ってきた馬を従者の一人に乗って行ってもらう手筈をして部屋に戻ってきたところで僕は彼女を抱きしめた。
「今日は最後までいいかな?」
彼女は真っ赤になって狼狽えた表情をしたが、小さくうなずいてくれた。
式の準備は着々と進んでいた。愛のない結婚のはずが、僕の方は一方的な愛に溢れている。
気持ちを伝えたい。でも、彼女の気持ちを聞くのが怖かった。
彼女が抱いていた劣等感は、少しずつ改善しているように思う。フランソワーズのパン屋は開業して、連日賑わっていた。仕切りはフェリックス・ブルックが行っており、フランソワーズはパンの種を仕込みに、毎日1時間は店に滞在し、客の反応を楽しんでいた。
「夫の義務だから……ですよね」
フランソワーズは真っ赤になってそういうと、「アガサに湯を用意してもらいます」と小さな声で言って部屋を出ていった。
――しまった。そんな言葉を使うんじゃなかった。
――彼女の心をこちらに振り向かせたいのに、義務で抱くのだと思い込ませてしまった。
僕はニーズベリー城の庭に落ちる赤い夕陽の煌めきを見つめながら、頭を抱えた。
――いや、待てよ?こうなったら告白するなら、結婚式の後の初夜がいいか?もう後戻りできない婚姻契約成立の後に、告白した方がいいだろうか。
――悩ましい。恋とはこういうものだった。でも、恋する人と結婚できるのだから、僕は最高に幸せだ。幸せな悩みだな。
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