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3幕 運命の日
第43話 祝福
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私たちは、支配者貧乏大魔神の頭に、大魔神の長である印の帽子が被せられるのを見ていた。
大魔神の都はお祭り騒ぎだった。
新しい大魔神の長が誕生したのだ。大通りの店という店が賑わい、新しい長の誕生を讃える横断幕があちこちにかかっていて、普段賑やかな都が一層の賑わいを見せていた。
「姉貴、なんだか感慨深いな。」
「不思議な気分よ。きつねに包まれたような心地というのは、こういうものなのかしら?」
私の母にも、一万の攻撃力が授けられ、大富豪の大桜家に昨晩から泊まっていた。
母は、支配者貧乏大魔神が大魔神の長に選出されたことも、うちが大富豪だったことにも、よく飲み込めないほど驚いていた。
これで、実態を知らない家族は私の旦那さんだけになった。
彼は、人間界で働く普通のサラリーマンなので、何も知らない方が身の為だ。
大勢の魔神たちが、新しい大魔神の長の誕生を祝福するために集まっていた。
広場に帽子を被った支配者貧乏大魔神が姿を表すと、祝福モードは最高潮に達した。
「番頭、そろそろ時間です。」
「タクロー、その呼び方やめてよ。」
「姉さん、本当は嬉しい癖に。いやー、フラれて頑張ってきて本当に良かったっすね。」
「冴衞門、毎度毎度うざいわよ。」
「由莉子さん、この度は、マテキの番頭就任おめでとうございます!」
「冴ちゃん、ありがと。」
そうだ、この度の功績が認められて、私はマテキの番頭に就任した。
泣く子も黙る一大勢力のマテキの番頭だ。私は大出世をやってのけた。
ゼニキバの冴衞門も、二つ階級が上がり、タクローも冴子も一つずつ階級が上がった。
宇宙空間で意識が遠のいた中で、誰かが私の頭の中で囁いた。
「由莉子、地球に帰るわよ。」
あれは、最後に、宇宙空間で塵のように舞う私たちを助けにやってきた支配者貧乏大魔神の声なのか、誰の声なのか、いまだに分からない。
だが、私たちと一緒にゴッドライのトランスフォーマーの進化の過程を経験した支配者貧乏大魔神が、最後に私たちを救ったのは間違いなかった。
奴は、意識を失った私たちを全員無事に地球に帰還させた。
その功績が認められて、なんと大魔神の長になってしまった。
「蔵之介さんに顔向けできないわよ。」
「私がついていながら由莉子も綺羅介も死んじゃったらさ。」
意識を取り戻した私に、支配者貧乏大魔神は平然とそう言った。
紫色のフカフカの座布団に座って、お茶をすすりながら、いつもの調子でニタニタしながらそう私に言った。
「ありがとう。」
私は素直に礼を言った。
私は、泣く子も黙る一大勢力のマテキの番頭に就任した。異例の若い番頭の誕生らしい。
いやいや、異例の若い組長があと数年で誕生するはずだから、みんな待っていて、と内心は思っている。
フラれてそれで終わるような私ではないわ。幸せになって、必ず見返してやるわ。
もう、見返したような気がするけど、人生は終わる時まで勝負は分からない。
完
大魔神の都はお祭り騒ぎだった。
新しい大魔神の長が誕生したのだ。大通りの店という店が賑わい、新しい長の誕生を讃える横断幕があちこちにかかっていて、普段賑やかな都が一層の賑わいを見せていた。
「姉貴、なんだか感慨深いな。」
「不思議な気分よ。きつねに包まれたような心地というのは、こういうものなのかしら?」
私の母にも、一万の攻撃力が授けられ、大富豪の大桜家に昨晩から泊まっていた。
母は、支配者貧乏大魔神が大魔神の長に選出されたことも、うちが大富豪だったことにも、よく飲み込めないほど驚いていた。
これで、実態を知らない家族は私の旦那さんだけになった。
彼は、人間界で働く普通のサラリーマンなので、何も知らない方が身の為だ。
大勢の魔神たちが、新しい大魔神の長の誕生を祝福するために集まっていた。
広場に帽子を被った支配者貧乏大魔神が姿を表すと、祝福モードは最高潮に達した。
「番頭、そろそろ時間です。」
「タクロー、その呼び方やめてよ。」
「姉さん、本当は嬉しい癖に。いやー、フラれて頑張ってきて本当に良かったっすね。」
「冴衞門、毎度毎度うざいわよ。」
「由莉子さん、この度は、マテキの番頭就任おめでとうございます!」
「冴ちゃん、ありがと。」
そうだ、この度の功績が認められて、私はマテキの番頭に就任した。
泣く子も黙る一大勢力のマテキの番頭だ。私は大出世をやってのけた。
ゼニキバの冴衞門も、二つ階級が上がり、タクローも冴子も一つずつ階級が上がった。
宇宙空間で意識が遠のいた中で、誰かが私の頭の中で囁いた。
「由莉子、地球に帰るわよ。」
あれは、最後に、宇宙空間で塵のように舞う私たちを助けにやってきた支配者貧乏大魔神の声なのか、誰の声なのか、いまだに分からない。
だが、私たちと一緒にゴッドライのトランスフォーマーの進化の過程を経験した支配者貧乏大魔神が、最後に私たちを救ったのは間違いなかった。
奴は、意識を失った私たちを全員無事に地球に帰還させた。
その功績が認められて、なんと大魔神の長になってしまった。
「蔵之介さんに顔向けできないわよ。」
「私がついていながら由莉子も綺羅介も死んじゃったらさ。」
意識を取り戻した私に、支配者貧乏大魔神は平然とそう言った。
紫色のフカフカの座布団に座って、お茶をすすりながら、いつもの調子でニタニタしながらそう私に言った。
「ありがとう。」
私は素直に礼を言った。
私は、泣く子も黙る一大勢力のマテキの番頭に就任した。異例の若い番頭の誕生らしい。
いやいや、異例の若い組長があと数年で誕生するはずだから、みんな待っていて、と内心は思っている。
フラれてそれで終わるような私ではないわ。幸せになって、必ず見返してやるわ。
もう、見返したような気がするけど、人生は終わる時まで勝負は分からない。
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