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2幕 富士山大魔神を起こすのは、一体誰か?
第25話 武器商人
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やがて、遠くに見えていたキャンプファイアーの炎が近づいてきた。
五十人のプロファイタープロレスラーたちは、緩やかに降下し、キャンプファーに近づいて行った。
草原に、幌馬車は音をたてて着地した。
「これは、これは、みなさんお揃いで。」
私が支配者貧乏大魔神に続いて、御者席から降りると、真っ赤な髪の毛に黒い革ジャンを着た太ったおばさんがやってきた。
異世界の武器商人登場だ。この人の作る豆もやしを食べると、防御力が驚異的に上がるらしく、怪しい仕事を企む輩からの注文が絶えないという噂だ。
「こんばんは。大桜由莉子です。マテキの華取火鳥を務めています。大魔神の長の紹介でやってきました。」
私は一気にそういうと、頭を下げた。
「ミシシッピの豆もやしさんで、お間違いないでしょうか?」
私は、一応確信していたが、そう聞いた。
「あら、私がミシシッピの豆もやしだけど、あんた、今、大桜って言った?あの都一の大富豪の大桜蔵之介さんの娘さん?あなたが?」
「そうです。」
私は、うちが大富豪と言われる事実に、未だ持って慣れない。くすぐったくなってしまう。笑いを堪えて、長からもらっていた紹介状をおばさんに渡した。
「へー、綺羅介坊ちゃんは聞いたことがあったのだけれど、マテキの華取火鳥の娘さんがいたなんて、すごいわ。初耳よ。」
ミシシッピの豆もやしは、そう言って、私を感心したように見た。紹介状を読んだ。
途端に、表情が険しくなった。
そうだろう、そうだろう、その紹介状には、穏やかではないことがしたためられているであろう。
「こんばんは。俺が綺羅介です。」
横から、後ろの幌馬車から降りてきた弟が、豆もやしおばさんに声をかけた。
「あっら、坊ちゃんもご一緒なの。他の方は?」
「あ、五十人ほどのプロファイタープロレスラーです。大桜家であなたに会いに行くために雇いました。」
「あ、そんなの見りゃ分かるわよ。」
「失礼いたしました。こちらは、支配者貧乏大魔神。父、蔵之介に子供の頃からついてくれています。」
「それは、それは、あなたが、あの?」
「ああ、そうざんす。私があの支配者貧乏大魔神ざんす。」
支配者貧乏大魔神は、ミシシッピの豆もやしに丁寧に頭を下げた。めっずらしーと思って、私は薄目で疑わしい視線で支配者貧乏大魔神を見た。
何か企んでるな?
「そして、こちらが、ゼニキバの蓮長の冴衞門と、冴子、そして私と同じマテキのタクローです。」
私は他のメンバーも紹介した。
「あっら、すごい可愛らしい。」
ミシシッピの豆もやしは、冴子に言っているのか、冴衛門に言っているのかわからないテンションでそういった。
間違いなく、タクローに言っているわけではなさそうだ。
「あなたたち二人、最近、運慶にでもされた?」
ミシシッピの豆もやしは、鋭かった。タクローと冴衞門の顔をじっと見てそう言った。
「は、はい。されました。」
「な、なんでそれを?」
タクローと冴衛門は驚いたようにそう言った。
「私、臭いで分かるのよ。」
「そして、あなた、何か炎の匂いがしているわ。」
私はミシシッピの豆もやしにそう言われてドキッとした。
「あ、それはその・・・」
「あなた、火の鳥?」
「そうなんです。実は、先ほど巨人のようなプロレスラープロファイターに襲われまして、追い払おうとしたら、火の鳥に変身しました。」
私は正直に言った。
ミシシッピの豆もやしは、いわゆる武器商人だ。
嘘をついて良い相手ではない。味方になって欲しければ、腹の中は見せるべきだ。
「そういうことか。あなたが追い払ったおかげで、私のところまで辿り着けたわけね。素晴らしい。で、私へのお願い事項は?」
「最近、あなたの豆もやしを大量に買い付けた顧客のリストをいただけますか。」
「防御力を上げる必要があるような、怪しい奴がいなかったか、調べたいんです。」
冴衞門も真剣な顔で言った。
「そうね。まず、私と一緒に食事をしなさい。長旅だったでしょ。もやしスープを振る舞うわ。」
ミシシッピの豆もやしはそう言うと、焚き火を指さした。
鍋が焚き火であっためられていた。
「食べながら、あなたが経路で見たものを、私にも話して見て。」
ミシシッピの豆もやしはそう言うと、防御力が上がるという噂のもやしがたっぷり入ったスープを並々とお椀に注いで、私に渡してくれた。
誰が、富士山大魔神を起こすのか?
その謎解きに、ミシシッピの豆もやしという武器商人も興味を惹かれたらしい。
五十人のプロファイタープロレスラーたちは、緩やかに降下し、キャンプファーに近づいて行った。
草原に、幌馬車は音をたてて着地した。
「これは、これは、みなさんお揃いで。」
私が支配者貧乏大魔神に続いて、御者席から降りると、真っ赤な髪の毛に黒い革ジャンを着た太ったおばさんがやってきた。
異世界の武器商人登場だ。この人の作る豆もやしを食べると、防御力が驚異的に上がるらしく、怪しい仕事を企む輩からの注文が絶えないという噂だ。
「こんばんは。大桜由莉子です。マテキの華取火鳥を務めています。大魔神の長の紹介でやってきました。」
私は一気にそういうと、頭を下げた。
「ミシシッピの豆もやしさんで、お間違いないでしょうか?」
私は、一応確信していたが、そう聞いた。
「あら、私がミシシッピの豆もやしだけど、あんた、今、大桜って言った?あの都一の大富豪の大桜蔵之介さんの娘さん?あなたが?」
「そうです。」
私は、うちが大富豪と言われる事実に、未だ持って慣れない。くすぐったくなってしまう。笑いを堪えて、長からもらっていた紹介状をおばさんに渡した。
「へー、綺羅介坊ちゃんは聞いたことがあったのだけれど、マテキの華取火鳥の娘さんがいたなんて、すごいわ。初耳よ。」
ミシシッピの豆もやしは、そう言って、私を感心したように見た。紹介状を読んだ。
途端に、表情が険しくなった。
そうだろう、そうだろう、その紹介状には、穏やかではないことがしたためられているであろう。
「こんばんは。俺が綺羅介です。」
横から、後ろの幌馬車から降りてきた弟が、豆もやしおばさんに声をかけた。
「あっら、坊ちゃんもご一緒なの。他の方は?」
「あ、五十人ほどのプロファイタープロレスラーです。大桜家であなたに会いに行くために雇いました。」
「あ、そんなの見りゃ分かるわよ。」
「失礼いたしました。こちらは、支配者貧乏大魔神。父、蔵之介に子供の頃からついてくれています。」
「それは、それは、あなたが、あの?」
「ああ、そうざんす。私があの支配者貧乏大魔神ざんす。」
支配者貧乏大魔神は、ミシシッピの豆もやしに丁寧に頭を下げた。めっずらしーと思って、私は薄目で疑わしい視線で支配者貧乏大魔神を見た。
何か企んでるな?
「そして、こちらが、ゼニキバの蓮長の冴衞門と、冴子、そして私と同じマテキのタクローです。」
私は他のメンバーも紹介した。
「あっら、すごい可愛らしい。」
ミシシッピの豆もやしは、冴子に言っているのか、冴衛門に言っているのかわからないテンションでそういった。
間違いなく、タクローに言っているわけではなさそうだ。
「あなたたち二人、最近、運慶にでもされた?」
ミシシッピの豆もやしは、鋭かった。タクローと冴衞門の顔をじっと見てそう言った。
「は、はい。されました。」
「な、なんでそれを?」
タクローと冴衛門は驚いたようにそう言った。
「私、臭いで分かるのよ。」
「そして、あなた、何か炎の匂いがしているわ。」
私はミシシッピの豆もやしにそう言われてドキッとした。
「あ、それはその・・・」
「あなた、火の鳥?」
「そうなんです。実は、先ほど巨人のようなプロレスラープロファイターに襲われまして、追い払おうとしたら、火の鳥に変身しました。」
私は正直に言った。
ミシシッピの豆もやしは、いわゆる武器商人だ。
嘘をついて良い相手ではない。味方になって欲しければ、腹の中は見せるべきだ。
「そういうことか。あなたが追い払ったおかげで、私のところまで辿り着けたわけね。素晴らしい。で、私へのお願い事項は?」
「最近、あなたの豆もやしを大量に買い付けた顧客のリストをいただけますか。」
「防御力を上げる必要があるような、怪しい奴がいなかったか、調べたいんです。」
冴衞門も真剣な顔で言った。
「そうね。まず、私と一緒に食事をしなさい。長旅だったでしょ。もやしスープを振る舞うわ。」
ミシシッピの豆もやしはそう言うと、焚き火を指さした。
鍋が焚き火であっためられていた。
「食べながら、あなたが経路で見たものを、私にも話して見て。」
ミシシッピの豆もやしはそう言うと、防御力が上がるという噂のもやしがたっぷり入ったスープを並々とお椀に注いで、私に渡してくれた。
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