9 / 43
1幕 フラれて出世階段を登り始める
第9話 マテキの組長とエース大桜華取火鳥
しおりを挟む
私の仕事場は、会社といっても通称マテキの大本部だ。
マテキ。それは、魔剣鬼天組の略称だ。泣く子も黙るマテキ。この世界で最大勢力を誇る組だ。
私が会社のビルのロビーに着くと、早速、数人が私を見かけて駆け寄ってきた。
「大桜華取火鳥(オオザクラ カトリカチョウ)!」と口々に言って駆け寄ってきた。
私は組で、華取火鳥を務めていた。これも通称だ。正式には、華基盤取締火長だ。火のおさと書くので、文字通り、ガス等も担当している。華となる基盤とは、水や電気やNW回線や電話回線も担当している。総じてインフラ基盤の課長と言った位置付けだ。
火の鳥と読み替えて通称になっているのは、そんな感じの役職だからで、深い意味はないと思う。
「由莉子ちゃん!大変だよ。」
そう言って駆け寄ってきたのは、先輩の峰やんこと、峰卓郎だ。タクロー先輩と私は呼んでいるが、結構な頻度でタクローと呼び捨てにしている。他の先輩方々は、峰やんと呼んでいるけど。
タクローは、いつものダンディな服装が少しだけ乱れていた。家でくつろいでいたところ、緊急呼び出しがかかって慌てて服を着たのだろう。
「この前のリハは、失敗してなかったと思うけど。」
私はタクローに素早く囁いた。私はしでかしていなかった、つもりだ。
「僕もそう思うんだけどねー」
タクローはちょっと浮かない顔で言って、私が早足でエレベーターに向かうのに一緒についてきた。
「大桜由莉子華取火鳥(オオザクラ ユリコ カトリカチョウ)」
いきなりフルネームと役職で呼ばれて、私は振り返った。
誰ですか?私の名前をフルネームで呼ぶのは。
重鎮がいらっしゃった。空気がピリッとそこだけ締まったかのような緊張感が走った。白髪の威厳のある男性が、高級そうなスーツを着て足早にこちらに歩いてきていた。
おっと組長だ。
組長も呼び出しか。
となるとーーーーー?
私の頭は高速回転した。これは、出世のきっかけとなる大事件勃発か。
私はマテキのエースだ。
泣く子も黙るマテキのエースである私に与えられた華取火鳥のポジションには、相当な裁量が与えられていた。
ここで失敗すれば失脚、目的の成り上がりからは少し遠ざかる。ここで成功すれば大幅昇進も夢ではないという、一大事件が勃発したに違いない。
「おはようございます、組長。」
私は爽やかに切り替えした。あいつに満開の桜の木の下で再開するために、今日は相当に気合を入れておしゃれをしてきていたが、もうおしゃれなんかどうでもいい。
これは、出世のチャンスじゃー!
私は腹をくくった。
どんな大事件が起きようと、成敗してみせるわ。一気に成り上がるために。
2000万世帯で全てが止る事態が起きようとしているー。タクローにそう聞かされたのは、組長とエレベーターを降りて執務室に足早に向かっている時だった。
え?
それって地震?
戦争レベルじゃないか。
マテキ。それは、魔剣鬼天組の略称だ。泣く子も黙るマテキ。この世界で最大勢力を誇る組だ。
私が会社のビルのロビーに着くと、早速、数人が私を見かけて駆け寄ってきた。
「大桜華取火鳥(オオザクラ カトリカチョウ)!」と口々に言って駆け寄ってきた。
私は組で、華取火鳥を務めていた。これも通称だ。正式には、華基盤取締火長だ。火のおさと書くので、文字通り、ガス等も担当している。華となる基盤とは、水や電気やNW回線や電話回線も担当している。総じてインフラ基盤の課長と言った位置付けだ。
火の鳥と読み替えて通称になっているのは、そんな感じの役職だからで、深い意味はないと思う。
「由莉子ちゃん!大変だよ。」
そう言って駆け寄ってきたのは、先輩の峰やんこと、峰卓郎だ。タクロー先輩と私は呼んでいるが、結構な頻度でタクローと呼び捨てにしている。他の先輩方々は、峰やんと呼んでいるけど。
タクローは、いつものダンディな服装が少しだけ乱れていた。家でくつろいでいたところ、緊急呼び出しがかかって慌てて服を着たのだろう。
「この前のリハは、失敗してなかったと思うけど。」
私はタクローに素早く囁いた。私はしでかしていなかった、つもりだ。
「僕もそう思うんだけどねー」
タクローはちょっと浮かない顔で言って、私が早足でエレベーターに向かうのに一緒についてきた。
「大桜由莉子華取火鳥(オオザクラ ユリコ カトリカチョウ)」
いきなりフルネームと役職で呼ばれて、私は振り返った。
誰ですか?私の名前をフルネームで呼ぶのは。
重鎮がいらっしゃった。空気がピリッとそこだけ締まったかのような緊張感が走った。白髪の威厳のある男性が、高級そうなスーツを着て足早にこちらに歩いてきていた。
おっと組長だ。
組長も呼び出しか。
となるとーーーーー?
私の頭は高速回転した。これは、出世のきっかけとなる大事件勃発か。
私はマテキのエースだ。
泣く子も黙るマテキのエースである私に与えられた華取火鳥のポジションには、相当な裁量が与えられていた。
ここで失敗すれば失脚、目的の成り上がりからは少し遠ざかる。ここで成功すれば大幅昇進も夢ではないという、一大事件が勃発したに違いない。
「おはようございます、組長。」
私は爽やかに切り替えした。あいつに満開の桜の木の下で再開するために、今日は相当に気合を入れておしゃれをしてきていたが、もうおしゃれなんかどうでもいい。
これは、出世のチャンスじゃー!
私は腹をくくった。
どんな大事件が起きようと、成敗してみせるわ。一気に成り上がるために。
2000万世帯で全てが止る事態が起きようとしているー。タクローにそう聞かされたのは、組長とエレベーターを降りて執務室に足早に向かっている時だった。
え?
それって地震?
戦争レベルじゃないか。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
娘のように、兄のように
長岡更紗
恋愛
とある国で知り合った戦争孤児の女の子を、ロレンツォが保護をした。
騎士を目指す田舎出身の貧乏兵士が、苦労しながらも女の子を必死に育て上げる。
少女を娘のように可愛がるロレンツォと、ロレンツォを兄のように慕う少女の、いつしか恋に落ちて行くお話。
序盤ロレンツォ視点、後半少女視点。
イラスト/田中桔梗さま
著者:長岡更紗
小説家になろう、マグネット! にて重複投稿しています。
閉じ込められた幼き聖女様《完結》
アーエル
ファンタジー
「ある男爵家の地下に歳をとらない少女が閉じ込められている」
ある若き当主がそう訴えた。
彼は幼き日に彼女に自然災害にあうと予知されて救われたらしい
「今度はあの方が救われる番です」
涙の訴えは聞き入れられた。
全6話
他社でも公開
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる