62 / 64
第三章 幸せに
新しい世界 ディアーナSide(1)
しおりを挟む
1867年7月4日、ザックリードハルトの皇太子妃のディアーナ。最初の約束通りにロクセンハンナ家末裔の3兄妹の望みを叶えようとする。アルベルト側は恋の成仏に至る。
*********
翌朝、小学校に行くロミィとアダムに私とルイは計画を共有した。今日、学校から帰ってきたら計画を実行すると告げた時の二人の顔はポカンとした後に、嬉しそうな表情になったが、すぐに眉間にシワが寄った。
「ディアーナ姉様は一度死んだのよね。ルイ兄様に聞いたのよ。やり直しても5日も眠り続けて目を覚まさなかったわ」
「そうだよ、僕らは自分たちが無謀な計画にディアーナ姉様を巻き込んでしまったと思って後悔したんだ。だから、禁書を返しに行ったんだ」
「大丈夫よ。あの時は数億年前の地球に戻ってしまったけれど、今回は6年前に戻るだけだから」
ブルネット髪を三つ編みにしたロミィは、期待にブラウンの瞳を輝かせた。
「本当に?」
「えぇ、本当よ。1861年の何月何日が良いの?1860年でもいいわよ」
「1861年のエイブラハム・リンカーンが大統領に選ばれた3月4日にお母様は亡くなったのよ。だから2月の初めがいいわ。1861年2月1日でお願い。アダム、いいわよね?」
「うん、1ヶ月前はまだお母様は元気だったんだよ」
「急な病気で亡くなったの」
「そうなのね、では学校から帰っておやつを食べたら1861年の2月1日のこの宮殿に行ってみましょう」
ロミィとアダムは元気に学校に行った。
私とルイの結婚式は大々的に新聞で報じられていた。
私は宮殿に招待客として泊まっていたアルベルト王太子とフェリクス殿下と王妃を訪ねた。3人はすっかり穏やかな表情になり、パリに立ち寄って帰ると話していた。
私は秋のエイトレンスの宮殿の部屋で見かけたパリの百貨店のカレンダーを思い出した。ひどい気分で「生きていたくない」と私が落ち込んで3ヶ月先の未来まで無意識に時間を移動した時にルイと見た光景だ。
――そうなのね、このタイミングであのパリの百貨店のカレンダーを手に入れるのかもしれないわ。
「ディアーナ、それにしても昨日はとても綺麗だったよ、改めておめでとう」
「ありがとうございます、アルベルトさま」
私はアルベルト王太子に大事な話をしなければならない。2人だけで話をしたいとして、部屋の外にアルベルト王太子に出てきてもらったのだ。
「マリー王女のピエモント国のシェルダンという男性をご存知ですか?」
「あぁ、シェルダンとは最近知り合ったばかりだが、どうした?」
「チリの硝石のことをアルベルトさまにお話しされてませんでしたか?」
「確かに話した。火薬の原料だし、良い話だと思うが」
「チリに問題はありませんが、1年か2年以内に大きな地震がございまして、甚大な被害が出ます。どうか、お気をつけください。しばらくチリには行かれないようにお願いします」
アルベルト王太子はポカンと口を開けて私を見つめた。みるみる顔が真っ赤になり、上の天井の方をさっと見上げたまま固まり、しばらくずっと上を見上げていた。こちらを見た時には涙が浮かべていた。何かに耐えているかのような表情だ。
「いかがなされましたか、アルベルトさま?」
アルベルト王太子はようやく口をもごもご動かして小さなかすれ声で言った。
「ディアーナが俺のことを心配して言ってくれるなんて……?」
私は拍子抜けして後ずさった。
「だって友達だから。知り合いだから。と言いましょうか、あなたさまには死んでほしくないと申し上げましたよね。アルベルトさまは私より先に死んでほしくない方たちのお一人です。普通に元気に生きていてほしいです。地球のどこかで、ですよ?」
私の言葉にまぁと曖昧な表情を浮かべたアルベルト王太子は胸に手を当てて、泣きそうな顔でうんうんとうなずいて「ありがとう」と言って私を見つめて泣いた。
「俺たち、いい関係になれそうだな。俺たちの間の関係は成長しそうだ」
「ど……?どういう?」
「健全ないい関係ということだよ、ディアーナ。ほんっとうにありがとう!さっきの言葉だけで100年生きられる気がするよ。本当にありがたい気持ちだ。恋が成仏できるよ」
アルベルト王太子は「気を付ける」と私に力強く約束してくれたので、私は逃げるように自分の部屋に戻った。
恋が成仏できると言ってくれたのは、何となく理解できる。前進したのだ。
このザックリードハルトの宮殿では皇太子妃の部屋があった。皇帝陛下が私のためだけに準備を進めておいてくれたものだ。砂漠のアリス・スペンサー邸宅から何も持たずにやってきたので、色々準備されているのは大変ありがたかった。私は護符と石膏チョーク数本としか持ってきていなかったのだから。コリアンダーならば、ザックリードハルトの厨房にもあるので問題なかったが。
ルイは最近ずっとサボっていた魔術大学に顔を出すために、ロミィとアダムと会話したあとはずっと不在だった。
レイトンとテレサとミラも快適に過ごしているようだったので、3人にしばらく自由時間にしてほしいと伝えると、ものすごく喜ばれた。レイトンは父であるブランドン公爵と一緒にザックリードハルトの都を散策するそうだ。テレサとミラはちょっとした化粧品を買いに行くそうだ。
私は4人を送り出すと、夕方には1861年2月1日に移動することになっているので数時間仮眠を取ることにした。
目を覚ますとお昼時だった。戻ってきたテレサとミラからザックリードハルトの素晴らしい屋台の話を聞きながら、皇帝陛下と一緒に昼食を食べた。皇太子妃のために用意された昼食は贅沢なものだった。
「皇帝陛下にお話がございます」
「おぉ、ディアーナ。なんでも話して欲しい。何か必要なものがあるか?」
「いえ、十分でございます。本当にここまでご準備いただきまして感謝しかございません」
「実はルイのお母様に本日ご挨拶してこようと思いまして。ロミィとアダムが小学校から戻りましたら、1861年2月1日に行ってきます。ご挨拶をしましたらすぐにまた戻って参ります」
「ロミィに頼まれたんだな?」
「そうです。最初に私たちが出会ったのは、皆さんがお母様にお会いしたたくて取った行動によるものなのです。詳しくは言えませんが」
「分かった。妻に伝言をお願いしたい。みな、立派に成長しているから安心してくれと」
「分かりました。お伝えしますわ」
皇帝陛下は遠くを見つめる顔になったが、穏やかに昼食を終えた。
*********
翌朝、小学校に行くロミィとアダムに私とルイは計画を共有した。今日、学校から帰ってきたら計画を実行すると告げた時の二人の顔はポカンとした後に、嬉しそうな表情になったが、すぐに眉間にシワが寄った。
「ディアーナ姉様は一度死んだのよね。ルイ兄様に聞いたのよ。やり直しても5日も眠り続けて目を覚まさなかったわ」
「そうだよ、僕らは自分たちが無謀な計画にディアーナ姉様を巻き込んでしまったと思って後悔したんだ。だから、禁書を返しに行ったんだ」
「大丈夫よ。あの時は数億年前の地球に戻ってしまったけれど、今回は6年前に戻るだけだから」
ブルネット髪を三つ編みにしたロミィは、期待にブラウンの瞳を輝かせた。
「本当に?」
「えぇ、本当よ。1861年の何月何日が良いの?1860年でもいいわよ」
「1861年のエイブラハム・リンカーンが大統領に選ばれた3月4日にお母様は亡くなったのよ。だから2月の初めがいいわ。1861年2月1日でお願い。アダム、いいわよね?」
「うん、1ヶ月前はまだお母様は元気だったんだよ」
「急な病気で亡くなったの」
「そうなのね、では学校から帰っておやつを食べたら1861年の2月1日のこの宮殿に行ってみましょう」
ロミィとアダムは元気に学校に行った。
私とルイの結婚式は大々的に新聞で報じられていた。
私は宮殿に招待客として泊まっていたアルベルト王太子とフェリクス殿下と王妃を訪ねた。3人はすっかり穏やかな表情になり、パリに立ち寄って帰ると話していた。
私は秋のエイトレンスの宮殿の部屋で見かけたパリの百貨店のカレンダーを思い出した。ひどい気分で「生きていたくない」と私が落ち込んで3ヶ月先の未来まで無意識に時間を移動した時にルイと見た光景だ。
――そうなのね、このタイミングであのパリの百貨店のカレンダーを手に入れるのかもしれないわ。
「ディアーナ、それにしても昨日はとても綺麗だったよ、改めておめでとう」
「ありがとうございます、アルベルトさま」
私はアルベルト王太子に大事な話をしなければならない。2人だけで話をしたいとして、部屋の外にアルベルト王太子に出てきてもらったのだ。
「マリー王女のピエモント国のシェルダンという男性をご存知ですか?」
「あぁ、シェルダンとは最近知り合ったばかりだが、どうした?」
「チリの硝石のことをアルベルトさまにお話しされてませんでしたか?」
「確かに話した。火薬の原料だし、良い話だと思うが」
「チリに問題はありませんが、1年か2年以内に大きな地震がございまして、甚大な被害が出ます。どうか、お気をつけください。しばらくチリには行かれないようにお願いします」
アルベルト王太子はポカンと口を開けて私を見つめた。みるみる顔が真っ赤になり、上の天井の方をさっと見上げたまま固まり、しばらくずっと上を見上げていた。こちらを見た時には涙が浮かべていた。何かに耐えているかのような表情だ。
「いかがなされましたか、アルベルトさま?」
アルベルト王太子はようやく口をもごもご動かして小さなかすれ声で言った。
「ディアーナが俺のことを心配して言ってくれるなんて……?」
私は拍子抜けして後ずさった。
「だって友達だから。知り合いだから。と言いましょうか、あなたさまには死んでほしくないと申し上げましたよね。アルベルトさまは私より先に死んでほしくない方たちのお一人です。普通に元気に生きていてほしいです。地球のどこかで、ですよ?」
私の言葉にまぁと曖昧な表情を浮かべたアルベルト王太子は胸に手を当てて、泣きそうな顔でうんうんとうなずいて「ありがとう」と言って私を見つめて泣いた。
「俺たち、いい関係になれそうだな。俺たちの間の関係は成長しそうだ」
「ど……?どういう?」
「健全ないい関係ということだよ、ディアーナ。ほんっとうにありがとう!さっきの言葉だけで100年生きられる気がするよ。本当にありがたい気持ちだ。恋が成仏できるよ」
アルベルト王太子は「気を付ける」と私に力強く約束してくれたので、私は逃げるように自分の部屋に戻った。
恋が成仏できると言ってくれたのは、何となく理解できる。前進したのだ。
このザックリードハルトの宮殿では皇太子妃の部屋があった。皇帝陛下が私のためだけに準備を進めておいてくれたものだ。砂漠のアリス・スペンサー邸宅から何も持たずにやってきたので、色々準備されているのは大変ありがたかった。私は護符と石膏チョーク数本としか持ってきていなかったのだから。コリアンダーならば、ザックリードハルトの厨房にもあるので問題なかったが。
ルイは最近ずっとサボっていた魔術大学に顔を出すために、ロミィとアダムと会話したあとはずっと不在だった。
レイトンとテレサとミラも快適に過ごしているようだったので、3人にしばらく自由時間にしてほしいと伝えると、ものすごく喜ばれた。レイトンは父であるブランドン公爵と一緒にザックリードハルトの都を散策するそうだ。テレサとミラはちょっとした化粧品を買いに行くそうだ。
私は4人を送り出すと、夕方には1861年2月1日に移動することになっているので数時間仮眠を取ることにした。
目を覚ますとお昼時だった。戻ってきたテレサとミラからザックリードハルトの素晴らしい屋台の話を聞きながら、皇帝陛下と一緒に昼食を食べた。皇太子妃のために用意された昼食は贅沢なものだった。
「皇帝陛下にお話がございます」
「おぉ、ディアーナ。なんでも話して欲しい。何か必要なものがあるか?」
「いえ、十分でございます。本当にここまでご準備いただきまして感謝しかございません」
「実はルイのお母様に本日ご挨拶してこようと思いまして。ロミィとアダムが小学校から戻りましたら、1861年2月1日に行ってきます。ご挨拶をしましたらすぐにまた戻って参ります」
「ロミィに頼まれたんだな?」
「そうです。最初に私たちが出会ったのは、皆さんがお母様にお会いしたたくて取った行動によるものなのです。詳しくは言えませんが」
「分かった。妻に伝言をお願いしたい。みな、立派に成長しているから安心してくれと」
「分かりました。お伝えしますわ」
皇帝陛下は遠くを見つめる顔になったが、穏やかに昼食を終えた。
13
お気に入りに追加
287
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】追い詰められた悪役令嬢、崖の上からフライング・ハイ!
采火
ファンタジー
私、アニエス・ミュレーズは冤罪をかけられ、元婚約者である皇太子、義弟、騎士を連れた騎士団長、それから実の妹に追い詰められて、同じ日、同じ時間、同じ崖から転落死するという人生を繰り返している。
けれどそんな死に戻り人生も、今日でおしまい。
前世にはいなかった毒舌従者を連れ、アニエスの脱・死に戻り人生計画が始まる。
※別サイトでも掲載中
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」
***
ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。
しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。
――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。
今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。
それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。
これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。
そんな復讐と解放と恋の物語。
◇ ◆ ◇
※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。
さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。
カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。
※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。
選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。
※表紙絵はフリー素材を拝借しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる