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第三章 幸せに

最初の取り決め ディアーナSide

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 二人でしばらく抱き合っていた後に、私は明日の計画について話し始めた。ずっと考えていたことだ。


「私達の最初の取り決めについて覚えているでしょう?私が禁書を解析して過去に戻る作戦を立てる協力をする代わりに、ザックリードハルトで私達の食料調達をあなたに手伝ってもらう取り決めよ」
「あぁ、覚えているよ。でも、そのせいで君は一度死んでしまったんだ。僕らは君をこれ以上巻き込みたくなくて禁書を返したんだ」

 私は踏み込んだ。ルイはもう夫だ。遠慮なく言わせてもらおう。

「私は過去に戻った時に1つのパラメータを指定していないわ」
「そうだったね」
「やり直し他時に、『ブルクトゥアタ』が過去を大きく変えられないという点を考慮して、最低限の変更にしたのよ」
「うん」

 ルイは多分、私が何を言い出すかわかっていて、先ほどまでの頬を上気させた表情から、警戒したような心配したような表情に変わっている。ブロンドの奥の瞳が切ない影を宿している。

「私はもう、禁書は要らないの。おそらく私は時間操作をマスターしたということなのよ。結婚式の最中に起きた突発的な魔力の暴発のようなもので未来に行ってしまうことはあるけれども、過去に戻ることについてはおそらくマスターしているの。だから、あなたたち3兄妹が危険をおかしてまで闇の禁書を盗み出してやろうとしたことを私は実現しようと思うの」

「ダメだ!二度と君を失いたくないんだ」
「ルイ、聞いて欲しいの。私はアルベルトにフラれた時に悟ったことがあるの。私にはバケモノみたいな魔力があるわ。それをずっとアルベルトにも隠していたのよ。私は私のままであなたにも、あなたの家族にも接したいの。私ができることは私がしてあげたいの」

 私は気に入られようとして、可愛い令嬢のフリをしようとして、アルベルト王太子にずっと隠していたことがあった。本当の自分自身を偽って見せていたのだ。自分のままぶつかってフラれたのならば、多分、色んな後悔が少なかったかもしれない。

 私自身を隠すことなく全開にしたら、アルベルト王太子は追ってきたのだから。

 だからと言ってアルベルト王太子と結ばれたかったということでは決してない。

 私はルイとの間で失敗したくないのだ。彼は私の全開の状態でも受け入れてくれたのだから。これからも私は私にできることはしたいのだ。

 本来の私がしたいのだ。
 この魔力を人のために使いたい。
 過去の人生で多くの人が一度に一気に命やそれまでの人生を失うのを見た。私は生きている時代が違うので、彼らや子供達を助けてあげることができない。このバケモノのような力は、今の時代にあっても、出し惜しみをしていたら、真剣に使うことをしなければ、本気でこの魔力を使おうとしなければダメだと思うのだ。

 私には才能なんてない。でも、一度も人のために自分の持っている魔力を本気で使ったことがなかった。最初の取り決めにフォーカスを当てるならば、ルイのやりたいことと、私のやりたいことはおそらく噛み合う。だから、私はやりたい。

「義理の父になった皇帝陛下に聞いたの。あなたたちのお母様は6年前に病気で亡くなったのね。過去に行ってロミィとアダムとあなたをお母様に会わせてあげることはできるわ。数億年前の地球に戻るのとは訳が違うわ。きっとできるわ」

「ディアーナ、本当に君を失いたくないんだ」
「約束するわ。今回の件は無事にやり抜くわ」
「一応、ブルクトゥアタとしては長椅子を持っていくよ」

「ありがとう。認めてくれて本当に嬉しい。あなたのお母様にご挨拶するのよ。あなたの妻ですって。楽しみでワクワクするの」

 私たちは指を絡めて手を握り合い、温かなキスをした。

 ルイはアルベルト王太子とはまるで違う。私は自分を隠さずに自分自身でいられる人を夫にしたのだ。

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