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第二章 恋(もうあなたに騙されません)
色香 ディアーナSide
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「わかった。王座なぞいらない」
突然そう吐き捨てるように言ったアルベルト王太子が私の方に歩いてきた。彼の視線で殺されると思うほどの迫力で、私は思わずたじたじと後ろに後ずさった。
ロミィが私とルイの間に立っていて、ロミィが「魔力で身を守って」と私にそっとささやいた。
アルベルト王太子は破壊力抜群の、例の艶っぽさ全開になっている。私の手が届かなかったあの色気を纏い、冷たいのに温かい、どこかやさぐれているようで貴公子のような色気で艶かしい仕草で頭を振り、ブロンドの髪を無造作に靡かせて私に歩いてやってくる。私は気づくと宮殿の廊下の壁に背中を阻まれて、アルベルト王太子の両手の中に閉じ込められていた。
彼の息がかかるほど接近している。
「いい?ディアーナ、君がどんなに認めなくても、俺は本気で君が欲しい。君を愛している」
彼の指が私の頬を撫でてそのまま顎をすっと優しく持ち上げられた。青い瞳が切なげな艶っぽさで私を見つめている。
――本気だわ。
私の心は持っていかれないようにと自分に必死に言い聞かせるが、切ない涙がどうしても込み上げてきた。
「なぜ、私の親友のエミリーなの?」
私ははからずも泣いてしまっていた。
その言葉に一瞬顔を歪ませて目を伏せたアルベルト王太子は唇を真一文字に結んで、唇を振るわせた。
「ごめん……ごめん……ディアーナ、本当にごめん」
アルベルト王太子は私の顎を撫であげて上向かせて、私の目が真っ直ぐに自分の目と合うようにした。彼は私の目をのぞき込んでいて、私の感情の揺れを感じようとしているようだ。彼の両手が私の髪を撫で、私の顔をそっと包み込んだ。
――だめだ。彼に触れるのを許してしまっている……。
「君の親友のエミリーだったね。俺が本当にバカだった。それでこんなに怒って、ザックリードハルトの若造と寝ようとしているの?」
艶っぽい色気ダダ漏れのアルベルト王太子は、さっき取り乱して床に崩れ落ちた時にシャツのボタンを自分で外してしまったらしい。彼の鎖骨から下の胸板まで私の目の前に見えて、大人の魅力で私に迫ってきていた。
「バッカじゃないのっ!」
私は思いっきりアルベルト王太子の頬を平手打ちした。私に対しても猛烈に腹が立った。自分が恋焦がれていたアルベルト王太子が持ち前の真骨頂の色気を醸し出しただけで、あっさり触れるのを許すなんて。
最悪だ。
『ザックリードハルトの若造と寝ようとしているの?』
一体どの口からそんな言葉がっ!?
1867年は大政奉還の年だ。19世紀は絶対的な王座を維持するには、もはや難しい世の中なのだ。フランスだってとっくにルイ16世は処刑されている。前世の世界でそれを知らない者はいない。マリーアントワネットの夫だから。王太子の妻になるということを夢見るダサい女の子が私だと思い込んでいるアルベルトには、心底がっかりだ。だが、彼の裏切りを知るまで、私は本当にそういう女性だったのだ、きっと。
バケモノみたいな魔力を隠して、可愛い小さな魔力しかない公爵令嬢のフリをアルベルトにしていたのは私だ。
「痛っ!」
私にぶたれた氷の貴公子様はブロンドの髪をふりかざして、赤く腫れ上がった頬を抑えて驚いた表情で私を見つめた。信じられないといった表情で私を見つめている。
「今、いい感じだったよね?ディアーナは俺にフラッときたよね?気のせいか?」
アルベルト王太子はブロンドの髪を無造作にかきあげて、私の目を見つめ返して話し続けた。
「今、俺に抱かれてもいいって思ったよね?俺の魅力がやっぱり好きでしょう?」
最後は低い声でささやかれた。背中がゾクゾクするような色気を滲ませている。この高低差のある感じは、ザックリードハルトまで追いかけてきて彼が初めて見せるものだ。今までで初めて見たアルベルト王太子の姿だ。無邪気な子供っぽさと、危険なまでの大人の艶っぽさを無自覚に自由に出し惜しみなく私にぶつけてくる。
私は氷の貴公子様の急所を思いっきり膝蹴りした。
「あぁっんっ!!」
もんどり打って転げ回るアルベルト王太子に私は「ごめん遊ばせ」と小さく囁き、走り寄ってきたジャックが「お見事!」と私に囁いてうなずいたのを横目に、「あとはお願い」とささやいて離れた。
「さあ、目を覚ましてくださいっ!王座は要らないと仰っても、最愛の女性は手に入らぬのです。色々間違えています」
ジャックはアルベルト王太子を支えて起き上がらせている。
「ますます惚れたっ!」
毅然とした態度でルイの元に行った私の背中をびっくりするような大声が追いかけてきて、私はビクッとして足を止めて振り返った。
「ディアーナ、ますます君に惚れた。1週間猶予があるということだ。君がその男のモノになるまで俺は諦めないっ!」
「兄さんっ!」
フェリクス殿下がたまらず止めに入った。
――わかったわ。1週間も猶予なんてあげない。
「豪華な寝台列車の旅でエイトレンスにお帰りください。試験運行の結果、素晴らしい寝台特急が大陸を横断する日を楽しみにしておりますわ。将来、寝台列車に乗るたびにアルベルトさまのおかげだと感謝することを確信しております」
私はにこやかに微笑んでアルベルト王太子に言った。
「あぁー、ディアーナ!分かった。1週間も猶予なく、顔だけハンサムなこの若造に全てをあげようと今決めたな!?」
私の心を的確に読むのはやめて欲しい。
――なぜ私が心で思ったことがバレたの?
「君のことを愛しているから、君の考えが手に取るようにわかるのさ」
――ストーカーなの?わけ分からない。
私は前の人生で知っていた知識をアルベルト王太子の言動に当てはめようとして首を傾げてアルベルト王太子を見つめた。
「ディアーナ、彼への当てつけで俺と結婚しようと思っているわけじゃないと分かっているから」
アルベルト王太子をいぶかしげに見つめる私に、そっとルイがささやいた。
「でも、1週間を待たずに既成事実を作るのは大歓迎だ」
ルイはそっとロミィに聞こえないぐらいの声で私の耳元に囁いた。ロミィはルイが何をささやいたのかと眉を顰めて兄のルイを見た。腕組みをして、少し怒った表情だ。
「ねぇ、早く過去に行きましょうよ。例のブツを博物館に返さない……「ゲーホッ!ゲーホッ!」もう!アダムったら、何?」
ロミィが『時を操る闇の禁書』に言及しようとした途端に、そばに近づいてきていたアダムがわざとらしく咳き込んだ。
「何を返すんだ?そして今どこに行くと行った?」
「ダニエル、それはその……」
ロミィはそばに近づいてきていたダニエルが話を聞いていたことに今やっと気づいたらしく、ハッとした表情で口ごもった。
私は素早く宮殿の床にポケットから取り出した石膏チョークで五芒星を描いた。19世紀初頭にフランスで生まれた石膏チョークは、今のチョークの元祖だ。建物内の床に八芒星や五芒星を描くときは、私はこれを重宝しているのだ。
ロミィは長椅子を素早く五芒星の中に入れた。ルイもだ。アダムはロミィの長椅子に飛び乗った。この時急いでいた私たちは、周囲の反応をよく見ていなかった。
「逃げられてたまるかっ!」
アルベルト王太子とそれを止めようと追ってきたジャックが五芒星の中に飛び込むのと、ダニエルが飛び込むのはほぼ同じだった。私はすでに呪文を唱えていた。
灼熱の砂漠のアリス・スペンサー邸宅では、執事のレイトンとテレサとミラが、ザックリードハルトの皇太子とブランドン公爵令嬢の結婚式はいつと決まったのか、その大変な一大イベントを知るために、今か今かと首を長くして私の帰りを待っていた。
アリス・スペンサー邸宅の2階の客間には、過去に行くための八芒星と護符が準備されている。
私たちの登場は、執事のレイトンとテレサとミラの予想を遥かに超えていた。
「アルベルト王太子様っ!」
悲鳴のようなレイトンの声がアリス・スペンサー邸宅に響いたのだ。
突然そう吐き捨てるように言ったアルベルト王太子が私の方に歩いてきた。彼の視線で殺されると思うほどの迫力で、私は思わずたじたじと後ろに後ずさった。
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アルベルト王太子は破壊力抜群の、例の艶っぽさ全開になっている。私の手が届かなかったあの色気を纏い、冷たいのに温かい、どこかやさぐれているようで貴公子のような色気で艶かしい仕草で頭を振り、ブロンドの髪を無造作に靡かせて私に歩いてやってくる。私は気づくと宮殿の廊下の壁に背中を阻まれて、アルベルト王太子の両手の中に閉じ込められていた。
彼の息がかかるほど接近している。
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彼の指が私の頬を撫でてそのまま顎をすっと優しく持ち上げられた。青い瞳が切なげな艶っぽさで私を見つめている。
――本気だわ。
私の心は持っていかれないようにと自分に必死に言い聞かせるが、切ない涙がどうしても込み上げてきた。
「なぜ、私の親友のエミリーなの?」
私ははからずも泣いてしまっていた。
その言葉に一瞬顔を歪ませて目を伏せたアルベルト王太子は唇を真一文字に結んで、唇を振るわせた。
「ごめん……ごめん……ディアーナ、本当にごめん」
アルベルト王太子は私の顎を撫であげて上向かせて、私の目が真っ直ぐに自分の目と合うようにした。彼は私の目をのぞき込んでいて、私の感情の揺れを感じようとしているようだ。彼の両手が私の髪を撫で、私の顔をそっと包み込んだ。
――だめだ。彼に触れるのを許してしまっている……。
「君の親友のエミリーだったね。俺が本当にバカだった。それでこんなに怒って、ザックリードハルトの若造と寝ようとしているの?」
艶っぽい色気ダダ漏れのアルベルト王太子は、さっき取り乱して床に崩れ落ちた時にシャツのボタンを自分で外してしまったらしい。彼の鎖骨から下の胸板まで私の目の前に見えて、大人の魅力で私に迫ってきていた。
「バッカじゃないのっ!」
私は思いっきりアルベルト王太子の頬を平手打ちした。私に対しても猛烈に腹が立った。自分が恋焦がれていたアルベルト王太子が持ち前の真骨頂の色気を醸し出しただけで、あっさり触れるのを許すなんて。
最悪だ。
『ザックリードハルトの若造と寝ようとしているの?』
一体どの口からそんな言葉がっ!?
1867年は大政奉還の年だ。19世紀は絶対的な王座を維持するには、もはや難しい世の中なのだ。フランスだってとっくにルイ16世は処刑されている。前世の世界でそれを知らない者はいない。マリーアントワネットの夫だから。王太子の妻になるということを夢見るダサい女の子が私だと思い込んでいるアルベルトには、心底がっかりだ。だが、彼の裏切りを知るまで、私は本当にそういう女性だったのだ、きっと。
バケモノみたいな魔力を隠して、可愛い小さな魔力しかない公爵令嬢のフリをアルベルトにしていたのは私だ。
「痛っ!」
私にぶたれた氷の貴公子様はブロンドの髪をふりかざして、赤く腫れ上がった頬を抑えて驚いた表情で私を見つめた。信じられないといった表情で私を見つめている。
「今、いい感じだったよね?ディアーナは俺にフラッときたよね?気のせいか?」
アルベルト王太子はブロンドの髪を無造作にかきあげて、私の目を見つめ返して話し続けた。
「今、俺に抱かれてもいいって思ったよね?俺の魅力がやっぱり好きでしょう?」
最後は低い声でささやかれた。背中がゾクゾクするような色気を滲ませている。この高低差のある感じは、ザックリードハルトまで追いかけてきて彼が初めて見せるものだ。今までで初めて見たアルベルト王太子の姿だ。無邪気な子供っぽさと、危険なまでの大人の艶っぽさを無自覚に自由に出し惜しみなく私にぶつけてくる。
私は氷の貴公子様の急所を思いっきり膝蹴りした。
「あぁっんっ!!」
もんどり打って転げ回るアルベルト王太子に私は「ごめん遊ばせ」と小さく囁き、走り寄ってきたジャックが「お見事!」と私に囁いてうなずいたのを横目に、「あとはお願い」とささやいて離れた。
「さあ、目を覚ましてくださいっ!王座は要らないと仰っても、最愛の女性は手に入らぬのです。色々間違えています」
ジャックはアルベルト王太子を支えて起き上がらせている。
「ますます惚れたっ!」
毅然とした態度でルイの元に行った私の背中をびっくりするような大声が追いかけてきて、私はビクッとして足を止めて振り返った。
「ディアーナ、ますます君に惚れた。1週間猶予があるということだ。君がその男のモノになるまで俺は諦めないっ!」
「兄さんっ!」
フェリクス殿下がたまらず止めに入った。
――わかったわ。1週間も猶予なんてあげない。
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私はにこやかに微笑んでアルベルト王太子に言った。
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私の心を的確に読むのはやめて欲しい。
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「ディアーナ、彼への当てつけで俺と結婚しようと思っているわけじゃないと分かっているから」
アルベルト王太子をいぶかしげに見つめる私に、そっとルイがささやいた。
「でも、1週間を待たずに既成事実を作るのは大歓迎だ」
ルイはそっとロミィに聞こえないぐらいの声で私の耳元に囁いた。ロミィはルイが何をささやいたのかと眉を顰めて兄のルイを見た。腕組みをして、少し怒った表情だ。
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「ダニエル、それはその……」
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私は素早く宮殿の床にポケットから取り出した石膏チョークで五芒星を描いた。19世紀初頭にフランスで生まれた石膏チョークは、今のチョークの元祖だ。建物内の床に八芒星や五芒星を描くときは、私はこれを重宝しているのだ。
ロミィは長椅子を素早く五芒星の中に入れた。ルイもだ。アダムはロミィの長椅子に飛び乗った。この時急いでいた私たちは、周囲の反応をよく見ていなかった。
「逃げられてたまるかっ!」
アルベルト王太子とそれを止めようと追ってきたジャックが五芒星の中に飛び込むのと、ダニエルが飛び込むのはほぼ同じだった。私はすでに呪文を唱えていた。
灼熱の砂漠のアリス・スペンサー邸宅では、執事のレイトンとテレサとミラが、ザックリードハルトの皇太子とブランドン公爵令嬢の結婚式はいつと決まったのか、その大変な一大イベントを知るために、今か今かと首を長くして私の帰りを待っていた。
アリス・スペンサー邸宅の2階の客間には、過去に行くための八芒星と護符が準備されている。
私たちの登場は、執事のレイトンとテレサとミラの予想を遥かに超えていた。
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