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第二章 恋(もうあなたに騙されません)

仕返し ディアーナSide(2)

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 私はそのままソファにルイを誘導して、アルベルト王太子に背を向けた状態で、ルイをソファにそっと押し倒した。そしてルイの上に馬乗りになった。驚いて私を見つめるルイが何かを言いかけたのを、右手の人差し指をそっとルイの唇に当てた。ルイは言葉を飲み込んで、私を見つめている。

 私はそのままドレスの上に羽織っていた薄いボレロを脱いだ。初夏だ。灼熱の砂漠のアリススペンサー宅は冷房が効いているが、ここは基本的には灼熱なのだ。私は首の後ろで結ぶホルターネックドレスを着ていた。数日前に購入したモスリンの生地で私が簡単に作ったものだ。前世の記憶から、これが一番楽に作れると知っていた。

 この時代には早すぎるデザインだと私は知っているが、非常に刺激的なデザインのドレスは今のような時にピッタリだった。ルイが目を丸くして私を見つめて、うっとりとした表情になった。私に目が釘付けだ。アルベルト王太子は叫んだ。

「ディアーナ、頼むから脱がないでくれっ!脱ぐなっ!」

 背中が大きく開いているので、上半身に何も着ていないように見えるはずだ。私はワイン色の髪の毛をかきあげて、首の後ろのホルターネックドレスのリボンをスルっと解いた。はらりとホルターネックドレスが落ちてきて、私の体がルイの目の前で明らかとなった。

 私は長い髪の毛をかきあげたまま、ちょっと横を向いて、アルベルト王太子によく聞こえるようにささやいた。

「私が全てを捧げるのはルイなのよ。諦めて。あなたのことなんて、私の全てを捧げる価値もない男だと思っていたわ」

 私はそのまま前屈みになり、仰向けになったまま目を輝かせて私を夢中で見つめているルイの唇に私の唇を重ねた。ルイの手が私の裸の背中に回った。

「うわーっ!ぎゃあっ!やめてくれっ!頼む!俺が本当に悪かったんだ!ディアーナ、君のことを心底愛しているんだ。他のやつに取られるなんて……」

 アルベルト王太子は泣き出した。


「いやっあぁっ……んあぁっ……あぁんっ……」

 私は甘い声を上げた。わざと。
 驚いたルイの手は全く動いていないが、私は体を上下にわずかにゆすって、扇情的で刺激的な姿を見せて、アルベルト王太子にとどめを刺した。

「ごめん、本当にごめん。愛しているのに本当にごめん。僕はひどい男だ。君が何をしようと僕に何も言う資格はないのはわかっている。でも、愛しているんだ。やめてくれ」

 アルベルト王太子は氷の貴公子の面影もなく、青い瞳から涙を流して、言っていた。

 私はすっとホルタネックドレスを元に戻して正しく身につけ、振り返った。

「これで分かってくれたかしら。私はあなたを愛したことはないわ。だから、本当に諦めてくださる?私はルイ皇太子と結婚しようと思います。私が人を本気で愛したら、こういう行動を取るわ」

 私はルイの手を引いてソファから引き起こして、優しく微笑んだ。心の中でごめんなさいと謝った。

 パッと手を振りかざし、アルベルト王太子をゴーニュの森に送った。彼が潜んでいた元の場所に戻してあげたのだ。

「ディアーナ、大胆過ぎるよ」
 
 ルイは私にささやいて真っ赤な顔をしていた。彼はアルベルト王太子が親友のエミリーと何をしているのかを見せてくれた張本人だ。私の仕返しの意味がわかっている人だ。

「嬉しいのだけれど、こういう仕返しは良くないよ。彼のハートにますます火がついたかもしれないよ?嫉妬心で狂うほどディアーナを求めるかもしれない」

 私はその言葉にハッとしてルイを見つめた。

 ――ゾッコンだったアルベルト王太子に仕返しをしようとするがあまりに、私は軽率な行動を取ったのだわ……。

 私は自分の至らなさに、ゾッとした。
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