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第二章 恋(もうあなたに騙されません)

私が助けた人の正体 ディアーナSide(2)

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「巻き込んで本当にごめん。今晩は闇の書の解析には行けないから迎えに来なくて大丈夫だから」

 ルイは私に謝り、人々の目を気にしている様子で長椅子で素早く飛んで行った。私が広場の隅におりたのを見ていたのか、執事のレイトンとテレサとミラがすぐに私のそばに近づいてきてくれた。

「お嬢様、お聞きになりましたか?」
「ルイ様たちは皇族でございましたっ!」
「ルイ様は皇太子でございますよっ!」

 執事のレイトンとテレサとミラは興奮した様子で口々に告げた。

 ――やはり。あの人が皇太子!?
 ――ザックリードの次期皇帝!?
 
 私はロクセンハンナ家の末裔であるザックリードハルト皇帝の子息を自分が助けたのだと悟った。

 ――私がキスをしたのは、ザックリードハルトの皇太子ということになるの?

 ――まずいわ……。非常にまずい……。もう二度と王族に近寄らないと誓ったばかりだったじゃない。それなのに、もうキスを交わした後だということ?

『ほら、こうすれば、俺が本当にあなたにときめいているのが分かるでしょう?』

 ルイの声がふっと私の耳元に蘇り、私は飛び上がった。

 ――アルベルト王太子からされた仕打ちのようなひどい思いをするのは二度とごめんだわ。でも、ルイはアルベルト王太子とはまるで違うタイプに見える……。

 私はまずいという思いと、どうしようという思いで、揺れに揺れていて、テレサとミラと執事のレイトンが「お嬢様はザックリードハルトの王妃になられる」という夢に取り憑かれ始めたことにも気づかなかった。

「みんな、砂漠のアリス・スペンサー邸宅に帰りましょう」

 私はよろよろと力無くそう告げて、五芒星を市場の人影のない地面に素早く書いた。

 私たちは五芒星の真ん中に立った。私は護符を握りしめながら、他の3人をぎゅっと抱いた。私たちは一つにまとまり、互いを抱きしめあった。そのまま一瞬で灼熱の砂漠のアリス・スペンサー宅の書斎に移動したのだ。

「お嬢様、ルイ様は素敵な方ですわね」
「そうですわ。本当に魅力的なお方でお嬢様に夢中でございますわね」

 テレサとミラの二人が私に興奮したように告げた時、私の心の中は二度とあのような辛い思いをしたくないという思いと、新たに思いを寄せられた人に対する甘いときめきで、うまく返事ができなかった。

「ミラ、夕飯はお任せしますね。私はそんなに量は食べられないと思うわ。ジェラートやパンを色々食べたから」

 それだけ告げて、私は頭を冷静にするために2階のいつもの客間に引きこもった。

 こういう時には熱いお湯に入ろう。
 湯に入り、涙を洗い流して、冷静にルイのことを考えてみよう。



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