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第二章 恋(もうあなたに騙されません)
自称頭脳派 ロミィSide
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ゴビンタン砂漠のアリス・スペンサー邸宅の図書室、1967年6月21日夜。ロミィ・ロクセンハンナ11歳の心の内。
**********
小学校では、揃いのセーラーハットにジム・チュニックを着てクロッケーやアーチェリーをする体育の授業が今日はあったはずだ。
今日、サボった代償は大きいかもしれない。私はクロッケーもアーチェリーも得意で、ライバルのイボンヌを打ち負かすために毎回体育の授業は張り切って受けていた。実に惜しい。今日は、イボンヌの天下だっただろう。
――それにしても。兄様ったら、女神さまに夢中だわ。
『時を操る闇の書』と言う物騒な本を手に入れようと考えついたのは、私だ。私はロミィ、ザックリードハルトの11歳の皇女だ。ロクセンハンナ家の末裔としては最年少だ。母を死ななかったことにしたいと言う危険な野望を持つ。周りの皆は私のことを無害な11歳だと思っているが、断じてそんなことはない。
私はロクセンハンナ一族の中ではダントツの危険な思考の持ち主だ。
私の計画に、一つ上の兄である12歳のアダムが乗ってきたのは二ヶ月前だ。私とアダムが決死の覚悟でやると計画を打ち明けたら、18歳の皇太子である兄のルイも話に乗ってきた。
エイノトリートフロレンス、略してエイトレンスのブランドン公爵令嬢のディアーナ姉様に、命からがら逃げてきたところを救われたから良かったものの、おそらく今日、ロクセンハンナ家の滅亡が確定するところだったはずだ。
――ディアーナ姉様が助けてくれなければ、多分、私たち兄妹は死んでいたわ。
助けてもらったのだから、感謝はしている。だが、死者を甦らせるという危険な思想を姉様に打ち明けていいのか、正直迷う。
――庭師のピエール爺さまの言葉を借りれば、「おったまげる」と言いたくなるぐらいに、恐怖の思想だと思われるだろう。
ここは一つ黙っておこう。
――ディアーナ姉様。勘違いしないで欲しい。私はただ、お母様にもう一度会いたいだけなのだ。
家宝の魔法の長椅子が戻れる時間はあまり計算できない。だから、一人で過去に戻ることは、私たち兄妹の間でも禁止事項だ。裏切り者は許されず、一人で抜け駆けして母に会おうとするのも絶対にダメだ。
『時を操る闇の書』で母に会うだけでなく、母を生き返らせたい。母が死ぬ運命を過去に戻って阻止したい。それが私の願いだ。
「でも、この計画に、あれほど力強い魔力を持つ義理の姉が参加したら、素晴らしいことこの上ないわ」
私はひとりごとをつぶやいた。
――私の願いは、もしかしたら実現するかもしれない。だって、見てよ、このディアーナ姉様のアリス叔母邸宅を。
――死の砂漠にありながら、家の中は涼しくて快適だし、トイレも最新式だし、シャワーも完備しているし、今朝一人で姉様はこの家を運んできたと言ったけれど、こんなの見たことないわ。こんな力を持つ人が世の中に存在するなんて、本当に信じられない!
「私はルイ兄様を応援することに決めたわ。次期皇帝だと、うっかりいきなり明かして引かれないようにしなきゃね。秘密を明かすタイミングはよく練らないと。ディアーナ姉様とルイ兄様が結婚すれば、私の計画の実現性が高まるわ」
私は11歳ながら、ロクセンハンナ家の末裔の中では、一番の頭脳派だと自負している。
兄が一目惚れしたらしい、ディアーナ・ブランドン嬢と兄の結婚を後押しすることに決めた。
――それにしても兄様ったら、11歳の私が見ても分かりやすかったわ。
「ディアーナ姉様は傷心のようだし、兄様ぐらい分かりやすくアピールした方がこの場合は良いかもしれない。大型犬並みに気持ちを分かりやすく表現する方がこの場合は有利なのかもしれない。11歳の私にはよく分からないけれど」
私は腕組みをして、目の前の「不思議の国のアリス」の本を見つめた。
私はこのままこの路線で行こう。11歳らしく無邪気な小学生のイメージを貫こう。そして、ルイ兄様とディアーナ姉様の婚約を実現させよう。
私は今日会ったばかりのディアーナ・ブランドン侯爵令嬢について好感を持った。ザックリードハルトの皇帝の妃に相応しい力の持ち主だ。
――エイトレンスのアルベルト王太子には、二度とディアーナ姉様を返してやらない。
――11歳の無邪気パワーを思い知るが良いわ。
――ざまあみろ、アルベルト王太子、ロクセンンハンナ家一の頭脳派の戦略にかかれば、あなたなどお呼びではないと思うわ。
私は明日小学校で、今日の体育の授業でいかにイボンヌが活躍できたかを聞かされることを思ってイライラしたが、隣国のアルベルト王太子から完全にディアーナ姉様を遠ざけることを心に誓ったおかげで、気分が完璧に晴れたのだ。
私の頭脳派としての実力を遺憾無く発揮して、ルイ兄様とディアーナ姉様を婚約させるのだ。
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小学校では、揃いのセーラーハットにジム・チュニックを着てクロッケーやアーチェリーをする体育の授業が今日はあったはずだ。
今日、サボった代償は大きいかもしれない。私はクロッケーもアーチェリーも得意で、ライバルのイボンヌを打ち負かすために毎回体育の授業は張り切って受けていた。実に惜しい。今日は、イボンヌの天下だっただろう。
――それにしても。兄様ったら、女神さまに夢中だわ。
『時を操る闇の書』と言う物騒な本を手に入れようと考えついたのは、私だ。私はロミィ、ザックリードハルトの11歳の皇女だ。ロクセンハンナ家の末裔としては最年少だ。母を死ななかったことにしたいと言う危険な野望を持つ。周りの皆は私のことを無害な11歳だと思っているが、断じてそんなことはない。
私はロクセンハンナ一族の中ではダントツの危険な思考の持ち主だ。
私の計画に、一つ上の兄である12歳のアダムが乗ってきたのは二ヶ月前だ。私とアダムが決死の覚悟でやると計画を打ち明けたら、18歳の皇太子である兄のルイも話に乗ってきた。
エイノトリートフロレンス、略してエイトレンスのブランドン公爵令嬢のディアーナ姉様に、命からがら逃げてきたところを救われたから良かったものの、おそらく今日、ロクセンハンナ家の滅亡が確定するところだったはずだ。
――ディアーナ姉様が助けてくれなければ、多分、私たち兄妹は死んでいたわ。
助けてもらったのだから、感謝はしている。だが、死者を甦らせるという危険な思想を姉様に打ち明けていいのか、正直迷う。
――庭師のピエール爺さまの言葉を借りれば、「おったまげる」と言いたくなるぐらいに、恐怖の思想だと思われるだろう。
ここは一つ黙っておこう。
――ディアーナ姉様。勘違いしないで欲しい。私はただ、お母様にもう一度会いたいだけなのだ。
家宝の魔法の長椅子が戻れる時間はあまり計算できない。だから、一人で過去に戻ることは、私たち兄妹の間でも禁止事項だ。裏切り者は許されず、一人で抜け駆けして母に会おうとするのも絶対にダメだ。
『時を操る闇の書』で母に会うだけでなく、母を生き返らせたい。母が死ぬ運命を過去に戻って阻止したい。それが私の願いだ。
「でも、この計画に、あれほど力強い魔力を持つ義理の姉が参加したら、素晴らしいことこの上ないわ」
私はひとりごとをつぶやいた。
――私の願いは、もしかしたら実現するかもしれない。だって、見てよ、このディアーナ姉様のアリス叔母邸宅を。
――死の砂漠にありながら、家の中は涼しくて快適だし、トイレも最新式だし、シャワーも完備しているし、今朝一人で姉様はこの家を運んできたと言ったけれど、こんなの見たことないわ。こんな力を持つ人が世の中に存在するなんて、本当に信じられない!
「私はルイ兄様を応援することに決めたわ。次期皇帝だと、うっかりいきなり明かして引かれないようにしなきゃね。秘密を明かすタイミングはよく練らないと。ディアーナ姉様とルイ兄様が結婚すれば、私の計画の実現性が高まるわ」
私は11歳ながら、ロクセンハンナ家の末裔の中では、一番の頭脳派だと自負している。
兄が一目惚れしたらしい、ディアーナ・ブランドン嬢と兄の結婚を後押しすることに決めた。
――それにしても兄様ったら、11歳の私が見ても分かりやすかったわ。
「ディアーナ姉様は傷心のようだし、兄様ぐらい分かりやすくアピールした方がこの場合は良いかもしれない。大型犬並みに気持ちを分かりやすく表現する方がこの場合は有利なのかもしれない。11歳の私にはよく分からないけれど」
私は腕組みをして、目の前の「不思議の国のアリス」の本を見つめた。
私はこのままこの路線で行こう。11歳らしく無邪気な小学生のイメージを貫こう。そして、ルイ兄様とディアーナ姉様の婚約を実現させよう。
私は今日会ったばかりのディアーナ・ブランドン侯爵令嬢について好感を持った。ザックリードハルトの皇帝の妃に相応しい力の持ち主だ。
――エイトレンスのアルベルト王太子には、二度とディアーナ姉様を返してやらない。
――11歳の無邪気パワーを思い知るが良いわ。
――ざまあみろ、アルベルト王太子、ロクセンンハンナ家一の頭脳派の戦略にかかれば、あなたなどお呼びではないと思うわ。
私は明日小学校で、今日の体育の授業でいかにイボンヌが活躍できたかを聞かされることを思ってイライラしたが、隣国のアルベルト王太子から完全にディアーナ姉様を遠ざけることを心に誓ったおかげで、気分が完璧に晴れたのだ。
私の頭脳派としての実力を遺憾無く発揮して、ルイ兄様とディアーナ姉様を婚約させるのだ。
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