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第一章 死に戻りからの婚約破棄と出会い
砂漠に追放(1)
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王とて全ての物事を自分の思い通りにすることは叶わない。
ここに、なんでもかんでも自分の思い通りになると思い込んでいる人たちがいる。王妃と王室家政長官だ。
私は前の人生の会社の上司陣をふと思い出した。外資の会社だったのだが、直属の上司はそうでもないのだが、上司の上司クラスだと、そんな愚かな考えに取り憑かれた者ばかりだった。
勘違いも甚だしい行動を取っては、良く確認もせずに「ああだろ、こうだろう?こうしろ」と勝手な事を言ってきた。正しい情報を確認もせずに踏ん反りかえって言っているだけだから、周りの逆鱗にしばしばふれていたが、彼らはいつも配下の者のせいにした。
私はたいてい、その類の呆れた要求を切って捨てていた。彼らの思い通りには何一つならなかった。なぜならパワハラ禁止で民主主義の世界だからだ。不快な彼らは納得はしなかったけれど、そういう世の中だった。
さて、私が今生きる1867年の産業革命がもたらした経済成長まっただ中の時代はどうだろう?
私はディアーナ・ブランドン、19歳の公爵令嬢だ。美人かは分からないが、この国の世継ぎの王太子に見初められて、まもなく結婚の申し込みを受けるはずだ。
私は公爵令嬢だが、何一つ自分の思い通りにはならない。恋した人には一年後に惨めにフラれることになる。婚約者のアルベルト王太子は私に結婚を申し込んだ後に、私より5歳下のマリー王女に夢中になる。そして、1年後の挙式の1週間前に、20歳の私をこっぴどくふるのだ。
それは社交界での死を意味するものだ。1年後には私とあまり会ってくれなくなったのは、マリー王女に夢中でずっと彼女との時間だけをアルベルト王子が作っていたからだということになる。
隣国のマリー王女は、行儀作法を学ぶために、我が国の宮廷に少し前からやってきていた。
王族と公爵令嬢では、圧倒的な身分の差がある。私との比較では、マリー王女は歴然とした格上の存在であり、若くて可愛らしくて苦労知らずの無邪気で朗らかな王女だ。
――彼女に比べて、私の取り柄はなんだろう?
勉強ができることと、比較的真面目なことと、魔力が使えることぐらいだろうか。王太子がマリー王女に夢中なことを知らなかった。王太子に会えると、私を苦々しく見つめる彼の目線にたじろぐばかりだった。だって私は王太子の事が変わらずに好きだったから。
彼のそばにいると温かい気持ちになれた。私は彼のそばにいたかった。でも、1年後の彼はそれを避けており、「挙式前に私に襲われる」と言った冗談ともつかぬことを平気で友人たちに言いふらしていた。私はそれを耳にしてひどく傷ついていた。
周りは皆、私たちが結婚すると思い込んでいた。しかし、彼の心はとっくに離れていたのだ。
――私は彼の何だったのだろう?
王室家政長官はなんでも思い通りになると思っている。王妃様もだ。
***
1867年6月20日。
イングランドはヴィクトリア女王の時代で世界最高レベルの輝かしい発展を遂げようとしていた。
私が生きるのは、その世界からは少し距離がある世界だ。
「アルベルトさま、お待たせいたしました」
私は、らしくもなく胸を大胆に強調した衣装で色っぽさ全開でアルベルト王太子の待つ宮殿の庭に佇んでいた。
「なっ……今日は印象がだいぶ違うね」
「は……い。今日は大事なお話があってまいりましたの」
私は、今日アルベルト王太子が輝くダイヤの指輪を取り出して私に求婚することを知っている。しかし、どんなにアルベルト王子を愛していても、それを受けてはダメなのだ。彼は私より5歳年下のマリー王女が花開く様子に夢中になるのだから。そして、1年後には冷たく私を捨てるのだから。
「ディアーナ?では、僕の話の前に君の話を聞こうか」
アルベルト王子は舌なめずりをする様子で私の全身をチラチラ見つめている。特に胸には目が釘付けで目が離せないご様子だ。このようなことは今まで一度もなかった。
今日の夜会服は今までの私の印象をガラリと変えるものだ。胸の形がくっきりと分かるように、二つの果実が手にとるように分かるように、かなり強調されている。前の世界の、寄せて盛るという技をふんだんに使わせてもらった。元から胸は大きいのだが、今までは、はしたないと思って隠していたのだ。それにこの頃私は太り気味だった。ウェストはかつてないほど絞って細さを強調しているので、実は今日は少し苦しい思いをしている。
「はい」
私は上目遣いで微笑んで、王太子に流し目をした。
「実は、私は他の紳士と関係を持ったのです。王太子に相応しくございませんわ」
私は爆弾発言をした。もちろん事実ではない。大好きな彼にフってもらうしかないので、虚勢をはった。
「な……何?」
アルベルト王子のブルーの瞳が大きく見開かれ、私の唇と私の胸とウェストと……忙しく瞳が動かれた。
アルベルト王子は憤慨して、真っ赤になって怒り出すと予測した。だが、彼は私の手を握り、私を引き寄せて私の胸にキスをした。
「かわいいな。ありもしない事を言って私の気を引きたいのか?ディアーナはそんなに可愛い性格だったのか」
アルベルト王子は心の声が漏れて出ていることも気づかずに、ブロンドの髪の毛をかきあげながらつぶやいている。
私は一瞬でゾッとした。この展開は前世の記憶に近い。これでいきなり逃げると私は命を失うパターンだった。
――取り返しがつかないところまで挙式の準備が進んだ状態で、1年後には私をフルくせに。
今日、私はアルベルト王太子にフって欲しいのだ。
「嘘ではございませんわ。今日、私をフっていただけますか」
私はまっすぐに王太子の瞳を見据えて、王太子が絡め取った手を振りほどいた。
王太子から身を離すために数歩離れる。
「何を……?」
「あなたのことが好きではないのです。公爵家からお断りすることはできないお話ですので、王太子から私の事を捨てて欲しいのですわ」
私はキッパリと言った。少し声が震えた気がするが、仕方ない。心に反する事を私は言っている。
「正気か?君は本気で言っているのか?」
「はい、わたくしは本気ですわ」
アルベルト王太子のブルーの瞳が燃えるような炎を宿したように思った。怒りだろうか。
私は指輪も受け取らず、逃げるように宮殿を後にした。馬車に戻ると侍女に事情を聞かれると思った私は、そばに置いてあった誰かの自転車に乗って走り始めた。ドレスの裾はダンスができるように見た目以上に十分広がる仕組みだった。お色気ムンムンの夜会ドレス姿で髪も結い上げて自転車を飛ばす私は周囲の好奇の視線に晒されたが、私は泣きながら走った。
――あぁ、貴族の訳あり娘だと思うでしょうね。
私はそう思ったが、ブランドン公爵家まで市街を抜けて自転車で帰った。緑豊かな広大な敷地を自転車で抜けると、私の気持ちは少し晴れ晴れとした。太陽はまだ沈んでおらず、西の空がピンクに染まり、紅葉した木々の葉が風にそよぐ秋の夕暮れはとても美しかった。
私は少し遠回りをして帰った。あまりに景色が美しかったから。あまりに涙が止まらなかったから。
――これで、アルベルト王太子とはお別れだ。
ここに、なんでもかんでも自分の思い通りになると思い込んでいる人たちがいる。王妃と王室家政長官だ。
私は前の人生の会社の上司陣をふと思い出した。外資の会社だったのだが、直属の上司はそうでもないのだが、上司の上司クラスだと、そんな愚かな考えに取り憑かれた者ばかりだった。
勘違いも甚だしい行動を取っては、良く確認もせずに「ああだろ、こうだろう?こうしろ」と勝手な事を言ってきた。正しい情報を確認もせずに踏ん反りかえって言っているだけだから、周りの逆鱗にしばしばふれていたが、彼らはいつも配下の者のせいにした。
私はたいてい、その類の呆れた要求を切って捨てていた。彼らの思い通りには何一つならなかった。なぜならパワハラ禁止で民主主義の世界だからだ。不快な彼らは納得はしなかったけれど、そういう世の中だった。
さて、私が今生きる1867年の産業革命がもたらした経済成長まっただ中の時代はどうだろう?
私はディアーナ・ブランドン、19歳の公爵令嬢だ。美人かは分からないが、この国の世継ぎの王太子に見初められて、まもなく結婚の申し込みを受けるはずだ。
私は公爵令嬢だが、何一つ自分の思い通りにはならない。恋した人には一年後に惨めにフラれることになる。婚約者のアルベルト王太子は私に結婚を申し込んだ後に、私より5歳下のマリー王女に夢中になる。そして、1年後の挙式の1週間前に、20歳の私をこっぴどくふるのだ。
それは社交界での死を意味するものだ。1年後には私とあまり会ってくれなくなったのは、マリー王女に夢中でずっと彼女との時間だけをアルベルト王子が作っていたからだということになる。
隣国のマリー王女は、行儀作法を学ぶために、我が国の宮廷に少し前からやってきていた。
王族と公爵令嬢では、圧倒的な身分の差がある。私との比較では、マリー王女は歴然とした格上の存在であり、若くて可愛らしくて苦労知らずの無邪気で朗らかな王女だ。
――彼女に比べて、私の取り柄はなんだろう?
勉強ができることと、比較的真面目なことと、魔力が使えることぐらいだろうか。王太子がマリー王女に夢中なことを知らなかった。王太子に会えると、私を苦々しく見つめる彼の目線にたじろぐばかりだった。だって私は王太子の事が変わらずに好きだったから。
彼のそばにいると温かい気持ちになれた。私は彼のそばにいたかった。でも、1年後の彼はそれを避けており、「挙式前に私に襲われる」と言った冗談ともつかぬことを平気で友人たちに言いふらしていた。私はそれを耳にしてひどく傷ついていた。
周りは皆、私たちが結婚すると思い込んでいた。しかし、彼の心はとっくに離れていたのだ。
――私は彼の何だったのだろう?
王室家政長官はなんでも思い通りになると思っている。王妃様もだ。
***
1867年6月20日。
イングランドはヴィクトリア女王の時代で世界最高レベルの輝かしい発展を遂げようとしていた。
私が生きるのは、その世界からは少し距離がある世界だ。
「アルベルトさま、お待たせいたしました」
私は、らしくもなく胸を大胆に強調した衣装で色っぽさ全開でアルベルト王太子の待つ宮殿の庭に佇んでいた。
「なっ……今日は印象がだいぶ違うね」
「は……い。今日は大事なお話があってまいりましたの」
私は、今日アルベルト王太子が輝くダイヤの指輪を取り出して私に求婚することを知っている。しかし、どんなにアルベルト王子を愛していても、それを受けてはダメなのだ。彼は私より5歳年下のマリー王女が花開く様子に夢中になるのだから。そして、1年後には冷たく私を捨てるのだから。
「ディアーナ?では、僕の話の前に君の話を聞こうか」
アルベルト王子は舌なめずりをする様子で私の全身をチラチラ見つめている。特に胸には目が釘付けで目が離せないご様子だ。このようなことは今まで一度もなかった。
今日の夜会服は今までの私の印象をガラリと変えるものだ。胸の形がくっきりと分かるように、二つの果実が手にとるように分かるように、かなり強調されている。前の世界の、寄せて盛るという技をふんだんに使わせてもらった。元から胸は大きいのだが、今までは、はしたないと思って隠していたのだ。それにこの頃私は太り気味だった。ウェストはかつてないほど絞って細さを強調しているので、実は今日は少し苦しい思いをしている。
「はい」
私は上目遣いで微笑んで、王太子に流し目をした。
「実は、私は他の紳士と関係を持ったのです。王太子に相応しくございませんわ」
私は爆弾発言をした。もちろん事実ではない。大好きな彼にフってもらうしかないので、虚勢をはった。
「な……何?」
アルベルト王子のブルーの瞳が大きく見開かれ、私の唇と私の胸とウェストと……忙しく瞳が動かれた。
アルベルト王子は憤慨して、真っ赤になって怒り出すと予測した。だが、彼は私の手を握り、私を引き寄せて私の胸にキスをした。
「かわいいな。ありもしない事を言って私の気を引きたいのか?ディアーナはそんなに可愛い性格だったのか」
アルベルト王子は心の声が漏れて出ていることも気づかずに、ブロンドの髪の毛をかきあげながらつぶやいている。
私は一瞬でゾッとした。この展開は前世の記憶に近い。これでいきなり逃げると私は命を失うパターンだった。
――取り返しがつかないところまで挙式の準備が進んだ状態で、1年後には私をフルくせに。
今日、私はアルベルト王太子にフって欲しいのだ。
「嘘ではございませんわ。今日、私をフっていただけますか」
私はまっすぐに王太子の瞳を見据えて、王太子が絡め取った手を振りほどいた。
王太子から身を離すために数歩離れる。
「何を……?」
「あなたのことが好きではないのです。公爵家からお断りすることはできないお話ですので、王太子から私の事を捨てて欲しいのですわ」
私はキッパリと言った。少し声が震えた気がするが、仕方ない。心に反する事を私は言っている。
「正気か?君は本気で言っているのか?」
「はい、わたくしは本気ですわ」
アルベルト王太子のブルーの瞳が燃えるような炎を宿したように思った。怒りだろうか。
私は指輪も受け取らず、逃げるように宮殿を後にした。馬車に戻ると侍女に事情を聞かれると思った私は、そばに置いてあった誰かの自転車に乗って走り始めた。ドレスの裾はダンスができるように見た目以上に十分広がる仕組みだった。お色気ムンムンの夜会ドレス姿で髪も結い上げて自転車を飛ばす私は周囲の好奇の視線に晒されたが、私は泣きながら走った。
――あぁ、貴族の訳あり娘だと思うでしょうね。
私はそう思ったが、ブランドン公爵家まで市街を抜けて自転車で帰った。緑豊かな広大な敷地を自転車で抜けると、私の気持ちは少し晴れ晴れとした。太陽はまだ沈んでおらず、西の空がピンクに染まり、紅葉した木々の葉が風にそよぐ秋の夕暮れはとても美しかった。
私は少し遠回りをして帰った。あまりに景色が美しかったから。あまりに涙が止まらなかったから。
――これで、アルベルト王太子とはお別れだ。
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